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 思うこと


時の流れ

 私が園芸に興味を持ったのは小学校低学年の頃でした。
 当時、横浜の親戚に遊びに行き、縁日でサボテンの1鉢を買ったのが最初でした。
 それ以来、何十年と園芸趣味が続いている筋金入りの植物人間(意味が違った)です。
 子供の頃は園芸関係の仕事をしたいと考えた事もありますが、電子制御関係の仕事に就いたので、趣味を 無くさずに済みました。
 サボテン、草花、樹木、熱帯植物、観葉植物、山野草、高山植物、小品盆栽と、色々手を出し、現在は富貴蘭、古典植物等を 栽培しています。

 私がこのホームページを出したのは、自分の栽培植物を自慢したり、皆さんの役に立とうと思ったからではありません。
 ホームページを出すこと自体に興味があったのです。
 そこで、内容を何にするか考えたのですが、私が人様に提示できる項目は多くはありません。
 まず、趣味である「園芸」を選んだのです。
 ホームページを出すのは簡単ですが、人に見てもらうのは大変です。
 最初の頃は検索エンジンに自分のホームページのタイトルを入力してもヒットしません。
 アドレスを直接入力しなければ自分のホームページにリンクしません。
 人に見てもらう為には内容を充実させ、量を増やさなければならないと考え、暇をみては少しずつアップしました。
 その後、仕事に関連がある「電子回路」関係のページもアップしました。
 こちらは、ちょっとした実験や、趣味で製作した機器の記録が目的でした。
 最近では、やっと検索エンジンにタイトル名を入力してリンク出来るようになりました。
 元々、ホームページをアップする事自体と自分自身の為の記録が目的だったのですが、嘘は書いていませんので、読者の 役に立つなら、それはそれで幸いです。

 私がこのホームページを開設したのが2004年、「思うこと」のページを追加したのが2006年でした。
 「思うこと」は栽培していて感じた事を記したものですが、時代の流れとともに状況が変わってきた部分もあります。
 例えば、2006年当時は、まだ素人やセミプロが銘品をコピーした実生苗をインターネットで無秩序に売りまくっていた 時代です。
 最近では実生苗が簡単に売れない為か、ぐっと数が減りました。
 富貴蘭の相場も数分の一になっています。
 以下に私が書いた文章も、現在(2012年1月)見ると多少、現実と合わない部分もあります。
 最近、初めて見る人には違和感を感じることがあるかもしれません。
 アップした日付を書いておけば、まだ良かったかもしれません。
 事後になりますが、アップした日付が記録に残っている項目に関しては文章の末尾に日付を入れました。
 画像のある項目は画像ファイルの作成日時で、アップした日付が判ります。(若干ずれている可能性はあります。)
 文章のみの項目は上書きしてしまうので日付は判りません。
 ちょっと古い記事に関しては「当時はそうだった。」ということで理解してください。
 尚、この項目「時の流れ」はページのトップに書きましたが、以下の項目は日付順に並んでいます。
 2012/01/05


仮名を適当に付けないで欲しい

 以前、「貴公子」という富貴蘭を購入した事があります。
 小型で、オレンジ色を感じさせる黄縞です。
 特徴として、根が皺々になるという点があります。
 その後、雑誌やインターネットで「貴公子」に関する記事や写真を何回か見ました。
 一つは私の購入したものと同じ、もう一つは豆葉品種、もう一つは虎斑の品種でした。
 「黄河」という名前で購入した青軸黄縞の品種にも、その後、同名の品種が現れました。
 豆葉の品種や黄花の品種です。

 名は体を表すと言いますが、品種名は重要です。
 「登録品種以外は全て無銘品」では不便ですので、仮名を付ける意味はあります。
 ただし、名前が重複しないように、特徴をよく表しているように、慎重に付けて欲しいと思います。
 登録品種は慎重に審査されますが、仮名に関してはルールがありません。

 最近は実生が盛んですが、子苗と親になってからでは特徴が変わる場合もあります。
 子苗のうちから一人前の名前が付いて流通するのも問題があります。
 セルフ交配で銘品をコピーして、オークションに出品している人がいます。
 セルフ交配すると、親と異なる二級品が多量にでます。
 これらに、親と同じ名前を付けられるのも問題ですが、適当な仮名を付けられるのも問題です。
 購入する側が賢くならなければ、モラルの低い人が蔓延します。
 2006/09/22


水苔

 最近、富貴蘭の値段が下がっています。
 この事に関しては、嬉しい人と嬉しく無い人がいると思います。
 しかし、植え込み材料の水苔は高値で安定しています。
 最近は、水苔の節約と植え替えの手間を省く為に、庭木に一部の富貴蘭を着生させたりしています。

 富貴蘭を水苔で植える場合、長い水苔が必要となります。
 水苔は長さにより、ランク分けされていて、当然ながら長いほどランクが高く高価です。
 普通はAAAとかAAAAとか、Aの数で表示され、Aの数が多いほどランクが高いです。
 私の場合は、富貴蘭の専門店に依頼して、AAAAを水苔業者から取り寄せてもらっています。
 ところが、このランクが当てになりません。
 AAAAでも、長さが短く、ゴミだらけで腐りかけた水苔が混じっている場合があります。
 このことは、乾燥され、圧縮されて袋に入れられた外見からは、なかなか判断出来ません。
 購入して、既に使ってしまった物は仕方ありませんが、この次は別の水苔業者から取り寄せる様に依頼しています。
 最近では、AAAAの質が落ちてきてAAAAAランクのものが出たりしています。
 そこで、同じ水苔業者のAAAAとAAAAAを購入し、比べたところ、内容に差がありませんでした。
 (同じランクでも、ばらつきがあるので、たまたま、この結果になったかもしれませんが...)

 ある生産者の話では、長年、同じ業者から水苔を購入していると、慣れるにつれ、水苔の質が 少しずつ落ちてくるそうです。
 我慢して、同じ水苔業者から購入しないで、業者を変え、良い業者を選別したいものです。
 それにしても、もう少し水苔が安くならないものでしょうか。
 裾物では、ランより鉢と水苔の方が高くなってしまいます。


仮名を適当に付けないで欲しいU(守門山)

 最近、「守門山」という富貴蘭の画像を目にします。(実物は見たことがありませんが)
 最近の紀州雪虎の実生で、斑が明るく出た個体のことだそうです。
 さて、守門山は新潟県にあるので、富貴蘭の自生はありません。
 富貴蘭の「守門山」と何の関係があるのでしょうか。
 富貴蘭の「守門山」は実生ですので、産地は、ありません。
 先祖が紀州雪虎なら、出身は紀伊半島になるのでしょうか。
 守門山は春蘭の名産地で、銘品「守門山」が出た場所です。
 春蘭の守門山は昭和6〜7年頃、採取され、産地の名前を、そのまま頂きました。
 春蘭の「守門竜」も守門山で採取されたものです。

 富貴蘭の「守門山」は春蘭の銘品の名前を安易にパクったと想像されます。
 しかし、春蘭の「守門山」は切れの良い黄虎斑で、富貴蘭の「守門山」には似ていません。
 同じく、紀州雪虎の実生に「紀州白雪」がありますが、これと区別する必要があるのでしょうか。


騙されてはいけない

淀の松の花

 私は、このホームページの ギャラリー1 → 無地葉変わり で 淀の松の段咲き花を紹介しています。
 さらに、淀の松の実生品種と言われている駿河天山の段咲き花も紹介しています。
 これらの品種は、力が付くと段咲き花が咲きやすいようです。
 けっして、新品種になった訳ではないのです。
 しかしながら、これを新品種として”商売”するような悪人が出てくるかもしれないと予想していました。
 やはり、予想を裏切らない?人が出現しました。
 あるオークションで、淀の松の変わりと称して、出品していました。
 それには、私が見た時点で4000円以上の値が付いていました。
 ここで、その人物が、事実を知って、商売しているかどうかが気になります。
 結果としては、知る、知らないに関わらず、購入者を騙している事に変わりありません。

 他でも、例えば嵐山は細い黄縞が出現するようで、私の栽培株にも出ました。
 これも、オークションで、嵐山の黄縞として出品されていたのを見たことがあります。
 このように、オークションは危険がいっぱいです。
 少しでも多くの、知識、情報を身につけて、騙されないようにしなければいけません。
 2007/01/19


黄金虫と針金虫

黄金虫 針金虫

 富貴蘭のオークションを眺めていると、時々、怪しい物件が目に付きます。
 大部分の人は真面目に取り組んでいると思いますが、少数のペテン師が存在するようです。
 あるとき、「黄金虫」が2点、別々の人から出品されていました。
 しかし、2点とも「黄金虫」ではなく、「針金虫」と思われるのです。
 出品されている人は、数多くの実績のあるセミプロと思われるので、「黄金虫」と「針金虫」の違いを 知っていると思います。

 上の写真は、私の栽培している黄金虫です。
 冬季に撮影したため、やや葉が閉じ気味です。
 針金虫も栽培していたのですが、棚を整理する目的で手放してしまいました。
 したがって、針金虫の写真がありません。
 写真ぐらい、残しておくべきでした。
 私は黄金虫も針金虫も専門店で購入しました。
 専門店では「針金虫」を「黄金虫」で売るようなことはしません。(ちゃんと針金虫の名札が付いていました。)
 値段は10倍以上の差がありました。
 私も、手放すとき、「針金虫」の名札を付けました。

 黄金虫は針金虫の芽変わりだという説と同坪で山採りされた兄弟株で、芸の甘い方が針金虫だという説があるようです。
 ひょっとしたら、全く関係が無いかもしれません。
 両者の違いを簡単に説明すると

・ 針金虫は葉が細長く、葉肉が薄く、葉先が尖る。
・ 針金虫は軸の泥が少なく、全体が明るい緑色である。
・ 針金虫は根が、よく伸び、成長は比較的早い。

・ 黄金虫は葉が詰まり、葉肉が厚く、葉先が丸止めである。
・ 黄金虫は軸に泥が強く出て、全体的に渋い緑色をしている。
・ 黄金虫は根の本数が少なく、成長が遅い。

 両者を並べて見れば一目瞭然ですが、針金虫の割子の写真だけを見ると騙され易いかもしれません。
 騙す人と騙される人が存在して、世の中に芸の甘い黄金虫が出回ると、品種としての評価が下がります。
 このようにして、多くの品種の相場が不当に下がれば、「富貴蘭」というジャンルが衰退していきます。
 極端に高い相場も困りますが、適正な相場が維持されなければ、人々の関心が薄れていきます。
 「富貴蘭」が末永く繁栄するためには、売る側のモラルと買う側の知識が必要です。
 2007/01/19


南国

南国 三重県産 高知県産

 南国は小型の付け無し風蘭で、それ程、高価な品種ではありませんが、偽物が多く出ている様な気がします。
 最初の写真は南国で、写真の株は付けのある葉が1枚もありません。
 ただし、希に付けのある葉が出ることがあるかもしれません。
 2番目の写真は三重県で求めた株で、南国より一回り大きいですが、作により、同程度の大きさになります。
 こちらは、全部の葉に付けがあります。
 3番目の写真は高知産の針葉として出回っている株で、葉が細長く伸びますが、作により南国に似る場合があります。
 これにも全部の葉に付けがあります。
 これらの品種に共通する点として、襟元に時々白斑が出ることが挙げられます。
 2007/05/09


本性品とは何だろう

 最近、オークションで「本性品」という言葉が目につきます。
 最近は、実生等により、同じ名前でも見た目が異なる偽物が存在するので、これは本物であると言いたいのでしょう。
 しかし、本性品という言葉はだれでも付けることが出来るので、この言葉だけで信用する訳にはいきません。
 本性品と書かれると、逆に、疑ってしまったりします。
 品種名が正しければ、本性品という言葉は本来、不要のはずです。
 付いていても信用できないなら、無い方がスッキリします。

 実生で作られた黄虎斑の品種が、本性品としてオークションに出品されているのを最近、発見しました。
 実生品種が本性品と言われても訳が判りません。
 実生すると、いろいろなレベルの個体が出ますが、どれが本性品なんでしょうか。
 出品者はギャグをかましているのか、それともナメているのか???


富貴蘭は供給過剰か

 園芸趣味者の数
 まず、全人口のうち、園芸を趣味にしている人の割合を考えると、それ程、多くは無いと思います。
 住宅事情の関係もあり、自宅で植物に接している人は少ないでしょう。
 思いつきで、観葉植物を2〜3鉢、置いている人はいるかもしれませんが、趣味とまでは言えません。

 富貴蘭は園芸の中でもマイナー
 一言で園芸と言っても、ひじょうに分野が広いです。
 庭木や草花、家庭菜園等がメジャーな園芸のジャンルと言えます。
 園芸趣味に於いても、特定の植物を専門にするマイナーな分野が存在し、富貴蘭も、その一つです。
 しかし、マイナーな分野の種類は多く、「多肉植物」「食虫植物」「洋蘭原種」等、多数あります。
 「盆栽」も本格的にやるなら、マイナーな分野であると言えます。
 少数の人間が多くの分野に細分化されるので、一つの分野に関係する人数は、当然ながら少なくなります。
 結論を言うと、富貴蘭を趣味にしている人は少ないと言えます。

 メジャーな園芸とマイナーな園芸の違い
 メジャーな園芸の追求するものは実用性と美しさです。
 実用性とは、食用になったり、垣根であったりします。
 美しさとは、一般の人が理解できる、色彩の美しさや、花の数、花の大きさであったりします。
 値段は安ければ嬉しくなります。
 マイナーな園芸は、一般受けしない項目を追求します。
 例えば、
・ 形態が奇異である。
・ 生態が奇異である。
・ 珍品で入手が困難である。
・ 変異が多く、系統的に収集出来る。
・・・・・
 値段が高くても欲しくなります。
 逆に、安いと購買意欲を無くす場合があります。
 安く手に入る事に疑いの目を向けてしまいます。

 富貴蘭の栽培者の数は増えない
 客観的に見て、富貴蘭の芸は一般の人には理解出来ません。
 売店で値札を見て、こんなものが何故、こんなに高いんだと思う人は多いと思います。
 鈴虫剣や羅紗地には全く興味を示しません。
 多くの人は、斑に対しても興味を示しません。
 たとえ、斑に興味があったとしても、熱帯植物の派手な斑に比べたら地味です。
 温室の富貴蘭を見せた時、受ける質問の殆どは「何時、どんな花が咲きますか。」です。
 富貴蘭も花変わりが選別されたりして、多少のバリエーションは、ありますが、他の植物と比較すると圧倒的に地味です。
 花に関して言えば、セッコクの花物の方が、まだ一般受けします。
 結局、富貴蘭に興味を持つのは、私のように「変人」または「病気になってしまった人」で、数は少ないです。
 今後、「富貴蘭」が大衆の指示を得て、大きく勢力を拡大する可能性は少ないです。

 富貴蘭の数は殖えている
 富貴蘭は元々、丈夫な植物であり、簡単には枯れません。
 栽培方法を心得た趣味者が栽培するので、尚更、枯れません。
 ゆっくりですが、確実に殖えています。
 草花ですと春先に確実に需要があります。
 それは、消耗するからです。
 富貴蘭の場合、消耗しないので、趣味者は既に保有する品種を購入することはありません。
 前述のように、趣味者の数も増えないので、既存の品種は余ってきます。
 さらに、最近では実生が行われるようになり、銘品のコピーが出回り、圧倒的に数が増えてきました。
 実生は私のような素人でも、機材を準備して、ちょっと勉強すれば簡単に行うことが出来ます。
 数が増えれば、必然的に相場は下がってきます。

 実生の問題
 私の場合、今までにない品種を作り出す事を夢見て行っています。
 実績は上がっていませんが、趣味ですので気にしていません。
 青の風蘭が沢山出来ますが、間引いて、少量を人に上げたり、庭木に着生させたりしています。
 しかし、実生を商売にしている人もいます。
 (だんだん状況が悪くなっているので、人数は減っていると思いますが。)
 これらの人達は、出来たものを売り切ってしまわないと採算が合いません。
 そこで、豆葉等の無地葉変わり、虎斑、散斑、赤花等の花変わり品種のコピーを始めました。
 これらの品種は遺伝性が強いので、ロスが少なくて済みます。
 ただし、実生の場合、芸に幅が出るので、成長したとき親(銘品)と異なってしまう場合もあります。
 赤花品種を例に挙げれば、色の濃いものから、白花に近いものまで出現します。
 ただし、苗のうちから花の確認は出来ないので、全部、親と同じ名前で販売されます。
 これらが成長したとき、芸にバラツキがでるので、品種名が混乱したり、品種としての評価が下がったりします。
 実生も最初の頃は人気がありました。
 昼に1本1000円で仕入れた苗が夜の交換会で3000円で売れたという話を聞いたことがあります。
 その後、実生が敬遠されるようになり、現在では500円で仕入れたものを500円で売る事は難しいでしょう。
 オークションでも以前ほど、実生がヒットしなくなりました。
 最近では銘品のコピーが10〜15本単位で出品されたりしています。
 10本単位で買う方も、一作して転売しようなどと考えているかもしれませんが、それ程需要は見込めません。
 また、最近、豊明殿の実生コピーが出回るようになりました。
 以前、数十万円した豊明殿も、程なく、一本数千円になると思われます。
 本物を高額で購入した人は腹立たしく思っているかもしれません。
 ただし、間違いなく本物であるという安心感を持って作り続ける事が出来ます。
 実生品は成長して、親と同じになるとは限りません。
 実生品を割子として高額で買ったら悲惨です。

 今は買い時か
 富貴蘭は需要の割に数か殖えてきているので、値段が大きく下がりました。
 新しく富貴蘭を始める人には好都合かもしれません。
 しかし、希少性がステータスであった世界ですので、事は簡単にはいきません。
 私が富貴蘭を始めた頃は、高価で簡単には買えないものを手に入れたいという気持ちがエネルギーになりました。
 安くなったからといって急に趣味者の数が増えるとも思えません。
 安くて美しい植物は他にもあるからです。
 オークションや交換会で品物が動いているように見えても、セミプロが転売目的で品物を回し合って場合が多いです。
 今は富貴蘭にとって良い時代では無いかもしれません。
 私自身も、富貴蘭の値段が下がってから購買意欲が低下し、富貴蘭を殆ど買わなくなりました。
 けれども、富貴蘭への興味が無くなった訳ではありません。
 植え替え、消毒等も、きちっと行っています。
 以前のように、闇雲に収集するようなことはありませんが、冷静に趣味を楽しんでいます。
 古くからの品種でも、丁寧に作れば愛着がわきます。
 以前の高級品が手頃な値段で手に入るようなったので、専門店で、ゆっくり手にとって、気に入ったものを 購入するのも良いかなと思っています。


安くなると売れなくなる

 富貴蘭を始め、古典園芸植物の相場が下がっています。
 今まで、欲しくても手が出なかった銘品を手に入れるチャンスです。
 このように考えてコレクションを増やしている人もいると思います。
 しかし、実際には安くなると売れ行きが鈍るようです。
 安くなる→売れなくなる→さらに値段を下げる→ますます売れなくなる.....と悪循環になります。

* 安くなる原因
 これは単純に需要と供給の関係です。
 まず、古典園芸の構造的な問題があります。
 この分野では、絶対的な美しさを追求せず、変異とか希少性を追求します。
 この事自体、一般化、大衆化と相反します。
 一般化したら、存在価値が無くなってしまうのです。
 そのような訳で、趣味者の人数は限定されます。
 一方、他の園芸は量産して市場に安く供給する事に、何の問題もありません。
 生産農家が苗を安く供給し、趣味者が消費するというシステムが完成しています。
 古典園芸では、趣味者の棚で殖えた苗が再投入される事が多いと思います。
 趣味者の棚では植物は消耗せず、殖えていきます。
 ところが、新しい趣味者の数が、あまり増えないので、殖えた株の行き先が無いのです。
 数が余れば、当然、値段は下がってきます。
 古典植物は増殖率の悪いものが多いので、昔は需要と供給がバランスしていました。
 現在では栽培技術が進化しているので、供給過多になってきました。
 特に、富貴蘭の実生は、同一品種を大量にばらまくので、この傾向に拍車をかけています。
 実生で商売している人達は、長い目で見れば自分の首を絞めていることになります。
 おそらく、以前ほどは旨味がなくなっていると思います。

* 買わなくなる原因
 新しく古典園芸を始める人にとって相場が安い今は買い集めるチャンスです。
 しかし、前述したように、新規に始める人は多くありません。
 多くの人は長年、古典園芸に関係していて、相場の高いときに植物を購入した経験があります。
 高価な物を購入するのは金銭的な努力が必要で、苦労して手に入れるのが熱意となっていました。
 そのとき購入した銘品の価格が十分の一以下になってしまったという経験があります。
 現在でも、新しい品種は高価ですが、高い金を出しても直ぐに安くなってしまうと思ってしまいます。
 高い時に買うのは馬鹿らしいので、もう少し安くなったら買えば良いと考えてしまいます。
 実際、今は下落するスピードが速いので、程なく相場は下がってきます。
 しかし、待っていれば、まだ下がると思うので、なかなか買いません。
 下がりきってしまうと、今度は、この金額ならいつでも買えると思って買いません。
 結局、そのうちに、その品種に興味がなくなり、次の新しい品種に目が移ります。

 また、趣味者から程度の良い余剰品が出てこなくなります。
 仕入れが高かったものを安く出すのが面白くないからです。
 ただし、裾物は殖えすぎるし、置き場所に困るので、相場が低くても出さざるをえません。
 したがって、交換会やオークションは不要品や裾物を処分する、掃除の場所になってしまいます。
 もちろん、掘り出し物が、全くないとは言いませんが。
 私の場合、不要品は庭木に着生させています。

 相場の安い今は、専門店を覗いてみることを勧めます。
 私が、初めて専門店に行ったときは、相場の高い時で、値札に圧倒され、気後れしたものですが、今は相場が 安いので、多少は気楽に入れると思います。

* 結論
 純粋に趣味として楽しむなら、今は良い時期である。


昔からの銘品を見直そう

 ネットオークションを眺めていると、人気は珍品、新しい品種、一部の高級品種に集中し、昔からある銘品には人気 が無いようです。
 もともと、珍しく、数が少ない事に価値観が存在する世界ですので、やむを得ないという事もありますが、普及品も 初めて出た時は珍品であったはずです。
 例えば、青龍獅子が最近の品種であったと仮定したら、青軸、小型、狂い葉の大珍品となっているでしょう。
 立司殿も、よく見れば多芸品で、株立ちにすれば鑑賞価値が高いです。
 値段や新しさを自慢するのでなく、株の状態が良く、品種の特徴を良く表していることを自慢するならば、古い品種にも まだまだ、活躍の場はあると思います。
 新しい高級品種は手が出ないけれど、そのうち手に入れようと、じっくり構えていれば良いと思います。
 新しい物を欲しがるという心理につけ込んで、実生のコピーが出回り、一気に裾物になった品種もあります。
 青龍獅子や立司殿のコピーを作る人はいないでしょうから、間違いなく本物です。
 鈴虫なども実生出来ず、殖えも悪く、綺麗につくるのは結構難しいので、良くできた鉢ならば、評価されても良いと 思います。
 自慢の一鉢が、「品種の名前」では無く、「出来の良さ」であれば、価値観も少しは変わってくると思います。


 私は裕福では無いので、羆のような高級品種は買えません。
 もっとも、手元に羆があったら、調子はどうかとか、盗まれはしないだろうかと、毎日が不安でしょうがない かもしれません。
 そこそこの品種を気楽に栽培していたほうが気分的に良いと思います。(負け惜しみ)
 さて、羆と建国殿羆は見た目がかなり違いますが、本当に血統的な関係があるのでしょうか。
 もし、関係が、はっきりしないなら、建国殿羆を別の名前に変えたほうが良いような気がします。
 オークション等で羆と言っているのは建国殿羆のほうで、本物の羆は、まず、出てこないでしょう。
 本物の羆は一目で判りますが、建国殿羆は、地味で怪しい物が多く、このような個体を羆と言っては、本物の羆に 失礼です。
 例えば八千代は天葉が、ぼやけた紺覆輪で出ますが、切れの良い覆輪になることはありません。
 ぼやけた紺覆輪ときれの良い覆輪は全く別の種類の斑で関連はありません。
 長生蘭の「大同中斑」が「朝日鶴」にならないのも同じ理由です。
 八千代のような品種でも、羆と関連づけられて商売されている場合があります。
 「羆の青」という品も、よく目にしますが、青から紺覆輪が出る確率は宝くじで1等に当たる確率より低いです。
 青葉の野生種が紺覆輪になる確率と同じです。
 青になってしまえば野生種と同じです。


宝錦と高千穂の縞

 高千穂の縞は以前、高価でしたが、宝錦が偽物として使われるようになってから、相場が下がったという話を聞きます。
 宝錦も鑑賞価値の高い銘品ですので、違った名前を付けられたら可哀想です。
 手元にある宝錦と高千穂の縞を比較してみました。
 ただし、私の手元にある物も100%本物であるという保証はありません。
 それに、栽培環境の違いや、個体変異で特徴が変化する場合があります。

宝錦 宝錦

高千穂の縞 高千穂の縞

  斑の色
 宝錦は、やや白みがかった黄色で斑の色は安定しています。
 高千穂の縞には黄色の縞と白縞があると言われています。
 手元の株は時期により、白縞に見えたり、黄色みを帯びたりするので、白縞なのか黄縞なのかよく判りません。
 両者共、やや後冴えです。

  地合
 宝錦は肌が滑らかで艶があります。
 高千穂の縞は、やや粗面で、艶が鈍いです。

  根
 どちらも、薄い泥根で、区別するほどの差はありません。

  葉姿
 宝錦は整然とした姫葉ですが、高千穂の縞は、やや直線的です。

  木の大きさ
 宝錦は中型で、それ程大きくなりません。
 高千穂の縞は、作により、かなり大きくなります。
 ただし、割子や生育の悪い株で、小さいものもあります。

  花
 残念ながら、開花時期で無いため、比較できません。
 記憶では、両者とも普通の白花で、差が無かったと思います。

 以上、手元のサンプルを比較すれば、区別出来るような気がしますが、1株だけを見せられたら、 騙されるかもしれません。
 植物に正しい品種名が付いているということは重要ですので、意図的に改変しないでください。
 2008/05/26


偽の山採り

庭採り

 「山採り」は貴重品扱いされるので、偽物が出回る可能性があります。
 古くからの銘品(裾物)が使われる場合が結構あると思います。
 古くからある品種でも若干、見た目が違った子が出る場合があるので要注意です。
 古くからの品種は値段の低下とともに、あまり、出回らなくなり、その特徴自体が、忘れられている場合もあります。
 山採りの株が出ていても、以前の銘品で同様の芸の物が無いか冷静に観察する必要があります。

 最近は実生品が偽の山採りとして取引される場合があります。
 実生直後では木が小さいので、すぐ判りますが、何年か経って親木の大きさになったものは判断に苦しみます。
 逆に、過剰に警戒され、実際の山採り品種でも、実生だと思われててしまう場合もあります。

 さて、写真の株は庭木に付けた「青」のフウランから突然、柄が出た「庭採り」です。
 細長い葉が少し捻れて、形は「山採り」の雰囲気があります。
 正体はなんであろうか考えてみました。

・本当の山採り
 昔、ざるで売られていた山採りのフウランを買い、その後、庭木に付けた記憶があるので、可能性はありますが、 確率は、かなり低いと思われます。
 山採りの青から柄が出る確率は、宝くじ並です。

・古くからの銘品
 例えば、羽衣のような散り斑系統であれば、青から柄が出ることがあります。
 青になった羽衣を着生させた記憶があるので、結構、確率が高いと思います。
 ただ、突然、柄が出ている為、強い後暗みに見え、羽衣とは判断されない可能性はあります。
 羽衣の古葉は暗みますが、完全には暗まず、柄は残ります。

・実生の青
 以前富岳と羽衣を交配したことがあり、その青を着生させた記憶があるので、これも可能性が高いと思われます。
 この交配種は大型で葉幅があり、この写真とは見た目が異なりますが(ギャラリー参照)、鉢で作り込めば形が 変化する場合もあります。

 今後、どの様な木になるか、鉢でもう少し作ってみます。
 いずれにせよ、大した素性では無いと思いますが、個人的には十分楽しめます。

 山採り直後の品種は簡単には出回りません。
 従来の裾物と区別が付かなければ、従来の裾物とみなされます。
 実生と疑われる場合もあります。
 2008/06/08


伯青龍と紀州白王

紀州白王 紀州白王

 オークションに出品された富貴蘭を眺めていると、時々、「伯青龍」と思われる株が「紀州白王」の名で 出品されているのを見ることがあります。
 斑に関しては似ている場合もありますが、木姿が違うので、容易に見分けられると思います。
 伯青龍は筬(おさ)がゆるく、やや立葉ですが、葉がなだらかに出ます。
 紀州白王は付けの部分で葉が折れ曲がり、少し、ごつい感じがします。
 伯青龍は地味な木が多く、地味なまま、落ち着いてしまっている場合が多いと思います。
 紀州白王は斑の状態が変化し易く、地味な木でも急に派手になる事があります。
 紀州白王の方が紺地が強く、コントラストが高く、見た目が美しいです。
 ただ、色彩に関しては写真の状態により、判別しにくいことがあるかもしれません。

 品種違いと思われる場合、常に安い品種に高い品種の名が付き、逆は、まずありません。
 オークションの写真やコメントを見ながら、その品種が本物であるかとか、出品者の人格を推測するのも楽しい? かもしれません。
 2008/06/09


プラ鉢は安くて手軽だが

 私が富貴蘭を始めた頃は末端の品種でも1万円位はしていました。
 鉢数も少なかったので、全て楽鉢に植えていました。
 その後、栽培鉢数が増えると同時に末端の品種の値段が急激に下がってきました。
 私は富貴蘭で商売をしていませんが、増えすぎた株は専門店で引き取ってもらっています。
 あまりにも商品価値の低い物は、引き取ってもらうのも気の毒ですので、庭木に着生させているものもあります。
 今では、末端の品種の引き取り価格が新品の楽鉢程度になってしまいます。
 棚整理が目的ですので、引き取り価格が安いのは我慢できますが、その都度、楽鉢を買い直して補充したら合いません。
 鉢から抜いて出荷する訳にもいかないので、手放す株はプラ鉢に植えるようになりました。
 一部、素焼き鉢も使用していますが、汚れが激しいので、植え替えの時、いやになります。
 プラ鉢にも、いろいろ種類がありますが、私は側面に切り欠きのあるタイプを使用しています。
 これだと、生育期に水を沢山やっても、すぐに乾いてくれます。
 反面、水を控える冬は、乾きすぎて傷めてしまう心配があります。
 側面に切り欠きの無いプラ鉢も有りますが、生育期に水を沢山与えると乾きが遅い気がします。
 その点、楽鉢は適度の保水力があり、安心して使えるので、大事な株は楽鉢に植えています。
 最近、楽鉢の使用比率が少し、復活してきました。
 もちろん、どんな種類の鉢でも、管理次第で実用には耐えます。

 側面に切り欠きのあるプラ鉢には、他にも問題があります。
 切り欠きから、根が空中に伸び出す場合があり、鉢掛けから、鉢が抜けなくなってしまうことがあります。
 さらに、他の鉢から空中に伸びた根が切り欠きから入り込み、鉢が連結されてしまう場合があります。
 こうなると、簡単には身動き出来ません。


よく見れば素晴らしい

立司殿 立司殿

 立司殿は古くからある登録品種です。
 値段が安くて見向きされないのか、最近は、あまり見かけなくなりました。
 しかし、よく見ると芸が多彩で魅力があります。
 まず、葉姿に特徴があります。
 ややコントラストが低いですが、オリーブ色の覆輪です。
 天葉の葉縁に白斑が出ます。
 株立ちにすれば、さらに鑑賞価値が上がると思いますが、1株でも鑑賞に堪えます。
 2008/06/19


本当にルビー根?

 オークションで、鉢から抜いて、ルビー根を写した写真を見ることがあります。
 しかし、鉢の中で伸びた根と空気中に伸びた根が同じ色とは限りません。
 例えば、黒牡丹は空気中に伸びる根は濃い赤根ですが、鉢の中で伸びる根の先端は美しいルビー根であり、 さすが、金牡丹の親戚だと思わせます。
 鉢の中は光線が入らないので、葉緑素の生成が抑えられる為と思われます。

 縞物で斑が暗まない品種では、軸の部分に斑が残ります。
 軸の斑の部分から伸びた根はルビー根になる場合があります。
 ただし、斑の無い部分から伸びた根は泥根になります。
 この場合も、葉緑素の存在が、根の濁りと関係しています、
 羽衣系統の散り斑品種では、斑が明るく冴えた個体では、ピンク根やルビー根になる場合がありますが、 斑の状態により、根の色は変化します。

 斑の場合、状態が成長とともに変化する「後冴え」や「後暗み」がありますが、根先も成長と共に変化する場合が あります。
 霊峰は季節により、根先の色が若干、変化します。
 白雲閣は春、伸び始めは白根ですが、徐々に色が乗ってきます。
 これは、斑の後冴えに相当すると思います。

 一言で「ルビー根」といっても、いろいろなパターンがあり、金牡丹のように安定してルビー根を出す品種は 多くありません。


突然枯れる実生苗

 私は現在、実生苗を買う事は殆どありませんが、以前は沢山購入していました。
 銘品のセルフ実生もあれば、出所不明の新種?もありました。
 当時、親木が高かったので、安く入手した実生苗を大きくすれば低コストで品種が揃うと考えた為です。
 しかし、現在、当時の実生苗は、あまり残っていません。
 理由の第一はセルフ実生と株分けした本性品では、厳密には同じでは無いと思い始めた事にあります。
 その後、本物の値段が下がったので、買い直し、実生品は処分された場合が多いと思います。
 実生品と断った上で下取りに出したり(二束三文)、庭木に着生させたりしました。
 しかし、枯れてしまったものも結構あります。
 枯れるのは来歴不明の新品種(交配種?)が多いような気がします。
 栽培管理が稚拙という問題もあるかもしれませんが、どうも、特定の品種が枯れやすいような気がします。
 ある大きさまでは順調に生育するのですが、突然、生育しなくなり、枯れてしまうのです。
 まず、春に新根を出さなくなります。
 同時に天葉が腐ったり、芯止まりになり、そのまま枯れてしまいます。
 自然界(山実生)でも、弱い品種は生まれるとは思いますが、淘汰されて丈夫なものだけが残るのでしょう。
 もちろん、実生品種の全てが弱いわけでは無く、順調に親木に成長するのも多いと思います。
 実生品種は、いろいろな遺伝形質を受け継ぐので、当然、中には育ちにくい個体もあると思います。
 逆に、丈夫な実生品種は沢山、出回り、消耗せずに全て親木になったら、一気に数を増やす事になります。
 そういうわけで、実生品種に大金を投じるのは避けた方が良いと思います。


富貴蘭との出会い

 私が初めて富貴蘭に出会ったのは20年以上昔の事です。
 場所は、一般の園芸店で、大きな敷地面積の店ではありましたが、古典園芸の専門店ではありませんでした。
 当時、私は蘭に対して、他の植物とは異なる、特別な興味を持っていて、野生蘭を少しばかり栽培していました。
 店にあったのは、楽鉢に植えられた10鉢程度の富貴蘭でした。
 品種は東出都、御城覆輪、駿河覆輪等で、今思えば、裾物ばかりですが、当時は相場が高く、1鉢2万円近い値札が付いていました。
 これらの蘭を初めて見たときの感動を、今でもハッキリと覚えています。
 第一に、野生のフウランの何十倍もする値段。
 それから、フウランの厚い葉に入った鮮明な覆輪斑の端正な美しさ。
 丁寧に空洞植され、銘名されていて、自分の知らない、未知の世界が存在することを予感させました。
 直ちに富貴蘭を栽培する意志が固まりましたが、置いてあった蘭を、その場で買っては帰りませんでした。
 まず、書籍で、栽培方法や、品種を憶えるために勉強しました。
 自分に栽培出来そうだと確信を持てたので、初めて富貴蘭を手に入れました。
 最初に、手に入れた品種は「朝日殿」「金楼閣」「鳳凰殿」でした。
 その後、いろいろな高級品種を目にする機会はありましたが、最初に富貴蘭に出会ったときの感動には及びませんでした。


勉強代

 富貴蘭を長年、栽培していると、いろいろな失敗があります。
 以前は富貴蘭も高価でしたので、失敗すると金銭的なダメージが大きく、精神的に落ち込みました。
 現在では、蘭の値段が下がり、情報量も多いので、以前のような失敗も少ないとは思いますが。

 相場を間違える
 富貴蘭を始めて間もない頃は、相場も品種も判らないので、安物を高く買わされたりします。
 私も、羽衣を17万円で買わされた経験があります。
 品種は羽衣で、間違いは無かったと思います。
 羽衣は、当時は高価で、上柄(宝船)は7〜8万円はしていたようですが17万円は法外でした。
 その店の主人が、意図的に高く売ったか、店の主人自体が相場を知らずに高く仕入れたかは判りませんが、客にとっては同じことです。
 その店に行ったのは、その時、一度だけになりました。
 普段から、品種や相場に対する知識を身につけている必要を感じました。

 枯らす
 富貴蘭は丈夫で、健全な株であれば、枯れる事は滅多にありません。
 ただ、派手な柄物や、根の状態の悪い株は、栽培が難しい場合があります。
 私は30万円で購入した大洞丸を枯らした事があります。
 成長が遅くて、消耗に追いつかず、徐々に小さくなって、消滅してしまいました。
 派手な柄ものは本質的に栽培が難しいので、覚悟して入手する必要があります。
 品種による差もあり、金甲覆輪等は比較的丈夫です。
 根の悪い株は、回復に時間が掛かったり、最悪、枯れてしまう場合もあります。
 良心的な店は、購入するとき、根の状態を教えてくれ、状態の悪い株は客に勧めません。
 根の状態の悪い株は、下葉を落とし、葉の艶も悪く、深植して支柱を立てたりしているので、見分けが付きます。
 いじけた株というのもあります。
 何となく、調子が出ず、年々、小さくなって行くような株です。
 原因不明で対処方法も分かりません。
 出来るだけ、大きくて、元気な株を入手するようにします。
 その他、細菌性?と思われる病気が、希に発生します。
 この病気は、株立ちの場合、全ての芽が完全に枯死してしまい、救済方法がありません。
 滅多に発生しませんが、3年程前に、黒耀の株立ちが全滅しました。
 大事な株はスペアーを用意しておく必要を感じます。

 柄抜け
 富貴蘭の斑は変化し易く、安定しません。
 多くの縞ものは、派手になったり、地味になったりするので、運だと思い、蘭に任せます。
 織姫等は、地味な斑でも、徐々に派手になる場合が多いです。
 派手になっても細かな散り斑が残り、枯れる事はありません。
 一般の縞や覆輪では、派手になりすぎると生育出来ず、枯れてしまいます。
 割子の場合、派手な子でも、親に付いている時は、親の力を貰い、生育している様に見えます。
 親から、離しても、ある期間は生きてるので、自分の力で生育しているように錯覚します。
 長期的に見れば、徐々に枯れていきます

 逆に、慶賀は、徐々に地味になり、斑が消えてしまう事が多いです。
 私も、以前、30万円程度で購入した慶賀が、青になってしまった経験があります。(2回も)
 このような訳で、上柄の慶賀は、非常に数が少ないと予想します。
 しかし、上柄の慶賀は素晴らしいので、失敗にも懲りず、何度も求めています。
 ポイントとして、出来るだけ全面に散り斑状の斑が入った、派手目の株を手に入れれば、固定性が高いと思います。

 品種違い
 富貴蘭は栽培方法で別種のように見える場合があります。
 例えば、光線の弱い場所で、過湿気味に栽培すると、徒長して、別種のように見えると言います。
 同じ環境でも、斑のハゼ方が悪いと、白縞が萌黄縞になったりします。
 品種の数も増えたので、正確に見分けるのは大変です。
 ここら辺の混乱を衝かれ、品種違いを掴まされる事があります。
 売り手が仕入れた時点で、既に偽物を掴まされている場合もあります。
 対策として、予め買う品種を決め、特徴を良く理解しておくことが重要です。
 特に、よく似た品種の存在をチェックします。
 例えば、紀州白王の札が付いているが、伯青龍ではないかとか、一応疑ってみます。
 それから、信頼出来る専門店で買えば、間違いは少ないと思います。
 名の知れた銘品でも間違いが発生するのですが、山採りの無銘品などは、尚更、大変です。
 まず、銘品の裾物で似た品種が無いかチェックします。
 忘れられた古い品種が、山採り品種として再登場する場合もあります。
 最近では、実生ではないかと疑われる場合も多いです。
 今までに無い特徴を持っていないと、第三者には、新しい品種として、認められません。

 実生品種
 以前、孔雀丸の実生が青牡丹という名で数十万で取引された話は有名です。
 その後、正体が分かると、皆が、大量に作り出し、程なく、1本500円になりました。
 最近では、豊明殿や白牡丹、金牡丹の実生が出回りましたが、1本も買っていません。
 一応、親の名を騙っていますが、自家受粉なのか、交配しているのか、あるいは親とは関係ないのか、 よく判っていません。
 これらが、大きく成長し、親以上の特徴が見いだされたとき、初めて評価されると思います。
 私の家の近くに、富貴蘭の実生を商売にしていた人がいたので、情報が手に入り、実生品に高い授業料を払った事は ありません。
 私自身も実生の経験があり、他のページに、実生に関する記事があるので、参考にしてください。


富貴蘭に表裏は、あるのだろうか?

 富貴蘭を購入するとき「表側に柄があるので良い子が出ますよ。」と言って勧められたりします。
 花芽や子芽を出す方が表ということになります。
 表裏が問題になるのは、柄が偏って出る棒縞の品種に対してのみで、覆輪や無地では大した問題ではありません。
 ただし、株立ちの場合、両側から子が出た方が奥行きが出て、見栄えが良いということはあります。
 さて、本当に富貴蘭に表裏があるのでしょうか?
 自分の栽培している富貴蘭を観察してみました。
紅扇  まず、完全に正面や背面から子が出ている個体は少なく、子の多くは側面から出ていました。
 その際、親と子の葉が干渉しないように若干、前側に傾いて出たり、後ろ側に傾いて出たりします。
 覆輪の株では均一に前後に子が出ている鉢が多く、表裏は感じられませんでした。

朝日殿  縞の品種では片側から子が出ている個体が多かったです。
 斑の性質なのか、たまたま私の棚がこうなったのかは判りません。
 1本立ちの親に子が出た場合、親に次の子が出る前に孫が出る場合が結構あります。
 親から見ると片側がにぎやかになってしまいます。
 ただし、全く片側しか出ない訳では無く、前後に子が出ている株もあります。
 一本立ちの株では花茎の跡が前後、両側に残っている株が結構、多いです。
 100%表裏があるとは言い切れないような気がします。
 自然界では一度、着生すると鉢のように、自由に向きを変える事は出来ません。
 従って常に日の当たる方向に花や子を出すのではないでしょうか。
 鉢は置き場所や表裏の位置を自由に変えられるので、子の出る面を変えられるかもしれません。
 縞の品種を購入するときは多少高くても葉の中脈を境にして両側に斑のある「表裏の無い」株を購入すれば 間違いありません。
 2009/04/12


黄葉する

紅葉

 斑入りという訳ではありませんが、落葉間際のフウランの古葉は黄色になります。
 ただし、葉が萎びたり、短期間で褐色になって落葉したりするので、鑑賞には値しません。
 斑入りの芸としては、後冴えの虎斑や黄散り斑があり、こちらも古葉が黄色になるのですが、区別は容易につきます。
 ただし、以前、栽培中の孔雀丸の下葉5〜6枚が長期間、綺麗な黄色になり、おそらく、店で虎斑だと言われたら信用して
購入してしまうような状態になったことがあります。
 その後、数ヶ月で、全葉が落葉して枯れてしまいました。
 珍しいケースだとは思いますが、このようなこともあるので注意が必要です。
 写真のフウランは私の実生ですが、紅色の色素が多いのか、比較的長期間、下葉が紅葉します。
 一ヶ月程度は、萎びずに透明感のある紅色を保ちます。
 まだ、小苗であり、親になったときも、この状態を継続できるかは疑問ですが、現在のところ、 私だけの楽しみです。
 2009/07/18


最近のオークション

 私は植物を購入するのに専門店を利用しています。
 実物を手に取って確認しないと購入する気にならないのが理由の一つ、専門店で沢山の陳列品をじっくりと眺めるのが 楽しみであること、それから店の主人と品種や栽培方法の話が出来るのも理由です。
 しかし、近くに専門店の無い人とか、都合で植物を手放さなければならない人にはオークションは便利かもしれません。
 出品数が多いので掘り出し物を安く手に入れる可能性もあります。
 取引していなくても、オークションで現在どのような品種が流通していて、どのような金額であるかとか、覗くだけでも楽しい ものです。
 私も暇なときは、この出品物は本物だろうかとか、この出品者は怪しくないかとか想像して楽しんでいます。
 オークションや交換会での相場は専門店の売値の半分程度の金額だと認識しています。
 勿論、直ぐに売れそうな人気品種では、専門店の売値との差が縮まり、裾物では差が大きくなります。
 出品者にはアマチュア、セミプロ、店舗を構えた専門店等、いろいろあります。
 専門店の場合、店舗にコストが掛かるし、税金も払わなければならないので、どうしても高めの金額になりますが安心です。
 オークションで出品しているセミプロの一部には悪質な人もいるかもしれませんし、アマチュアの人は無意識のうちに相手を騙す 可能性があります。
 ここ何年か富貴蘭のオークションを眺めていて、最近、やや沈滞しているのではないかと思います。
 以前は、もっと活発でしたが、一時期、実生苗が大量に出回りました。
 実生苗は一つの莢から大量に出来ますが、銘品をコピーしても多くは芸の甘い二級品です。
 出品者の中には、これら二級品に親と同じ名前を付け、売り切って儲けようという人たちがいました。
 買う方も、安く買いあさって、一作して高く売ろうとか、交換会で捌こうかと考える人がいたようです。
 純粋に趣味で楽しもうという人の数は、それほど多くないのに大量の苗が出回り、4〜5年経てば親になります。
 こうして個体数が増え、芸の甘いコピーが増えたので相場が下がりました。
 本来は品種名で区別できるはずですが、実生品に対抗して「本性品」という訳の分からない言葉も盛んに使われました。
 実生以外でも、一部で類似品を高値で売ろうとしたり、それらしき理由を付けて「珍品」が作られたりしていました。
 これらは、全て相場を下げる原因になります。
 相場が下がれば、買う方にとって一見、好都合と思えますが、そうでもありません。
 程度の良い銘品が出品されなくなりました。
 (真面目に)売る方にとってオークションが割に合わなくなったためです。
 何十万円もした銘品の相場が1/10以下になってしまったのですが、1/10の値段で本物を買おうとしてもどこにも 無いのです。
 結果的に裾物、処分品、10本一山の実生、得体の知れない仮名品等がメインになってしまいました。
 以前は専門店も、多く出品していましたが、最近は減りました。
 ある店のご主人は出品の目的は自分の店のホームページに誘導することだと割り切っていました。
 例えば電気製品であれば、メーカー、機種、定価、新品か中古かと言う明確な基準があるので取引しやすいのですが、  相場に基準のない植物では売る方と買う方の信頼関係、結果に対する満足感が一層、求められます。
 電気製品の場合、機種が短期間で更新されていくので、状況はリセットできるのですが、植物の銘品の名前は永く守っていく 必要があります。
注)最近のオークションと言う題名ですが、2010年1月に書きました。
  時間が経てば「最近」でなくなりますが...


大聖海

大雲海実生  最初に「大雲海の実生青軸」として購入した個体

大聖海  その後「大聖海」として購入した個体

 何年か前に「大聖海」という実生品種が出回った事があります。
 実生品種ですので一時期、かなりの数が出回ったのですが、最近では、あまり見かけなくなりました。
 上側の写真は大聖海が出回る前の、早い時期に「大雲海の青軸実生」として購入したものです。
 写真は冬季に撮影したので、皺が寄っていますが、葉幅があり、しっかりした木です。
 天葉は明るく出るので、光線を採れば虎が出るのかもしれません。
 紺縞は無く、現在、日の出丸と呼ばれている個体に該当するような気がします。
 その後、大聖海が出回るようになりましたが、そのとき購入したのが二枚目の写真です。
 天葉は総散斑状で明るく、紺縞が入ります。
 葉幅は並で、一枚目の写真の個体とは違うような気がします。
 実生では、いろいろな個体が出るので、親が別とは言い切れませんが、私にはどうしても富嶽系統に見えてしまいます。
 最近は、実生によって新しい品種が沢山出るのは良いのですが、名前や来歴に信用が置けないので、購買意欲が落ちます。
 2010/3/22


芯から花茎が出た

芯から花茎が出た仁摩錦  芯から花茎が出た仁摩錦

 かなり前に「仁摩錦」という名前の富貴蘭を買いました。
 購入時は細立ち葉の白縞の木でしたが、程なく芯が止まり、枯れてしまいました。
 枯れる前に子が何本か出ましたが、その内の1本が写真の株です。(その後殖えました)
 この個体は紺縞又は萌黄縞で、親より葉幅があり、全く別の品種に見えました。
 兄弟株は無地でしたが、その後、芯が止まり、しばらくして、止まった芯から金牡丹のような明るい子が出ました。
 この子には期待したのですが、残念ながら枯れてしまいました。
 こちらの紺縞の株は、その後、順調に育っていたのですが、最近、芯から花茎を出してしまいました。
 しかも、ご丁寧に2本も出しています。
 また芯止まりになるのではないかと心配しています。
 芯から花を出す品種としては「青軸朝鮮鉄」や「阿波針紅」がありますが、花が咲いた株は芯止まりになり、 やがて枯れます。
 これらに似た形状の「天泉」も、やはり芯から花を出しますが、こちらは芯が止まりません。
 この仁摩錦は、どうなるのでしょうか。
 仁摩錦が常に芯から花茎を出す訳ではありませんが、あの手、この手でトラブルを発生する品種のように感じられます。
 実はこの仁摩錦が本物であるかどうか自信がありません。
 芸がコロコロ変わり、どれが仁摩錦の本芸か判らない為、比較のしようが無い為です。
 芸が変わり易いのが仁摩錦の特徴であるというなら本物ですが。
 仁摩錦という品種は、あまり見かけませんが、皆、こんな物でしょうか。
 2011/07/07


新湖東は朝日殿から出た?

朝日殿

 朝日殿はコントラストの低い浅黄の縞ですが、時々、白縞を出し、3色となったものを三光錦と呼んだりします。
 又、浅黄の縞が消えて白縞だけになったものが新湖東であると聞いた事があります。
 写真は朝日殿ですが、子の1つに白縞が出ています。
 朝日殿の特徴である浅黄の縞は殆ど消えていますが、僅かに残っています。
 紺地は他の株より強く、見ると新湖東によく似ています。
 このまま新湖東に固定するかどうか不明です。
 新湖東になろうが、朝日殿に戻ろうが、大した問題では無いと思っている人が多いと思います。
 しかし、安物品種で、いろいろ想像の楽しみが得られればエコで良いのでは無いでしょうか。
 朝日殿からは時々、白縞が出るのに、新湖東からは、なぜ浅黄縞が出ないのだろうか等、考えてみるのも 楽しいかと思います。
 2011/07/18


春光

春光

 ずっと富貴蘭の話でしたが、今回は寒蘭の話です。
 かなり前の園芸誌の広告で寒蘭の「春光」が1鉢1000万円で売られていたのを覚えています。
 台湾では恵蘭の柄物が1鉢3億円したというニュースも目にしています。
 景気の良い時代でした。
 その後、数年で春光は数十万円になり、現在では数万円で買うことが出来ます。
 私も2年程前に通信販売で購入してみました。
 私が栽培している寒蘭は少数で、いずれも入門品種ですが、上手に作れず、枯らしたものも結構あります。
 寒蘭の柄物は初めてですが、無地の寒蘭でも枯らしているので、長くは保たないと思っていました。
 ところが、栽培してみると非常に丈夫であることが判りました。
 翌年の夏には、大きな新芽を出し、作上がりしました。
 柄の狂いも無いようです。
 その翌年(今年)の夏には、なんと新芽が4本出ました。(写真)
 春光が何故、急激に安くなったのか判った様な気がしました。
 ただ、丈夫で、殖えやすく、柄の狂いが少ないと言うことは悪いことでは無いので、楽しむには良い品種です。
 次の目標は、大株にして花を咲かせる事です。
 2011/07/25


斑かバイラスか

紀州伏虎

 バイラスとはウイルスの別名で、バイラス病とはウイルスによって引き起こされる病気を言い、単にバイラスとも言います。
 ユリやアマリリス等では感染すると、まともな花が咲かず、鑑賞価値を著しく下げ、致命傷となります。
 不治の病で、感染した個体は焼却処分しかありません。
 発病したアマリリスを観察すると、特徴ある斑紋があり、バイラス斑と言われます。
 蘭ではネジ花に似た斑が現れます。
 写真は富貴蘭の「紀州伏虎」ですが、若干、気持ちの悪い斑で、バイラス斑とよく似ています。
 ただし、斑の周囲が汚く汚れたりせず、鑑賞価値を下げるものではありません。(斑の好き嫌いは、あるとは思いますが。)
 花も普通に咲くようですし、周囲の蘭に感染する気配もありません。
 一つの芸として認識されています。
 斑の色は違いますが万年青の「XXXの図」という芸にも似ています。
 この事から、「万年青にはバイラスは存在しない。」と言う人がいるという事を別のページで書きました。
 鑑賞価値が下がれば病気で、そうで無ければ芸なのか、あるいは病気でも感染しなければ良いのか、又は全く病気とは無関係 なのか、気になるところです。
 今のところ、紀州伏虎は隔離してはいません。

 もう一つ気持ちの悪い富貴蘭があります。
 星斑の金光星です。
 この星斑もバイラスだという人がいます。
 こちらは斑の影響か、花が咲きません。
 蕾は出るのですが、咲く前に腐ってしまいます。
 こちらは、現在、隔離して栽培しています。
(星斑が伝染したという話は聞かないので、隔離する必要は無いと思いますが。)

追補)君子蘭にも紀州伏虎のような斑の品種があるようです。
 カタログの写真では普通の花が咲いていました。
 2011/10/30


吟風と白麗

吟風  吟風

白麗  白麗

 吟風は結構、前から栽培していますが、最近でも人気があるようです。
 ある店で「吟風と白麗が混同されている。」という話を聞きました。
 私は2000年頃(はっきりしませんが)ほぼ同時期に有名な専門店で(同じ店で)2品種を購入しました。
 そこで、両者を比較してみました。
*** 木の大きさ
 奄美フウランですので両者とも大きくなります。
 ただし、吟風の方が一回り大きくなります。
 ただし、これは最大限に育った場合の話で、割子や調子の悪い株では比較出来ません。
*** 紺地
 白麗の方が紺地が強いような気がします。
*** 斑
 白麗は白縞です。
 ただし、斑の縁は黒く汚れます。
 また、細い縞は墨縞になります。
 吟風は萌黄縞ですが、時々、浅黄や白に冴えた斑を出します。
 白縞になっても汚れは出ません。
*** 墨
 白麗は軸の泥が強く、墨が目立ちます。
 吟風は墨が殆ど出ません。
*** 根
 両者とも太い泥根ですが、あまり伸びません。
 白麗は縦皺が目立ちます。
*** 生育
 両者とも強健で成長が早く、子出しも良いです。
*** 価格
 当時の価格は高価でしたが、現在の価格の参考にはなりません。
 言えることは、吟風は白麗の3倍程度であったという事です。

 少し前にオークションで吟風が出品されていて、「縞は無いけれど墨がよく出ている。」と書かれていました。
 私は、これは「白麗」ではないかと思いました。
 2012/09/03


株立ちと寄せ植え

実生豆葉

 展示会や写真集で富貴蘭の株立ちを見ることがあります。
 1本立ちでは寂しい裾物品種でも株立ちなれば鑑賞価値が上がり、物欲が湧きます。
 ましてや、高級品種の株立ちともなれば見事としか言えませんが、高値の花で、欲しくても手が出せたものではありません。
 裾物の株立ちは入手の機会があります。
 裾物の1本立ちでは買い手がいないので、株立ちで取引されるわけです。
 ところが裾物と言えども株立ちにするのは年月、手間暇が必要となります。
 そこで、寄せ植えをして手っ取り早く株立ちを作ろうとする人が出てきます。
 下手に寄せ植えをしたものは葉や軸の向きが不自然なので直ぐに判りますが、うまく寄せたものは判らない場合もあります。
 植え替えようとしたときバラバラになって寄せ植えだと気付く訳です。
 バラバラになった株を再び組み合わせるのは結構、面倒ですし、独立させるのは沢山の鉢と水苔、置き場所が必要と なります。
 盆栽では寄せ植えは普遍的な技術ですが、富貴蘭の場合、人によっては寄せ植えを極端に嫌います。
 寄せ植えでも何年か持ち込んで根が絡み、バラバラにならないのであれば私は良いと思います。
 勿論、全株が同一品種であり、見た目が自然で、美しい必要はあります。
 嫌う人がいるから寄せ植えを隠して株立ちとして扱う人が出てくると思います。
 バラバラになってしまうのは困りますが、そうでなければ鑑賞価値で判断したいと思います。
 本当の株立ちであっても、何年かすれば繋がった部分は枯れてなくなり、根が絡んだ状態でまとまっているはずです。
 それに、本当の株立ちが全てバランスが取れて美しい訳ではありません。
 子が偏って出てバランスが悪い場合も多いと思います。
 株立ちは根が沢山出ているので傷みやすく管理は大変です。
 根が傷んでバラバラに分かれてしまう事も結構あります。
 傷んでバラバラに分かれた株を寄せて植えて置くことは結構ありますが、積極的に株立ちをつくる気にはなりません。
 最近では同一品種をまとめて砂植えにすることも多いです。
 これは株立ちを作る目的では無く、単に鉢数を減らすのが目的です。
 写真の株立ちは1本の実生苗から増やした株立ちです。
 根が沢山で、よく判りませんが、最早、全部の株が繋がってはいないと思います。
 私自身の実生による特に特徴の無い豆葉ですが、株立ちになっていれば少しは見られます。
 天咲きの花ですが、毎年、1本程度、段咲きの花が咲きます。
(この1本が同じ株か別の株かは確認出来ていません。)
 これでも15年くらいは経っています。
 2013/05/05


天然物

庭木付け風蘭  庭木付け風蘭

 オークションに大量の山採り風蘭が出品されていました。
 現在でも、これだけの風蘭が採れるのは驚きですが、本当に山採りか疑問も感じました。
 別の出品者が似たような株を実生交配種として出品していたからです。
 以前、着生した風蘭を枝ごと切り落として出品されたものを見たことがあります。
 これだと本当に着生したものだと判るのですが、これはこれで問題です。
 今回の出品は剥がした株ですが、根も十分あり栽培品かもしれません。
 上の写真2点は自宅の庭木に着生させた風蘭ですが、実生の青や銘品の柄抜けです。
 これを剥がせば山採り風蘭として出品出来るかもしれません。
 現在は銘品の値段が下がっているので山採り風蘭を求める理由は殆どありません。
 昔、ウチョウランは山採り品が珍重され、実生品種を嫌う傾向がありました。
 その後、実生で優れた品種が量産されるようになり、山採りの価値は無くなりました。
 エビネも野生品を珍重していた頃、ウイルス問題で危機的状態に陥りましたが実生で生き残りました。
 野生蘭が園芸植物となった訳ですが、これは良い事だと思います。
 実生でも優れたものが選別されれば問題はありません。
 一時期、風蘭の実生品が親の名前だけで高価に取引されたことがあり、問題になりましたが、現在は落ち着きました。
 実生品は青が大量に出るので、これらが一山いくらで出回れば山採りの必要はありません。
 野生品の変異種を選別するのは良いのですが普通種は山に残して欲しいと思います。
 ところで、大量の山採りフウランを入札した人は何に使うのでしょうか。
 庭木に付けるのでしょうか、ヘゴや石に付けるのでしょうか、1鉢500円の鉢植えを沢山作るのでしょうか。
 興味のあるところです。
 2014/04/11


墨と泥

吟風 吟風

墨 子株の墨

 柄物の富貴蘭で墨のある無しが品種の見分けるポイントになっている場合があります。
 柄の抜けた個体が「墨は入っている」という紹介文で出品されている場合があります。
 大抵、泥の強い個体で、出品者はシアンの汚れを墨と勘違いしているのでは無いかと思ったりします。
 当然、墨の写真などはありません。
 墨とは本家「墨流し」のような芸を言う筈です。
 上の写真は自宅の「吟風」です。  親は紺縞ですがコントラストが低く写真では判りません。
 墨は出ていません。
 子は縞がありませんが虎斑のようにはぜている葉があります。
 こちらは軸の部分に墨がありますが、まだ若い為かシアンの汚れはありません。
 吟風は何鉢かあるのですが、柄のある木には墨は出にくいようです。
 柄も出たり出なかったりするし、墨も出たり出なかったりするようで品種判別の決め手とはならないようです。
 2014/10/26


斑入りの石楠花

麗蜂(吾妻石楠花系統)  麗蜂(吾妻石楠花系統)

書籍 「世界の石楠花」 書籍 「世界の石楠花」

 「霊峰」という品種名の斑入り石楠花を2鉢購入しました。
 1鉢はホームセンターの園芸コーナー、もう1鉢は普通の園芸店です。
 ホームセンターでは何鉢かの日本石楠花が置いてありましたが、斑入りは霊峰の1鉢だけでした。
 数日後、園芸店で再び「霊峰」を発見しました。
 園芸店では多数の石楠花が置いてあり、斑入りも日本石楠花、西洋石楠花、各々5種類くらいはありました。
 最初は別の斑入り品種を購入するつもりでしたが、霊峰の斑が一番美しかったので、また購入した訳です。
 石楠花の写真集「世界の石楠花」では木口氏のコレクションとして多数の日本石楠花の斑入り品種が紹介されています。
 この中で霊峰は
 「アズマシャクナゲの斑入り中、代表的稀貴品、濃緑色の葉一面に黄金色の刷け斑がはいり、ほどよい大きさ の丸味のある中長葉で、葉裏は薄白茶色の綿毛を生じます。
 姿もコンパクトで、作りこむほど見事な盆栽となります。」
 と紹介されています。
 書籍は昭和57年4月に出版されているので、かなり古くからある品種のようです。
 私が感心したのはホームセンターでも園芸店でも斑の入っていない品種と同じ値段であったということです。
 どちらの店でも5号のプラスチック鉢に入り、接ぎ木2年程度の苗木が980円(税別)でした。
 尚、写真付きラベルのデザインが異なるので生産者は別だと思われます。
 大衆園芸の世界では生産コストが変わらなければ斑があっても無くても値段が変わらないということでしょう。
 実に潔いと思います。
 大衆園芸では安く買える石楠花でも斑入り専門店やシャクナゲ専門店では高価に扱われている場合があります。
 とりあえずネット通販で霊峰が、どの程度の金額で販売されているか調べてみました。
 私が検索した範囲では5号鉢で6400円(税、送料別)というのが最高でした。
 2番目が5800円(税、送料別)でした。
 これらの業者が暴利を貪っているのか仕入れが高いのかは知りませんが驚くべき値段です。
 高価な販売業者は全体的に高いのでは無く、品種により値段の差が大きいという印象を持ちました。
 「これは貴重な品種ですので高価です。」という差別化の販売戦略を実行しているようです。
 電気製品では安く買えると定評のあるネット通販ですが980円以下の霊峰を探すことは出来ませんでした。
 昔は植物の値段が価値を示しているような錯覚を持っていました。
 その為、980円の鉢には目もくれず、6400円の鉢を注文していたかもしれません。
 6400円の鉢を購入して比較したわけではありませんが980円の鉢と差は無いと思います。
 接ぎ木の手間、出荷までの管理、運送費、売れ残りのリスク等を考慮すると980円は非常に良心的です。
 久しぶりに良い買い物をしたと自己満足しています。


キバナセッコク

 キバナセッコクに「舞鶴」という中透け品種があります。
 かなり前から名前は知っていて機会が有れば手に入れたいと思っていました。
 しかしながら現在でも数が少なく、高価で入手出来ていません。
 最近、あるサイトで「舞鶴」には系統があって、交配で作られた物があるという記事が書かれていました。
 私が欲しいのはキバナセッコクの舞鶴ですので、入手の機会があったら注意しないといけません。
 別のサイトで「栽培している舞鶴に高子が出た。」という記事と写真がありました。
 私の経験ではキバナセッコクは高子を出した事が無いので、ひょっとしたら品種違いかもしれません。
 「三冠王」というセッコクとキバナセッコクの交配種がありますが、最初の頃はキバナセッコクとして高価に 販売されていました。
 私もキバナセッコクと思い込んで入手しました。
 ところが三冠王はセッコクの血が濃くて、やたらと高子を出します。

 下の写真は何十年も前に「キバナセッコクの斑入り」として入手したものです。
キバナセッコク斑入り
 白散り斑ですが、新芽は明るく出て、2年目になると少し暗みます。
 花は白花でピンクが乗ります。
 花が白いのは斑のせいではないかと思っていました。
 丈夫で、ナメクジさえ注意すれば、そこそこ殖えます。

 違ったタイプの斑入りを期待して自家受粉してみました。
 出来上がったのが下の写真です。
キバナセッコク斑入り
 残念ながら斑は全く出ませんでした。
 花は蕾の内は緑色ですが咲くと白くなり、花弁にピンクを乗せます。
 キバナセッコクとセッコクの交配種に「イセ」という品種、あるいは系統がありますが、この個体も セッコクの血が混じっているかもしれません。
 高子は出ないようです。


MT車

 ここでは植物栽培に関連する内容を書いていましたが今回は植物には無関係です。
 私は今までマイカーとして6台の新車を購入しましたが全てMT(マニュアル)車です。
 最近インターネットで「最近ではAT(オートマチック)車の方がMT車より速く走る事が出来る。」という記事を 見ましたが私は早く走る為にMT車に乗ってきた訳ではありません。
 AT車が怖くて乗れない為です。
 ATは面倒なクラッチ操作をしないで楽に運転出来るのが謳い文句であると言えます。
 しかし、私の感覚では「クラッチが使えなくなったATは怖い。」です。
 高速道路を走行しているときはATでもMTでも差がありません。
 問題は発車と駐車の時です。
 この時私は半クラッチで車速をコントロールしていますがAT車ではアクセルだけでコントロールしなければ なりません。
 最近の車はパワー、トルクが大きく、少しアクセルを踏んだだけで急発進します。
 履いている靴とかエンジンの暖まり具合によって微妙に感覚が違います。
 ちょっと踏み込み過ぎた思ってブレーキを踏もうとするのですが、この時、間違いが起こります。
 どういう訳かブレーキを踏むつもりで、さらにアクセルを踏んでしまうようです。
 結果としてコンビニに突っ込んだり、岸壁から海に落ちたり、高所の駐車場から落下したりします。
 障害物を検出して停止させるシステムが組み込まれた車も有りますが全ての場合に有効に作用するとは思えません。
 一方、クラッチで車速をコントロールする場合は踏み込んだ場合、動力伝達が切れてしまうので危険は低減されます。
 最近、車を購入する際MT車の選択肢が殆どありません。
 車のメーカーはスポーツ走行の為では無く安全の為にMT車を欲しているユーザーが存在することも理解して欲しいと 思います。

追補>最近乗っているMT車は坂道発進のアシストの為かブレーキが2秒程度延長されます。
   このブレーキが負荷となってエンストする場合があります。
   止めるか外せるようにして欲しいと思います。


太陽光パネル

 原発事故以来、原子力発電が危険視され多くの発電所が停止しています。
 今まで原子力発電に依存していた電力を他の発電方法に切り替える必要があります。
 多くは火力発電に切り替わっているようです。
 火力発電は新たに建設されたものもあるかもしれませんが停止していた古い発電所を復活させたケースもあるようです。
 原子力発電が危険だと言う人はいても火力発電が危険だという人は、あまりいません。
 身近にあっても直接的な危険を認識出来ない為です。
 最近、水害事故で多くの被害が出ていますが化石燃料を使用する火力発電は近年の異常気象の原因原因の一つになっているかも しれません。
 そこでエコな発電方法として太陽光発電や風力発電が注目されていますが、これらは主力にはなり得ません。
 まず、発電量が天候に左右されるという事があります。
 太陽光発電は夜間には発電しません。
 原子力発電、火力発電、水力発電は需要に応じて出力を調整する事が可能ですが太陽光発電や風力発電では出来ません。
 出来るとすれば発電した電力の一部を捨ててしまうことだけです。
 また、現在、発電した電力を大規模に保存する方法がありません。
 各家庭レベルでは蓄電池に保存して夜間に使用する方法が採れるのですが殆どの家庭では売電しています。
 蓄電設備にコストが掛かる事と身銭が欲しい為と思われます。
 送電線は送電電流に対して大きな余裕を持っていません。
 太い電線を使えば電柱も丈夫に作らなければならず、送電設備のコストが上がります。
 これは電気料金に反映されます。
 沢山の太陽光パネルが送電線に電力を垂れ流せば晴天の日に送電線の容量を超える危険性があります。
 こうなると事故を防ぐ為、経路は遮断され大規模停電が発生します。
 逆に太陽光パネルのピーク電流に送電設備を逢わせれば、かなり大袈裟なものになります。
 結局、送電設備の余力の程度しか太陽光発電を利用出来ない事になります。
 太陽光パネルで火力発電と同じ電力を発生するには100倍の敷地面積が必要になるそうです。
 原子力発電と比較すると600倍の面積が必要になります。
 各家庭が自分の屋根に設置するならよいのですが大規模の売電設備では問題になります。
 森林を大規模に伐採して設置した写真を見ると悲しくなります。
 太陽光発電は燃料が不用である為、エコだと言われていますがパネルを製作するには大きなエネルギーが必要です。
 太陽電池は半導体としては寿命が短く10年位で出力が低下し始め20年位で交換が必要となります。
 古いパネルを廃棄処理するにもエネルギーが必要となります。
 大規模な太陽光パネルを設置している業者は環境問題を考えている訳では無く利益を考えて行動しているので使用済みのパネルが 正しく処理されるか心配ではあります。
 河川の近くに大規模な太陽光パネルを設置し、日当たりが悪くなるという理由で堤防の土砂を削った結果、堤防が決壊した という事故も発生しています。
 エコで環境に優しいはずの太陽光発電が環境を破壊しているという例は多々あるようです。
 風力発電も似たような問題を抱えていると思います。
 太陽光、風力以外の再生可能エネルギーですが「水力}は現状、ある程度利用されていて、これ以上の規模拡大が計れるかは 不明です。
 環境面に影響が無い訳では無く、しっかりした設備が必要になりますが太陽光発電のように金儲けの業者が簡単には参加出来ない 安心感はあります。
 地熱発電は地理的に日本に向いた発電方法ですが場所が限定され、総発電量は稼げないと思います。
 バイオマスも未だ研究段階で今の所、戦力にはなりません。
 いろいろ考えても、現在、即戦力として火力発電所の代わりになるのは原子力しかないと考えています。
 福島で事故が起こったのは原子力発電所としての完成度が低い為であり原子力で発電する事自体が問題ではないと思います。
 完成度の低いまま、多数の原子力発電所が作られ多くの発電所は停止中です。
 原子力発電というと再稼働とか廃炉とかの話題が中心で新しい発電所の建設はタブーとなっています。
 ただ、こうしている間にもエネルギー環境は、ますます悪化し、異常気象で多くの人が亡くなっています。
 原子力はウラン以外の元素も利用できるようです。
 ごま書房新社で金子和夫氏が(「原発」、もうひとつの選択)という書籍を出版されています。
 詳しくは書籍を読んで頂ければ良いのですが、氏はウランでは無く、トリウムを使った原子炉を提唱しています。
 トリウムはウランとは異なり
 ・副産物「プルトニウム」の生成が極微量
 ・燃料が液体なので炉心融解の事故が無い
 ・使用済み燃料の処理が可能
 等のメリットがあるようです。
 現在、原子力としてウランが使われているのは水爆の材料となるプルトニウムを精製する軍事目的の副産物と言われて います。
 プルトニウムが不用ならウランでなくても良いわけです。
 原子力は政治の道具として語られ、積極的な研究や利用はタブー視されていますが今後のエネルギー源として 人類全体で目を向けていく必要があると思います。

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