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富貴蘭の芸
ここでは富貴蘭の芸を紹介します。
内容の多くは富貴蘭以外にも当てはまります。
赤花、八重咲き等の花変わりも選別されていますが、ここでは省略します。
花変わりの何点かはギャラリーで紹介していますので参考にしてください。
専門用語の一部は、別のセクションで解説していますので参考にしてください。
富貴蘭各部の名称
富貴蘭各部の名称は ここ をクリックしてください。
葉姿による分類
付けによる分類
軸による分類
根先による分類
富貴蘭の根は灰白色ですが、成長期の先端の5mm〜10mm位が色付きます。
新根は空中に伸びるので観察可能であり、この根先の色を鑑賞の対象にします。
これは、他の植物では、あまり、例を見ません。
また、根先の色は品種区別の決め手にもなります。
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ルビー根 |
根の色の秘密
フウランは緑色の色素(葉緑素)を必ず保っています。
多くの個体は紅色の色素も持っています。
緑色と紅色が混じると褐色になり、これが軸の部分に出て、泥軸となります。
紅色の色素の無い個体は青軸になります。
根先も、大雑把に言えば、紅色の色素があれば泥根、無ければ青根になります。
ただし、成長点に近い部分(天葉や根先)と時間を経た部分(軸)では各々の色素の含有率が異なると想像します。
根の方は時間が経てば、白くコーティングされてしまうので、表面から色素は見えにくくなります。
泥軸で青根の品種は成長とともに紅色の色素の比率が高くなるので、根先は青で、軸は泥になると思います。
逆に成長とともに葉緑素の比率が高くなる場合、最初は紅色の色素のみが目立つので、綺麗なルビー根になります。
葉の方も天葉に葉緑素の少ない状態(曙斑)になる場合が多いです。
このとき、富貴蘭の天葉では紅色は、あまり目立ちませんが(せいぜい薄いピンク程度)、長生蘭や深山麦蘭では
天葉に紅が強く出る品種があります。
青軸で、成長とともに葉緑素の比率が多くなる品種では、最初は紅色の色素も緑色の色素も無いので、白根となります。
青軸、泥軸に限らず、植物体に黄色の色素を多く含む品種では、根先が黄色になる場合があります。
多くの場合、曙斑は天葉に連動して根先も葉緑素が少ないので、ルビー根(泥軸)や白根(青軸)になります。
中には、無地葉でルビーを出す品種もあります。
これは極端に早く暗んでしまう曙斑か、根だけ葉緑素の生成が阻害されるのか、いろいろ考えられると思います。
派手な散り斑も葉に葉緑素の少ない状態が根先に現れ、泥軸の場合、綺麗なピンクや澄んだ赤根を出す場合があります。
青軸では白根になる場合があります。
一般的な棒縞では、軸の根の出た部分に斑があれば、ルビー根(泥軸)や白根(青軸)になります。
斑の無い部分から根が出た場合、泥根(泥軸)や青根(青軸)になります。
主脈に紺のしっかり入った覆輪では、綺麗な根は殆ど出ません。
ただし、後冴えの品種では明るい根が出る場合があります。
中斑や紺覆輪では出芽の時、斑の部分が派手だったりすれば、綺麗な根を出す事があります。
ルビー根と言っても安定してルビー根を出す品種と不安定な品種があるので、注意が必要です。
無地葉変わり
斑入り
ここでは多くの斑を黄色で表現しましたが、斑の色は白でも黄色でも構いません。
ただし、峰斑は雪山を連想させるので一般的には白色限定です。
また、紅隈や紺覆輪のように色が指定される場合もあります。
尚、紺覆輪は濃い緑の覆輪の意味ですが、実際には覆輪の部分が地の色です。
本来は浅黄や浅緑の中透けです。
同様に紺縞も殆どの場合、実際には浅黄や浅緑の縞です。
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紅隈 | 幽霊 |
斑の色と葉の色の表現
雪白(せっぱく) |
白さを強調したもの、純白 |
黄白(きはく) |
白っぽい黄色 |
極黄(ごくき) |
色濃く、鮮やかな黄色 |
浅黄(あさき、あさぎ) |
うすい黄色、やや濁った黄色 |
浅葱(あさぎ) |
ネギの色の薄いもの、青白い緑 |
浅緑(あさみどり) |
うすい緑、白みがかった緑 |
萌黄(もえぎ) |
新緑の色、緑に黄白色が混じる、黄緑 |
萌葱(もえぎ) |
ネギの芽の色、青みがかった緑 |
青(あお) |
緑色全体を指す、若いという意味も |
紺(こん) |
緑色全体を指す |
濃紺(のうこん) |
濃い緑色、黒みがかった緑色 |
植物の種類と特徴的な斑
富貴蘭は縞(棒縞)の品種が多く、他の蘭に比べ安定性は良いほうです。
春蘭や寒蘭では棒縞の安定性が悪く、品種は数少なくなります。
春蘭や寒蘭で縞と言えば、一般的には紺覆輪の紺が縞状に蹴込んだ中押し縞や覆輪斑が蹴込んだ覆輪縞を指します。
蘭は葉が三層構造になっていると言われています。
富貴蘭の葉は外周の層の面積が極端に狭い為、中透けでは生存出来ず、品種も真鶴くらいしか見あたりません。
ただし、斑の部分が葉緑素を含んでいれば、生存出来、紺覆輪と呼ばれる品種が少数あります。
春蘭やネジバナ、長生蘭、錦蘭等では外周の層に面積のある個体が存在するので、中透け品種が比較的、多く存在します。
尚、富貴蘭の西出都等の斑は覆輪ではなく、三光中斑と言われています。
外周の紺の面積が極端に狭い為、覆輪に見えるとのことです。
西出都、玉錦、銀世界を栽培していると、かなりの確率で中透けの真鶴が生まれます。
本来なら、覆輪から中透けが出るのは不思議です。
西出都が三光中斑ということであれば納得する話です。
逆に外周が斑になった雅天楽は時々、葉縁に白斑が見える程度ですが、覆輪だといわれています。
富貴殿のようなハッキリとした覆輪は外周とその内側の層が斑になっていて、紺は中心の層、一層だけだそうです。
(大覆輪)
双子葉植物の草本や樹木にも覆輪や中斑は存在します。
ただし、単子葉植物のように端正でキッチリと決まった物は少なく、その分、変化に富んでいます。
双子葉植物では葉の構造上、縞斑が存在しません。
切り斑や刷毛込み斑が単子葉植物の縞斑に相当するのではないかと想像します。
これらの斑も棒縞と同様に安定性が悪いものです。
虎斑や散り斑は植物の種類を問わず、出現するようです。
また、蛇皮斑のように春蘭では数多くの個体が選別されているのに他の植物では殆ど見つからない斑もあります。
斑は覆輪に向かう?
富貴蘭の縞は他の蘭に比べたら安定していますが、長期間の栽培では、やはり変化します。
最上柄の個体を購入しても、その状態を長期間維持するのは困難です。
最終的には派手になりすぎたり、斑が抜けてしまったりすることも多いです。
ただ、その間に何本かの子を出し、その中には柄の良い子が出たりしますので、保存する個体を切り替えたりします。
変化の途中で、覆輪や中斑に変化する個体もあります。
変化途中の覆輪は不安定ですが、完全に固定すれば、芸としては安定し、鑑賞価値も上がります。
一方、中斑の場合、芸としては安定するのですが、多くの場合、中心1層の細い中斑で、見栄えがせず、評価も下がります。
富貴蘭の中透けの場合、紺地の面積が小さいので、殆ど生存出来ません。
棒縞から覆輪や中斑に変化する確率は大きくはないですが、縞の品種を沢山作っていれば、1〜2鉢は
観察する事が出来ます。
一方、散り斑系の品種は紺が中央に集まり易く、覆輪に変化する傾向があるような気がします。
織姫
青軸富嶽
写真の織姫も青軸富岳も地味な縞でしたが、徐々に柄が良くなり、紺が中央に集まってきました。
特に富岳系統の場合、一般的にこの傾向があるような気がします。
ただし、100%覆輪になるの訳ではなく、中には斑が徐々に明るくなり、幽霊になって枯れてしまう個体もあります。
逆に地味になって、限りなく青に近くなる個体もあります。
そのまま、散り斑を継続するものもあります。
それでも、棒縞に比べたら覆輪に変化する確率は高いような気がします。
尚、覆輪になった後の安定度に関しては、まだ私のデータが十分ではありません。
後冴えと後暗み
後冴え
「静岡産黄縞」
天葉は青で出る。
後暗み
「天祥」
天葉から2〜3枚に斑が残る。
斑の時間的な変化を示す言葉に「天冴え」「後冴え」「後暗み」があります。
この場合の変化とは斑の明るさが新葉の展開から、毎年、同じパターンで変化することを意味しています。
年月とともに柄が良くなったり悪くなったりする変化とは別のものです。
評価としては、最初から斑が明確に現れ(天冴え)、暗まないものが高いです。
天冴えと言われている品種でも、出芽時に多少、葉緑素を含んだ後冴え気味の品種は多くあります。
後冴えの遅いものでは、天葉から5〜6枚目になって、やっと斑が冴えてくる品種もあります。
やっと、斑が出てきたと思ったら、すぐ落葉してしまうものもあります。
黄散り斑、乗り斑、虎斑の品種では、斑であるのか落葉直前で葉が黄色くなっているのか、よく見ないと分からない
ような品種もあります。
後暗みの品種は富貴蘭に限らず、評価は低くなります。
落葉樹や山野草では、葉のある時期が半年余りですので、後暗みの品種は2ヶ月程度で斑が消えてしまいます。
ただし、後暗みであるために生存が可能な個体も結構あります。
途中で、葉緑素が増えるので、成長ができるのです。
富貴蘭や春蘭では葉の寿命が4〜5年あるので、出芽から1〜2年は派手な状態でも、古葉の働きで生育出来ます。
富貴蘭では天葉から2〜3枚、春蘭では新子から1〜2年は斑を楽しめます。
つまり、常に斑と古葉のコントラスト、季節による斑の変化が楽しめます。
また、後暗みの品種は丈夫で、栽培し易いのも利点です。
この為、一般的に安く入手出来ます。
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