害虫対策に関しては別のページ「栽培のヒント」で簡単に述べていますが、補足したい点もあり再度、纏めてみました。
害虫にも色々種類があるとは思いますが、ここでは私が被害に遭った物に限定します。
私の思いこみの可能性もあり、完全に解決したと断言できる内容ではありませんが、多少でも参考になれば幸いです。
ある年、寒蘭の蕾が殆ど腐ってしまいました。
その年、野生蘭で葉の柔らかな種類の多くで葉が傷みました。
ただし、風蘭は殆ど被害が無かったように記憶しています。
私は何かの病気と判断し、殺菌剤の撒布を行いました。
ベンレート水和剤、ダイセン水和剤、銅系統(オキシボルドー又はサンボルドー)を間隔を置いて交互に散布しました。
ところが翌年も寒蘭の蕾が腐りました。
当時、蘭を購入していた専門店の主人に、この事を話したところ、アザミウマ(スリップス)だと指摘されました。
それ以来、殺虫剤を定期的に散布するようになりました。
薬剤はオルトラン水和剤、スミソン乳剤、アクテリック乳剤を交互に散布しています。
回数は各々、年2回程度です。
1種類では害虫に抵抗性を持たせるので3種類を組み合わせていますが、組み合わせ方は私の独断と偏見によるものです。
農薬の専門書を購入されることを薦めます。
原因と対処方法がピッタリ合ったと断言はしませんが、それ以来、寒蘭の蕾が腐るような事はなくなりました。
病気だと思っていたものが害虫の被害と判ったので、それまで定期的に散布していた殺菌剤は使わなくなりました。
ただし、ベンレートとボルドーは用意はしています。
カイガラムシには非常に多くの種類があるようですが、蘭に付くのは1〜2mmの魚の鱗のような種類です。
幼虫の時は動き回りますが、寄生する場所が決まると殻を被って動かなくなります。
春蘭、寒蘭、風蘭等、固めの葉が好きなようです。
発見されるのは寄生されてからですが、沢山の個体がビッシリ付くので厄介です。
専用の薬剤もあるようですが、発生してからでは駆除が大変です。
歯ブラシ等で擦り落としますが、襟組に入り込んで、なかなか取れないものもあります。
発生したら時遅く、その後の生育は落ちます。
風蘭の芯に入り込まれて芯止まりになった経験もあります。
下の写真はビッシリ付着したカイガラを取り除いた寒蘭ですが、寄生された跡が汚れて鑑賞価値を下げました。
汚れは落葉まで消えませんし新芽も出なくなりました。
カイガラムシ付着跡
発見してからではダメージが残りますので付着する前に駆除する必要があります。
上記「アザミウマ」の項で紹介した3種の殺虫剤を定期的に散布するようになってから発生しなくなりました。
外から持ち込んだ鉢に注意
その後、しばらく良かったのですが、ある時、温室の一角で発生しているのを見つけました。
新規に購入して棚に加えた寒蘭が発生源で、周囲の鉢に伝染していました。
新規に持ち込んだ鉢は消毒して隔離し、ある程度の期間、様子をみてから棚に加える必要を感じました。
私はこの虫の名前を知りません、一般的な害虫では無いようで調べても名前が判りません。
長さ3mm程度の白い蛆虫が水苔の葉の部分を食害して芯だけが残ります。
水苔を食べるだけでなく風蘭の根も囓ります。
この虫の親が何かと観察していたのですが、食害された鉢のに小型の蚊(又は蝿)のような虫が止まっているのに気付き、
これが親であると思いました。
殺虫剤を散布すると一時的に居なくなりますが、すぐに発生します。
ある日、ある園芸店でムシトリスミレが例の蚊のような虫を捕らえているのを発見しました。
その時、温室に置いて害虫退治をすることを思いつきました。
早速、購入して試したところ予想以上の成果をあげました。
私は富貴蘭を秋に植え替えていますが、翌年の秋まで保たず、春に再度、植え替える鉢が30鉢〜40鉢くらいありました。
これは全体の1割に相当します。
ところが今年は春に植え替えた鉢は0です。
たまたまという事もありますので引き続き様子を見る必要はありますが、大量に捕虫し、例の虫が極端に少なくなったのは
事実です。
下の写真は温室内の設置状況と捕虫の様子です。
温室内のムシトリスミレ
捕虫の様子(長葉種)
捕虫の様子(丸葉種)
ムシトリスミレに関して
ムシトリスミレにも種類があります。
国産の高山性のものは希少種ですが栽培が困難で流通もしていません。
私が購入したのは外国産で,
現在、最も一般的に流通しているものだと思います。
長葉のものと丸葉のもの2種類ですが、いずれも1鉢500円程度で入手出来ると思います。
性能は、やや長葉の方が良いような気がします。
暑さや寒さに強く、1年中の腰水栽培で生長、増殖します。
不定期にスミレに似た美花を咲かせ、鑑賞価値もあります。
栽培の注意点はただ一つ、絶対に乾かさないことです。
その後、多少の乾燥には耐える事が判りました。
補足
水を多目に与えた方が葉が大きく生長するので腰水で育てていましたが寒い冬の年に葉を傷めた事がありました。
枯れる事はなく春には回復しましたが、それ以来、腰水は止めています。
水を辛目にした方が耐寒性が増すことが判りました。
屋外の軒下あたりで十分、冬を越します。(静岡県中部、平野部)
ただし、葉は小さくなります。
異論あり
あるサイトで、この虫は水苔を食べず、水苔を食べる蛾の幼虫に卵を産み付ける寄生蜂という記述がありました。
これが事実なら私は天敵を退治してしまったことになり、水苔は益々食害されるはずです。
購入した乾燥水苔の中に、もっと大きな(10〜20mm)の黒褐色の蛆虫の死骸が入っていることがあります。
これが水苔を食べ、蛾に生長するというのは、あり得る話です。
ただし、私は栽培している鉢で、大きな蛆虫をみたことがありません。
蛾は稀に見ることがありますが、一度に複数の個体を見ることはありません。
寄生の対象となる虫がいないのに寄生蜂が、こんなに多数、ムシトリスミレに捕獲されるのは変です。
事実は小型の蚊(又は蝿)のような虫がいなくなったら水苔の食害が無くなったということです。
この虫の幼虫も蛾の幼虫も水苔を食べるが、両者に関係は無いというのが私の考えです。
寄生蜂であれば幼虫は水苔ではなく蛾の幼虫の体内で成長するはずです。
アフリカナガバノモウセンゴケ
捕虫の様子
その後、モウセンゴケも有効であることが確認出来ました。
モウセンゴケは多くの種類がありますが大型で栽培容易なアフリカナガバノモウセンゴケが適しています。
どんな被害があるか
私が最も被害を受ける害虫はナメクジです。
基本的には何でも食べますが、柔らかいものが好きです。
被害に遭ったカラタチバナ
ただし、食害の現場を見ていないので、バッタ等、ほかの害虫の可能性もあります。
しかしながら、温室内でバッタを見るのは稀です。
それに比べ、ナメクジは薬剤を撒けば大量に死骸が見つかるので、一番、可能性が高いです。
以降、ナメクジと断定して話を進めます。
ナメクジが特に好きなのがセッコクの新芽で、伸び始めに食べ尽くされると1年を棒にふります。
フウランの根先も好きです。
当然ながら、根は止まり、生長は遅れます。
フウランの葉は固いのですが稀に食害されます。
被害に遭ったフウランの葉
昨年は黄花セッコクの新芽が壊滅的にやられました。
枯れはしませんが回復するには数年かかります。
ミヤマムギランも多数の被害を受けました。
食害されたミヤマムギラン
イワオモダカの新葉も殆ど食べられました。
その他、春蘭、ナギ蘭等の斑の入った葉が多数、傷みましたが、ナメクジが歩いたのではないかと疑っています。
ナメクジの害?
長い年月の中でナメクジの食害で絶やしてしまった植物は多数あります。
ナメクジの駆除
ナメクジは一般の農薬を散布しても駆除出来ません。
ナメクジは地面に置いた鉢の底とかに日中は隠れています。
隠れている場所は予測出来ますので、見つけて捕殺します。
ビールを容器に入れておくと溺れて死ぬという話があります。
試してみると、確かに捕れます。
ただし、以外にセッティングが面倒で、下手をすると飲み逃げされます。
市販のナメクジ専門薬で十分捕れますので、こちらを薦めます。
ただ、灌水で駄目になってしまうので、直接、水が掛からず、自由に出入りできる容器にいれて置くと良いという話が
紹介されていました。
多少湿った方が誘引する力が強いような気もしますので、いろいろ試してみる必要はあります。
特製ナメクジ薬
写真は貰い物の特製のナメクジ薬で米糠に農薬のランネードを少量混ぜてあります。
ナメクジだけでなく、ダンゴムシ、ゴキブリ等も駆除できます。
無臭、無味で動物に被害が出る恐れがあるようです。
効果は抜群ですが、ランネードは毒性が強く、事故でも起こされると大変ですので市販の薬を薦めます。
ナメクジを寄せ付けない
ナメクジを駆除する方法を述べましたが、棚にナメクジを近寄せない工夫も必要です。
まず棚下を清潔にしてナメクジの隠れる場所を減らすことが大事です。
近くに雑草が茂っていたりするとナメクジだけでなく、いろいろな虫が集まってきます。
ナメクジは銅を嫌うか
最初、ナメクジは金属全般を嫌うと思っていました。
鉄製の鉢掛けを使えば大丈夫と思っていたのですが、程なく被害に遭い、金属でも銅でなければ駄目だと言う意見
を聞きました。
そこで、棚の足に銅板を巻いてみたのですが、やはり被害に遭いました。
実は、ナメクジが銅を嫌うかどうかは、実験をして結果を報告した人がいました。
結果は10円銅貨の上を平気で通過したそうです。
これとは別に、ある農業研究者の実験の結果を見ることが出来ました。
それによると
・ 銅テープは小さなナメクジを通さないが、大きなナメクジは通る。
・ 銅の針金をコイル状に巻いたものは大きいナメクジを通さないが、小さいナメクジは通る。
以上を踏まえ、棚の対策を強化しました。
ナメクジ対策
昔の蘭の写真集に栽培家の蘭小屋の写真がありました。
小屋の中に池があって、そこから足を立ち上げ、蘭の棚を支えていました。
これではナメクジ、その他、羽の無い虫は絶対に近寄れません。
しかしながら、一般人には無理な話です。
とにかく、棚にナメクジを上げないようにします。
以前は棚の足が直接地面に置かれていましたが、重さで足が地面に潜り、棚の横棒が地面敷いた人工芝に接していたので
ナメクジが上がり易くなっていました。
そこで陶板を購入して足に敷き、沈まないようにしました。
次に銅テープと銅のコイルを取り付けました。
ナメクジ対策
さらに、中、上段へ上がるには、もう一つの関門を通らなければなりません。
銅とアルミのテープに電解質(ナメクジ)が接すると電圧が発生するはずです。
ただし、電圧は微弱ですので、次の対策では電池で平行電極に電圧を掛けることも考えています。
以上の対策は私の単なる思いつきですので、今後、結果が出るかは未定です。
ひょっとしてナメクジ以外の害虫が関係しているかもしれません。
とにかく、いろいろ試してみるべきです。
屋外の棚ではバラ科やアブラナ科の植物にアブラムシが付きますが、温室内では蘭の花に付くことがあります。
定期的に薬剤を散布していれば問題ありません。
鉢底に小型の蟻が巣を作ったことがあります。
素焼きの鉢の底の水苔に巣を作るコンパクトな集団です。
この蟻は換気扇コントローラの筐体の中に巣を作ったこともありました。
何を餌にしているかは判りませんが、大発生する訳ではないので、あまり問題は無いと思います。
時々、富貴蘭の葉でダニが動いているのを見ることがありますが、被害があるかは不明です。
害虫対策のタイトルでしたが病気についても簡単に記してみます。
富貴蘭では株全体が萎縮して枯れてしまう恐ろしい病気を経験していますが本当に病気かどうかも判りませんし、対処方法も
判りません。
ただし、20年以上の栽培歴で数回、経験しただけです。
これ以外、殆ど病気らしい病気を経験していません。
従って富貴蘭に対しては殺菌剤は殆ど使用した事がありませんでした。
病害は虫害以上に薬剤の選定が難しいこともあります。
それでも、最初の頃は鉢数が少なかったので植え替えの時、ボルドー液に数分間、浸していました。
これも、鉢数が増えるにつれて実施が困難になり止めてしまいました。
富貴蘭以外では時々、病害が発生しています。
葉の柔らかい野生蘭とか春蘭、寒蘭、ナギラン等のシンビジューム属は病斑が出やすく、新芽も腐りやすいです。
ナギランの病班
上の写真はナギランの斑の部分に出た病班で寒蘭にも出ます。
新葉が、有る程度固まってから出て、拡がらないので、それ程怖くはないですが、美観を損ねます。
ナギランで怖いのは新芽が腐る病気で新芽がすっぽ抜けます。
写真で左側に赤褐色の新芽が見えますが、さらに生長して斑が確認出来る頃が危険です。
斑の部分に寝小便の地図のようなシミが出ます。
この時点で殺菌剤を散布しても手遅れです。
新芽は腐ってすっぽ抜けるので、早めに除去し、消毒して次ぎの芽当たりを待ちます。
予防の為に早めに殺菌剤を散布しておくと効果があるような気がします。
殺菌剤に何を使うか悩むところですが、習慣で銅系(ボルドー)を使ってしまいます。
ボルドーは殆どの薬剤と混用できないとか葉が青白く汚れる等の欠点もあります。
殺菌剤に関しては各自、研究して頂きたいと思います。
他にはベンレートも常備はしています。
これ以外は、その都度購入することにしています。
あまり、沢山用意しておくと期限切れが発生します。
今まで各種の殺虫剤、殺菌剤を使用しましたが、薬害を経験したことはありませんでした。
今回、始めて経験しました。
被害は何と、捕虫の為に用意したムシトリスミレに発生しました。
葉が無惨にただれてしまいました。
薬剤は殺菌剤のサンボルドーです。
ムシトリスミレは常に葉が湿っています。
多分、消化のために酸性の液を分泌しているのでは無いかと推測します。
これも推測ですが酸性の液と銅イオンが反応したのではないでしょうか。
幸い、新しい葉が伸びてきたので2ヶ月もすれば元にもどると思います。
ムシトリスミレは特殊な例だと思います。
殆どの場合、薬剤は規定濃度を守れば大丈夫だと思います。