回路図は50Ωの負荷抵抗に設定値以上の電圧が掛からないようにするものです。
この回路定数で、4.2V以上の電圧が加わった時、出力電圧が0になります。
入力電圧は無制限に高くは出来ず、素子の耐圧や許容損失の制限を受けます。
この回路では実験により、4.2V〜30Vの範囲で遮断を確認しています。
4.2Vの閾値は定電圧ダイオードに依存しますが、定電圧ダイオードはバラツキが大きく、正確な遮断電圧を決定する
のは困難ですので、精密さを必要としない用途に使用します。
回路の定電圧ダイオードはRD5.1Eですが、立ち上がりが甘く、もう少し低い電圧から電流が流れ始めます。
その際、トランジスタのHFEや、4.7KΩと5.6KΩの値によっても、閾値は若干、影響を受けます。
この回路の負荷電流は50mA〜80mA程度ですが、もっと電流を流したいときは、さらにチャンネル抵抗の低いFET
を使用します。
パラに接続してチャンネル抵抗を下げるという方法もあります。
低電圧側ではFETのゲートON電圧の影響を受けます。
2SJ377はゲートに−2V掛けなければONしません。
今回の実験データを下に示します。
この回路ではMOS FETのゲート耐圧以上の電圧を印加することが出来ません。
一般的に、ゲート耐圧は20V〜30Vのものが多いです。
上の回路は過電圧保護と逆接続保護を兼用した真空管ラジオの電源部です。
ヒーター電圧もプレート電圧も6.3Vで動作する6GM8という特殊な真空管を使用したラジオを製作しました。
1.5V電池4本を電源としますが、電池の消耗が早いので外部電源を接続出来るようにしました。
外部電源で定格外の電圧を出力したときの保護の為に入れてあります。
ラジオは6Vの時、実測で320mAの電流を消費し、99%以上がヒーターで消費されます。
回路は7.5V以上で遮断されます。(20Vまで)
7.5Vは6.3Vの1.25倍以内ですので、ヒーターを保護することが出来ます。
回路図でFDS4935AはPCHMOSが2素子入った8ピンのICで、ピン名称のSはソースGはゲートDはドレインを
示します。
S2、G2、D2で逆接続保護、S1、G1、D1で過電圧保護をしています。
6V320mAの時の電圧ロスは30mVでした。
1Aの基板用ヒューズの電圧降下は50mVでした。
尚、ラジオの回路全体の紹介は「電子回路」>「その他の製作:単球レフレックスラジオ」の頁にあります。
前出の回路では電圧基準に定電圧ダイオードを使いました。
定電圧ダイオードは切れが 悪く、2V程度から、わずかに電流が流れ始めます。
つまり、流れる電流によって電圧が変化してしまいます。
また定電圧ダイオードもトランジスタも温度特性があります。
遮断電圧を計算で求めるのは困難で、カットアンドトライとなってしまいます。
今回は基準電圧を温度特性のの良い基準電圧ICにし、差動回路でトランジスタのVBE温度特性を打ち消しています。
この基準電圧ダイオードは20uAあれば動作します。
尚、回路中の定電圧ダイオードRD5.1Eは保護用で、過電圧が10V以上になったとき、回路図のQ3のエミッタ→ベース→
Q2のコレクタ→エミッタ→Q1のエミッタ→ベース→LM385という短絡経路が発生します。
Q1のベースエミッタ接合は9V程度の逆電圧でブレークダウンしてしまいます。
この状態を避ける為に入れてあります。
過電圧の最大値が5V程度であれば省くことが出来ます。
通過電圧を1.3V〜2V程度と想定しましたが、この範囲ではRD5.1Eには電流は流れず、回路に影響は与えません。
低電圧で動作できる素子は種類が限られます。
一般的に入手出来る基準電圧ICは1.2Vが最低電圧ですので、遮断電圧はこれ以上となります。
これ位の電圧でON出来、尚かつ内部抵抗の低いP−MOSを探したところ秋月で販売しているチップFETが目に留まったので
購入しました。
チャンネル抵抗が0.1Ω以下で4A流せるものです。
その代わりにゲート耐圧が±8V、ドレイン耐圧が20Vと低いものです。
遮断電圧は8V以下、過電圧は20V以下にしなければなりません。
今回は遮断電圧を1.5Vとしてみました。
10回転の可変抵抗で1.35〜2V程度まで可変可能です。
負荷電流による電圧降下でON→OFF、OFF→ONにはヒステリシスが若干あるので設定には0.1V程度の余裕を見た
ほうが良いと思います。
負荷抵抗として5Ωの抵抗を接続したので1.5Vの時300mA近い電流が流れます。
下表は入出力特性のデータです。
入力電流は回路の消費電流を含んでいますが、通過領域の消費電流は1mA以下です。
過電圧で出力が遮断されると徐々に消費電流が増え、19Vでは消費電流が25mAまで増加しますが負荷電流は
0のままです。
通過領域では40mV程度の電圧降下がありますが、負荷電流が少なければもっと小さくなります。
実は上記の実験は電池管のヒーター電圧の保護を考えています。
完成後は電池を使えば問題無いのですが調整時はCVCC電源でヒーター電圧を0.8V〜1.5Vに可変して動作を
確認します。
怖いのは電圧の設定ミスです。
電圧設定VRを回しすぎて電圧を上げすぎヒーターにストレスを与える可能性があります。
上記の実験を踏まえ、実際に使用した回路と動作結果を下に示します。
尚、詳しい説明が別の頁「電子回路やソフトウエア 真空管ラジオ → 電池管ラジオB電源U」あります。
回路図をクリックすると拡大表示されます。
拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。
実験回路は実用的に不十分です。
1V以下では電圧降下が大きすぎて使えません。
そこで考えたのが上の回路です。
装置外観 | 装置内部 |
私は製作製作した機器の動作を確認するとき先ず実験用のCVCC電源に接続します。
古い機種ですが菊水のPAB18V−1.8Aです。
電流を絞れるので安全ですが電圧も自由に設定できます。
5Vの基板を調整しようとして電圧を設定するのですが電流を調整しようとして電圧調整VRを回してしまうことが
あります。
そこで5V以上が入力されたとき出力を遮断する装置をCVCC電源と被調整機器の間に入れています。
回路図をクリックすると拡大表示されます。
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回路は5V専用ですが遮断電圧は多回転トリマで微調整できます。
電流はCVCC電源の設定値に依存しますが上記の菊水電源の最大電流は余裕で流せます。
この装置の通過電圧を5Vに設定し、負荷に4Ω10Wの抵抗を接続したときの電圧ロスは約0.1Vでした。
私の用途では十分ですが、さらに電圧降下を下げるにはFETの選択、パラ接続で対応出来ます。
通常の使用ではFETの発熱は全くありませんが短時間の負荷短絡に耐えるように軽く放熱してあります。
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