前回、「電池4本から±5Vを作る」で+側と−側の電流合計が、最大で70mA程度の電源を作りました。
その際、扱う電力の割にコアが大きく感じたので、一回り小さいコアで再試してみました。
今回は簡単に、+5V出力のみとしましたが、電流値は少し増やして100mAにしてみました。
負側の巻き線を追加すれば、+側と−側の電流合計が100mA程度の電源は出来るはずです。
使用電圧範囲
最低電圧はニッケル水素電池の放電終了電圧1V×4=4Vとします。
最高電圧は充電直後の1.4V×4=5.6Vとします。
定格電圧は1.2V×4=4.8Vとします。
ニッケル水素電池は動作中、ほぼ1.2Vを維持し、これ以下になると急速に電圧が下がり、放電終了となります。
定格負荷電流
100mAとします。
効率
4V〜5.6Vで70%以上とします。
前回、±5V電源で使用したアミドン#3材のトロイダルコアを使用します。
ただし、前回に使用したT68より一回り小さなT50を使用します。
写真で大きい方がT−68、小さい方がT−50です。
T−68の68はコアの外形寸法が68/100インチということだと思います。(多分)
重量を計ったら、T−50が2.4g、T−68が5.2gでしたので体積比は2倍以上となります。
今回、作成したトランスは以下のとおりです。
・使用コア: アミドンT−50#3
・一次巻線: 0.32mmポリウレタン線 50回
・二次巻線: 0.26mmポリウレタン線 85回
これは最終結果で、実際には、巻き数を色々変えて試しています。
回路図をクリックすると拡大表示されます。
拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。
回路は以前の±5V電源と殆ど同じです。
今回も過電流保護には0.4Aのポリスイッチを使用しています。
電流値が2倍の0.8A近くになるとトリップします。
電池の逆接続保護にPMOSFETを使っていますが、電池を逆差し出来ない構造の電池BOXであれば、省略可能です。
効率を上げる為に若干、手直しされていますが、これについては後で説明します。
ソフトウエアは以前の±5V電源用のものを流用しました。
基準電圧と検出電圧を比較してデューティーを上下しているだけですので、電源の仕様が変わっても同じものが使えます。
この例では、周波数を50KHzに固定し、デューティーを0〜50%に変化させています。(21段階)
1 ////////////////////////////////// 2 // SWREG+-5V PIC12F683 8MHz // 3 // 8BIT PWM // 4 // 2009/08/17 MikroC // 5 ////////////////////////////////// 6 7 // _FCMEM_OFF, _IESO_OFF, _BOD_ON, _CPD_OFF, _CP_OFF, 8 // _MCLEAR_OFF, _WDT_OFF, _INTRC_OSC_NOCLOCKOUT 9 10 unsigned char duty; //デューティー格納用(8ビット) 11 12 void main(void){ 13 T2CON = 0; //WDT確認用 14 OSCCON = 0x71; //8MHz 15 OPTION_REG = 0xcf; //WDT 1/128 16 ANSEL = 0x3; //アナログピンの設定 17 CMCON0 = 0x2; //コンパレータ設定 18 GPIO = 0; //出力を0に 19 TRISIO = 0xb; //GP2,4,5 を出力に 20 WDTCON = 0x3; //WDT ON 1/64 x (1/128) 21 asm CLRWDT; //WDT CLR 22 CCP1CON = 0xc; //PWM ACTIVE H 23 PR2 = 39; //周期(39+1) x 0.5u = 20uS 24 duty = 0; //デューティー0からスタート 25 CCPR1L = duty; //デューティーをセット 26 T2CON = 0x4; //T2 ON プリスケーラー無し 27 while(1){ 28 asm CLRWDT; //WDT CLR 29 if(CMCON0.COUT){ //出力電圧が高い時 30 if(duty > 0) duty--; //デューティーを下げる 31 } 32 else { //出力電圧が低い時 33 if(duty < 20) duty++; //デューティーを上げる 34 } 35 CCPR1L = duty; //デューティーをセット 36 Delay_us(40); //40uS待つ 37 if(!GPIO.F3)break; //遮断信号で終了 38 } 39 GPIO = 0; //一応出力を全部落として 40 T2CON = 0; 41 WDTCON = 0; 42 asm SLEEP; //スリープ 43 } 44
回路もソフトも以前作った「±5V電源」で動作を確認済みですでので、問題なく動作しました。
ただし、最初に定めた効率より低くなってしまいました。
定格入力電圧の4.8Vでの効率が69%で、仕様を満たしていません。
最初、巻き数は一次が40回、二次が70回でした。
巻き数を50回/85回にしたところ、入力電圧4.8Vでは効率が70%を越えました。
さらに、一次巻き線の巻き数をあげても効率は改善されず、若干、入力電流がフラつくようになりました。
通常、この手のトランスは、コアにギャップを入れて、飽和しにくくするようですが、トロイダルコアはギャップを入れられない
ので、飽和しかかっているのかもしれません。
結局、最終的に、巻き数を50回/85回としました。
ただし、入力電圧4Vでは、まだ効率70%未満です。
手っ取り早く、効率を上げる為に整流ダイオードを2本追加し、3本パラにしました。
回路図でダイオードがパラになっているのは、電流容量が足りない為ではありません。
ダイオード1本に流れる電流が減れば、VFが下がり、効率が上がります。
これで、効率が2%程度上昇し、最初決めた仕様を満たす事が出来ました。
効率の若干の低下を許せば、ダイオードは1本で十分です。
逆耐圧の高いダイオードはVFも大きくなるので、不必要に耐圧の高いものを使わないことです。
一応、仕様を満たしたので、以下に特性を示してみます。
尚、入力電圧を7.2Vまでとっていますが、新品のマンガン電池、アルカリ電池でも使えることを確認する為です。
ダミー負荷として、49.4Ω 3Wの酸化金属被膜抵抗を使用しました。
回路図で一次巻き線の電源側とグランド間に100uFのコンデンサー(C2)が入っています。
この位置に470uFのコンデンサーを追加したところ、効率が2%程度上がりました。
出力スイッチ(Q2:2SK2231)がOFFの時、内部の寄生ダイオードがONし、逆方向の電流が余った電力を
コンデンサに充電しているのではないかと推測します。
このときの特性を以下に示します。
入力電圧4.8V、負荷電流100mAの時の効率は75%を越えました。
この回路では、このくらいが精一杯かもしれません。
使用素子には余裕があるので、ほんのりと温まる部品は一つも有りません。
(負荷抵抗は温まりますが。)
最初、ニッケル水素単三電池用として考えたのですが、アルカリ電池、マンガン電池でも大丈夫でした。
(むしろ、効率が良くなっています。)
ただし、12F683の最大定格は6.5Vですので、推奨はしません。
新品のアルカリ電池、マンガン電池は1.7V位あるので、4本では6.8Vとなります。
一応、入力7.2V、負荷電流100mAで2時間ほど連続通電し、状態に変化の無い事は確認しています。
実は、データには残してありませんが、入力7.6Vでも正常に動作する事を確認しています。
精神衛生上、良くないので、30分ほどで止めましたが。...
心配であれば、12F683に過電圧対策をする事は可能ですが、もともとニッケル水素用に作ったので、
このままにします。
出力電圧が安定しているのは、微少電流で電圧安定度の良いLM385−1.2のおかげです。
電池の逆接続保護、ポリスイッチによる過電流保護を付加しているので、十分、実用に耐えると思います。
(これらが無ければ、さらに効率が3%程度、上がるのですが。)