9Vの電池から3.3Vを得る回路を作り、入出力特性を計測してみました。
電池は7素子のニッケル水素電池を主に考えています。
定格電圧は1.2V×7=8.4Vとし、最低使用電圧は1V×7=7Vとします。
7V以下で放電させると、過放電となり電池を痛めます。
マンガン電池、アルカリ電池、6素子のニッケル水素電池を使うことも考え、入力電圧範囲を6V〜10Vとします。
電池の種類が限定されれば、別途、下限電圧で放電を停止するような回路を付加すれば、完璧です。
ダミーの負荷抵抗を51Ω3Wの酸化金属被膜抵抗としました。
3.3Vの電圧が掛かると、64mA程度の電流が流れます。
9V電池の負荷としては、せいぜい、この程度だと思います。
3端子レギュレータTA48033Sを使った回路と、スイッチングレギュレータMC34063Aを使った回路の特性を
比較してみました。
TA48033Sは1A流せる低電圧降下型の3端子レギュレータです。
1A流せるというので、自身の消費電流も大きいのではないかと思い、入力電圧8.4V、負荷解放の場合の消費電流を測定した
ところ、0.7mA程度でした。
MC34063AはMC34063の改良型と思いますが、古くからあるバイポーラICで、等価回路を見ると、スイッチ素子の
電圧降下が大きいので、特に低電圧で使った場合、効率は、あまり良くないと思われます。
しかし、安価で入手性がよく、使い易いので、使われ続けられています。
世界標準のICで、各社からセカンドソースが出されています。
探せば、もっと高性能のICが有るかもしれませんが、入手性、サンプル価格の問題もあり、また、高性能ICはスイッチング
スピードが早く、ユニバーサル基板に実装しても、本来の性能が出ません。
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上段は3端子レギュレータを使用した3.3V電源です。
簡単な実験回路ですので、電池の逆接続保護回路は付けてありません。
データシートを見ても、TA48033Sが逆電圧に耐えるか記述されていません。
例えば、LM2931Zでは、はっきり、電源の逆接続に耐えると記述されています。
この場合は、記述されていないので、付けておいた方が良いでしょう。
9Vの電池スナップは継続的に逆接続される可能性は少ないのですが、瞬間的に接続される可能性は大いにあります。
下段はMC34063Aを使用した回路です。
この回路では、電池逆接続にも出力短絡でも大丈夫です。
使用インダクタは写真のように、非常に小さな物ですが、100uH、直流抵抗は0.5Ωです。
市販の100uHマイクロインダクタは、一般的に直流抵抗が数Ωありますので、効率が大きく落ちます。
MC34063Aのデータシートにはインダクタンスを求める式が載っています。
今回、これを無視し、手元にあった(これしか無かった。)ものを使いました。
勿論、トロイダルコアに線を巻いても構いませんが。
発振周波数は外付けのコンデンサーで決めるのですが、インダクタンスが適当なので、こちらも適当です。
一応、200pF、470pF、1000pFと変えてみて、1000pFとしました。
実は、1000pFの時が一番、効率が悪かったのですが、低電圧での立ち上がりが良かったです。
3端子レギュレータは全ての入力電圧範囲で、負荷電流+自身の消費電流が入力電流となります。
スイッチングレギュレータでは入力電圧が高くなるほど、入力電流が減ります。
グラフの通り、最初定めた全ての電圧範囲でMC48063の入力電流が少なくなっています。
スイッチング電源は入力電圧8.4Vの時、負荷電圧が3.3VになるようにVRで調整しました。
3端子レギュレータは電圧調整が出来ませんが、今回のサンプルは2.99Vと高精度でした。
(GND端子に下駄を履かせれば電圧を上げる事は出来ますが、特性は落ちます。)
スイッチング電源では、入力電圧5.6V以下では負荷電圧が落ち込んでいます。
しかし、最初に定めた入力電圧範囲以下ですので問題ありません。
スイッチング電源の効率は65%で、良くはありません。
あり合わせのインダクタを使ったこともありますが、最適化しても70%程度と予想します。
それでも、全ての使用電圧範囲で、3端子レギュレータの効率を上回っています。
使用電圧範囲以下の低電圧では、効率が逆転していますが、この部分は使えません。
電池の持ちは、スイッチングレギュレータの方が断然有利です。
ただし、スペース、コスト、ノイズ等、不利な要素もあるので、場合によりけりです。