前回、コアの材質を変えた場合、性能がどのように変わるか実験してみました。
巻き数の少ないフェライト#43材の性能が高ければ良かったのですが、結果は巻数の多いカーボニル鉄#3材が優れて
いました。
今回はトランスの巻数を変えると性能がどのように変わるか調べてみました。
T−50コアに100回:100回のコイルを巻くのは大変ですので、少しでも巻数を減らしたい思います。
今回も「9V電池から5Vを作る」回路を使って実験しましたが、結果は他の回路でも応用出来るはずです。
回路図は「9V電池から5Vを作る」ページを参照してください。
「9V電池から5Vを作る」電源では100:100の巻数のトランスを使いました。
この時は一発で結果が出たので、巻数を変えて試してはいません。
もし、これが最適値とすれば、これより少ない巻数と多い巻数を試さなければなりません。
しかしながら100回:100回以上巻くのは困難です。
そこで、周波数を2倍の100KHzにしてみました。
巻線のインピーダンスを同じにした場合、周波数が2倍になれば、インダクタンスは1/2で済みます。
巻数は1/√2になります。
計算上は50KHzで100回巻きは100KHzで71回で済みます。
今回は周波数を100KHzにし、巻数を60回、75回、87回の3種類で実験してみました。
ただし、周波数が上がれば、回路の過渡損失が増えるので、影響が出ないか気になります。
試したところ、100KHzでは効率は低下しませんでしたので、データをとりました。
調子に乗って200KHzまで上げると、確実に効率が低下しました。
CPUのクロックスピードを上げると消費電力が上がるのでPWMの分解能を1/2にしてスイッチングスピードを
上げました。
ただしCPUの消費電力以外の回路の過渡損失は周波数が上がれば増えます。
ソフトの内容は今まで使ったものと同じです。
本来は50KHzと100KHzで条件コンパイルすべきですが、不要な方をコメントアウトしています。
////////////////////////////////// // 汎用SW電源 PIC12F683 8MHz // // 8BIT PWM // // 2010/01/19 MikroC // ////////////////////////////////// // _FCMEM_OFF, _IESO_OFF, _BOD_ON, _CPD_OFF, _CP_OFF, // _MCLEAR_OFF, _WDT_OFF, _INTRC_OSC_NOCLOCKOUT unsigned char duty; void main(void){ T2CON = 0; //WDT確認用 OSCCON = 0x71; //8MHz OPTION_REG = 0xcf; //WDT 1/128 ANSEL = 0x3; //PIN0,PIN1 ANALOG CMCON0 = 0x2; //コンパレータ設定 GPIO = 0; //GP2 L TRISIO = 0xb; //GP2,4,5 output WDTCON = 0x3; //WDT ON 1/64 x (1/128) asm CLRWDT; //WDT CLR CCP1CON = 0xc; //PWM ACTIVE H // PR2 = 39; //(39+1) x 0.5u = 20uS[50KHz] PR2 = 19; //(19+1) x 0.5u = 10uS[100KHz] duty = 0; //デューティー0からスタート CCPR1L = duty; //デューティーをセット T2CON = 0x4; //T2 ON プリスケーラー無し while(1){ asm CLRWDT; //WDT CLR if(CMCON0.COUT){ //出力電圧が高い時 if(duty > 0) duty--; //デューティーを下げる } else { //出力電圧が低い時 // if(duty < 20) duty++; //デューティーを上げる[50KHz] if(duty < 10) duty++; //デューティーを上げる[100KHz] } CCPR1L = duty; //デューティーをセット // Delay_us(40); //40uS待つ[50KHz] Delay_us(20); //20uS待つ[100KHz] if(!GPIO.F3)break; //遮断信号で終了 } GPIO = 0; //一応出力を全部落として T2CON = 0; WDTCON = 0; asm SLEEP; //スリープ } 44
50KHz100:100のトランスを基準にして、100KHzに於ける3種類の巻き数での特性を比較しました。
60:60巻きのトランスは低電圧で入力電流が大きくなっています。
5.6V以上では僅かに大きい程度です。
75:75巻き、87:87巻きのトランスでは全域で50KHz100:100のトランスと殆ど同じ特性です。
回路的に定電圧動作をしているので当然ながら差はありません。
ただ、60:60巻きのトランスは出力電圧の立ち上がりが早くなっています。
入力電流が大きかったのは低電圧で5Vを維持する為に大きな電流値が必要だったのです。
電流読み取り値の分解能が低いことによる計測誤差で値が多少ばらついています。
60:60巻きのトランスが僅かに低いように見えますが、他のトランスでは計測誤差程度の違いしかありません。
周波数を100KHzに上げる事により、効率を落とさずに巻数を減らす事が出来ました。
巻数が、やや不足気味の時はインピーダンスが減るので電流が多目に流れますが、その分、立ち上がりが早くなります。
低電圧で立ち上がることは使い切ってしまうマンガン電池、アルカリ電池では問題無いですが、ニッケル水素電池では傷めて
しまう可能性がありますので、多目に巻いた方が安全です。
あるいは、電池電圧低下で出力を遮断する工夫が必要になります。
・巻数が少なすぎると入力電流が増え、効率が落ちる。
・巻数が多すぎると動作が不安定になり、やはり効率が落ちてくる。
・正常動作範囲内では巻数が多いほど効率は上がるが立ち上がりが徐々に悪くなる。