電池2本で簡単なPICマイコン基板の電源を供給しようと考えました。
PIC18Fマイコンの電源電圧は4.2V〜5.5Vと規定されています。
従って、昇圧コンバータを検討してみました。
電池は単3マンガン電池を使用するので、入力電圧は3Vが基準です。
しかし、新品のマンガン電池2本では最大3.5V程度の電圧が出る事が考えられます。
最低電圧は2Vとし、ニッケル水素電池でも使えるように考えました。
電流は50mA程度、供給出来るものとします。
アマチュアの目から見ると、マキシム社のICは高価で入手性が悪いというイメージがあります。
このMAX879は、一時期、たまたま秋月電子で扱っていた為、手に入れましたが、現在は扱っていないようです。
インダクタの値が22uHと、小さいので、発振周波数が高いと予想されます。
インダクタは手持ちのアミドンT50#3コアにフォルマール線を巻いて22uHに合わせ込みました。
データシートを参考にして回路を組み、入力3Vで出力を5Vに合わせ、100Ωの負荷(実測97.8Ω)を接続
したときの効率は69.8%で、それ程、高くはありませんでした。
回路図
適当に作ったインダクタが気に入らないのか、動作が不安定で、データが取れませんでした。
マキシム社のICは使用者に高度な実装技術を要求する気難しいものが結構あります。
HT7750Aは台湾のホルテックという会社のステップアップレギュレータです。
3端子のTO92型のパッケージで200mA取れるというのですが、ちょっと信用出来ません。
共立エレショップで購入したもので、10個1袋504円と非常に安いです。
外付け部品も少なく、非常に簡単な回路で、コンパクトに組めます。
インダクタは5φで高さ9mm、100uHで直流抵抗0.5Ω程度の小型のものを使ってみました。
回路図
動作に癖があるものの、再現性は良いので簡単なデータを取ってみました。
負荷には100Ω(実測97.8Ω)の抵抗を接続しています。
使用するインダクタの特性、実装の仕方により、この通りにならない場合もあると思います。
直流抵抗の多いインダクタでは効率が落ちます。
ブレッドボード等で動作させると、配線経路が長くなるので、動作が不安定になると思います。
入力電圧 | 入力電流 | 出力電圧 | 出力電流 | 効率 |
---|---|---|---|---|
3.5V | 85mA | 5.10V | 52.1mA | 89.3% |
3V | 95mA | 4.97V | 50.8mA | 88.6% |
2.5V | 108mA | 4.80V | 49.1mA | 87.3% |
2V | 135mA | 4.70V | 48.1mA | 83.7% |
1.8V | 145mA | 4.58V | 46.8mA | 82.1% |
1.5V | 172mA | 4.43V | 45.3mA | 77.8% |
特徴として
・効率が良い。(80%以上)
・入力の変動が出力に現れる。
電源電圧をリファレンスにするようなA/D変換には使えませんが、電池でPICを動かすには使えそうです。
ただ、世界標準のICという程では無いと思われますので、今後も安定して入手出来るかは不明です。
HT7750Aと3.3VのHT7733Aは 電子回路やソフトウエア>電源>HT7733Aと
HT7750A でも解析していますので、参考にしてください。
TL499AはポピュラーなICですので、入手性も良く、値段も、それ程、高くはありません。
トランスを使用した電源のシリーズレギュレータ回路も内蔵しているので、通常は、それを使って、停電時に電池で
バックアップをするような事も出来ます。(入力が2系統ある。)
インダクタはアミドンT50#3にフォルマール線を適当に巻いて100uHに合わせ込みました。
HT7750Aで使用した小型のドラムコアでは若干、効率が落ちます。
回路図
こちらも、簡単なデータを示します。
負荷に100Ω(実測97.8Ω)の抵抗を接続して入力を変化させたものです。
入力電圧 | 入力電流 | 出力電圧 | 出力電流 | 効率 |
---|---|---|---|---|
3.5V | 105mA | 5.01V | 51.2mA | 69.8% |
3V | 128mA | 5.0V | 51.1mA | 66.5% |
2.5V | 159mA | 4.99V | 51.0mA | 64.0% |
2V | 213mA | 4.97V | 50.8mA | 59.3% |
1.8V | 246mA | 4.97V | 50.8mA | 57.0% |
1.5V | 317mA | 4.96V | 50.7mA | 52.9% |
特徴として
・効率は、それ程、良くない。
・入力電圧の変化に対し、出力が、あまり変動しない。
・比較的、安定に動作する。
結構、使い易いICです。
少しでも、効率を上げる為に直流抵抗の低いインダクタを使用する必要があると思います。
参考までに、HT7750Aの回路で使用した、直流抵抗0.5Ωの小型インダクタを使用した場合の特性を下
に示します。
この場合、出力電圧の再調整は行わず(VRを動かさない)インダクタのみ交換しました。
直流抵抗が大きくなったので効率は落ちていますが、出力電圧の再現性や安定度は良く、動作は安定しています。
入力電圧 | 入力電流 | 出力電圧 | 出力電流 | 効率 |
---|---|---|---|---|
3.5V | 108mA | 4.99V | 51.0mA | 67.3% |
3V | 132mA | 4.99V | 51.0mA | 64.3% |
2.5V | 168mA | 4.98V | 50.9mA | 60.3% |
2V | 230mA | 4.97V | 50.8mA | 54.9% |
1.8V | 270mA | 4.96V | 50.7mA | 51.7% |
1.5V | 365mA | 4.91V | 50.2mA | 45.0% |
特徴
HT7750Aは3端子で外付け部品も少なく省スペースです。
TL499Aは外付けVRで出力電圧を可変出来ます。
TL499Aはシリーズレギュレータも内蔵しているので、通常はAC電源を使用し、停電の時だけ電池でスイッチング
レギュレータを駆動する回路が簡単に出来ます。
出力電流
HT7750Aは最大200mAとなっていますが、せいぜい100mAです。
100mAでも、電池電圧によって出力電圧が変化します。
TL499Aは最大電流が100mAとなっていますが、電池電圧が下がると100mAを流せません。
せいぜい60mAです。
出力電圧安定度
HT7750Aを負荷電流20mA程度で使えば、出力電圧は電池電圧の変化に対し、非常に安定しています。
負荷電流50mA程度でも、電池電圧の変化に対し、出力電圧が変化します。
TL499Aは電池電圧、負荷電流の変化に対し、出力電圧は安定しています。
効率
HT7750Aは80%以上の効率が期待できます。
TL499Aでは70%以下です。
電池電圧が下がると50%〜60%になってしまいます。
リップル
HT7750Aのリップルノイズは軽負荷の場合でも、なかなか取れません。
通常のマイコン回路では、それほど問題は無いですが、高ゲイン、高精度のアナログ回路では心配です。
異常発振のトリガになったり、オフセット電圧が浮き上がったりする可能性があります。
TL499Aはリップルノイズがとれやすいと感じました。
起動電流
スイッチング電源ICは起動の時、大きな電流を必要とします。
最初、平滑コンデンサーを充電するため、負荷が重くなるのが原因(の大部分)です。
従って、この突入電源が流せないと起動に失敗します。
問題は、失敗すると大きな電流が流れ続け、場合によっては壊れてしまいます。
HT7750Aの場合は比較的小さな突入電流でスムースに立ち上がります。
TL499Aは軽負荷でも大きな突入電流が流れます。
従って以下のの場合、立ち上がれない可能性があります。
・ 直流抵抗の大きなインダクタを使った場合
・ 平滑コンデンサーの容量を必要以上に大きくした場合
・ 入力側にトランジスタスイッチを付けた場合
これはCPUで自動で電源をオフするような使い方で、私は、これで痛い目に遭いました。
その他
最近の半導体のマーキングは見にくいものが多いですが、HT7750Aのマーキングは特に見にくく
私の老眼では[老眼鏡+虫眼鏡]でも判別できません。