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 100円充電器を放電器に改造

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 100円充電器は非常に興味ある商品ですが、残念ながら充電器としては使えません。
 充電時間が非常に長いのにも拘わらず自動で停止しません。
 充電しようとする電池が空なのか電荷が残っているのかも判断しません。
 このまま充電器として改造するのも困難です。
 そこで放電器に改造することにしました。


 回路の検討

放電回路1

 ダイオードと抵抗を直列にした簡単な回路が紹介されています。
 放電器は何回路も作らなければならないので、複雑な回路は困ります。
 実用上は、これで十分です。
 放電器を使うのは100%、充電の前です。
 放電したまま放置するということはまず、ありません。
 ある程度の電流で放電すれば、短時間で済むので、ムギ球の点灯具合を見て、マルチメーターで電圧を測り、取り出せば良い のです。
 ただ、この回路ではムギ球に掛かる電圧が低く、まだ放電したいタイミングで消灯してしまいます。
 そこで、次の回路を試してデータを取ってみました。

放電回路2

 放電電流は負荷抵抗の値で任意に変更出来ますが、一応、700mA〜1A程度を目標としました。
 電流が増えれば発熱で苦労することになります。
 もう一つ注意する点は、トランジスタのコレクタ飽和電圧とベース電流の関係です。
 電流を多く流したいときはベース電流を多く流して飽和電圧を下げなければなりません。
 今回、手持ちに22Ω〜33Ωの抵抗が無かった為、47Ωを使ったのですが、放電電圧1.4Vの時のコレクタ−エミッタ間 電圧が0.35V程度でした。
 この時、1.5Ωの発熱は750mW程度ですので、2Wの抵抗が必要となります。
 (一般的に2倍〜3倍の定格のものを使います。)
 トランジスタの損失は280mW程度と小さいのですが、電流値が大きいので飽和電圧の小さい小型のパワートランジスタが 必要になります。
 この他、ムギ球で110mW程度の発熱があります。
 1回路で合計1W以上の発熱があり、1台に2回路収容されるので、発熱は2倍になります。
 尚、2SA1359はベース電流を90mA位流せばコレクタ飽和電圧を0.15Vに下げる事が出来ます。
 この時、抵抗には900mA位の電流が流れ1.3W近い発熱があり、3Wの抵抗が必要となります。
 放電抵抗を何とか1Wの酸金抵抗で済ませる為に定電流回路を採用しました。
 1Wの酸金抵抗は昔の1/4Wカーボン抵抗程度の寸法で非常に小型です。

放電回路3

 部品数は、やや多いですが、皆、小型の部品ですので、小さいスペースで済みます。
 放電電圧1.4Vの時の放電抵抗の発熱は0.35W程度ですので1Wの抵抗で十分です。
 反面トランジスタの損失は増えますが0.6W程度ですので、放熱器無しで大丈夫だと思います。
 2SA1359の許容損失は周囲温度25℃(放熱器無し)で1.5Wです。
 回路図中でR2の47Ωは不要ですが、半田付け不良等でQ3のベースに過電流が流れた場合の保護用です。

 充電器の加工と回路の製作

 まず充電器の基板に付いている部品を全て取り除きます。(電池ホルダー以外)
 ACプラグは溶着されている樹脂の蓋を剥がして取り除きます。
 取り除いた後に穴が開きますが、通風口とします。
 カバーのトランス収納部の印刷が目障りなので、消します。
 私はペイント薄め液で拭き取りましたが、手早くしないと樹脂が溶けます。
 透明カバーをそのまま使うか、取り除くかは好みですが、この部分にペイント薄め液が付くと曇ります。
 印刷を消すには、もっと良い方法があるのかもしれません。
 この部分にドリルで排気口を開けます。
 ムギ球もこの部分に取り付けます。
 もとのLEDの場所は位置関係が掴みにくいし、作業もやりにくいし、取り付け方によっては電池装着の邪魔になります。
 次に基板を製作しますが、小さなスペースに詰め込む為にレイアウトをしっかり決めないと部品が載らなくなります。
 基板のサイズは2.54mmピッチで7穴×14穴とし、以下にレイアウトを示します。

基板レイアウト

 とりあえず3台分(電池6本分)の基板を製作しました。

3台分の基板

 出来上がった基板は1回路毎に動作チェックを行います。
 電池ではなくCVCC電源に接続して動作を確認して筐体に組み込みます。

筐体に組み込み

 放電してみます。

放電中

 放電は2〜3回試しただけで、使いこなした訳ではありませんが、とりあえず完成とします。
 回路は簡単でソフトもないので、気楽なものです。


 放電特性

 放電電圧に対する放電電流のデータを示します。
 最初のデータはトランジスタ1石のもの。
 次のデータはトランジスタ4石のものです。

放電回路1特性  放電回路1特性

 両者でムギ球の消灯する電圧が異なっていますが、これはトランジスタの飽和電圧の違いです。
 トランジスタ4石の回路ではムギ球専用に1石使っているので負荷が軽く、低い電圧でも点灯しています。
 ベース抵抗の値を大きくすれば消灯する電圧を高くできますが、後で述べる理由で放電を深くしているので、 このままにしておきます。
 放電特性の違いをグラフにしてみます。

放電特性グラフ


放電終了電圧について

 放電終了電圧は一般的には1V程度と言われています。
 しかしながら、放電中に1Vで止めてしまうと放電不足になるような気がします。
 ニッケル水素電池は放電中は、より以下に電圧が下がり、充電中は、より以上に電圧が上がります。
 これは放電電流又は充電電流の値が多い程、顕著です。
 たぶん内部抵抗に関係があると思います。
 充電器では電圧を計る時だけ充電を止めていますので、放電器でも放電を止めて電圧を測れば多少は改善されるのですが、 これでは別電源が必要となります。
 別電源を用意して、電圧を計測するタイミングでは放電を停止して、電圧が下がってきたら間欠放電にして・・・・・と欲を 言えばキリがないのですが、簡単に済ませて妥協することにします。
 私の場合、多少、深めに放電しています。
 以前作った放電器ではムギ球が0.75V位で消灯するので、この時点で電池を外しています。
 外した電池は短時間で1.2V程度に回復します。
 ただし、内部抵抗が上がっているので電流は流せません。
 今回も、大体、同じですが、回路図で2SA1020のベース抵抗の値を大きくすれば、消灯する電圧が少し高くなります。
 もっと少ない電流で放電させた場合は0.9V程度で停止させる方が良いかもしれません。
 電池にとって最も良くないのは長期間、放置することです。
 わずかな電流で自己放電し、0.6V程度まで電圧が下がってしまった電池は回復しない場合があります。


ケース内の温度上昇

放電中の温度

 排気用の穴にサーミスタを差し込み放電中のケース内の温度を計ってみました。
 場所により、温度に差が有りますが、高い場所では写真のように70℃になっています。(気温24℃)
 多分、0.91Ωの抵抗か2SA1359に触れていると思われます。
 1Wの抵抗は損失350mW程度ですので余裕がありますが、小型になっている分、温度は上がるかもしれません。
 今回の条件ではトランジスタは周囲温度90℃程度に耐えるはずですので問題にしていません。


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