よく自作電池管ラジオで球のヒーターを焼損したという記事を見ます。
B電池を逆に接続しコンデンサーが破損したという記事も見ました。
このような事故が発生すると金銭的損失、時間の損失が大きく、交換部品が入手出来ず最悪、投げ出してしまう
ことにもなりかねません。
私は事故を起こさないよう細心の注意を払っています。
古い市販の電池管ラジオはAC電源、電池共用となっているものが多く、その場合ヒーターを直列に接続
しています。
アマチュアが自作する場合はヒーターの直列接続は避けるべきです。
回路接続が複雑になり誤配線やショートによる事故の発生の可能性があります。
間違ってヒーター電流が異なる球を挿すと危険です。
私は単3電池1本のポケットラジオから単1電池2本(パラ)のラジオまで全て1.5V単一電源としています。
B電源は1.5VからDC/DCコンバータで昇圧しています。
理由は2種類の電池の消耗を管理するのは面倒で使いづらいということがあります。
ただ、2種類の電池を使う場合でもヒーターは全部並列にしてA電池は1.5Vとすべきです。
ヒーター焼損の原因の多くはヒーターにB電源をショートさせた時発生します。
電池は内部抵抗が低いので大電流が瞬間的に流れます。
対策としては定電流ダイオードを使用します。
定電流回路はディスクリートでも組むことが出来ますが出力を短絡した時、回路は電源をショートする事になるので
各素子の耐電圧、耐電流、耐電力を考慮する必要があります。
素子のスペースも大きくなります。
ここでは私が使用しているセミテックのEシリーズに関して説明します。
・ 耐電圧
Eシリーズは電流値により0.1mA〜18mAまで16種類がシリーズ化されています。
このうち0.1mA〜5.6mAまでの11種類が100V耐圧、8.2mA〜18mAまでの5種類は
30V耐圧になっています。
電池管ラジオでは30V耐圧は不足ですので100V耐圧を選択し、電流値最大の5.6mA一択と
なります。
・ 電流値
CRDは供給電流を制限しますが供給電流を増やす事は出来ません。
5.6mAのCRDを使用しても供給電流が2mAしかなければ負荷には2mAしか流れません。
CRDの本来の目的は回路に一定の電流を流すことですが私の場合は異常時の過電流を制限する目的で使っています。
従って平常時は制限電流の1/2程度の電流が流れているだけです。
・ 制限電流値を増やすには
100V耐圧のCRDは5.6mAのものが最大です。
5.6mA以上の電流が欲しい時は数本をパラにします。
・ 電圧降下
CRDに電流を順方向に流すと電圧降下が発生します。
B電流が10mAのラジオに対し5.6mAのCRDを3本パラに接続した時の電圧降下は2V程度でした。
4本パラに接続すると1.4Vになりました。
電圧低下は小さい程良いので5本パラにすれば、さらにロスは減ります。
ただし、コスト、スペースが増え、制限電流は大きくなります。
上の回路は 「電池管ラジオB電源U」 の頁で説明した1.5Vを45Vに昇圧するDC/DCコンバータです。
負荷(電池管ラジオ)に45V5mAを供給します。
5.6mAのCRDは1本でも済むのですが3本パラにして電圧降下を減らし効率を上げています。
効率は70%に達します。
負荷には5.6×3=16.8mA以上流れる事は無いのでヒーター電流20mAの6088に接触しても大丈夫です。
48V(24V×2)の定電圧ダイオードは負荷を解放した時に出力電圧が上がってしまうこと防ぎます。
負荷電圧は45Vに合わせ込んであるので通常、定電圧ダイオードは動作していません。
負荷が外れた時だけ余分なエネルギーを吸収し出力端を48Vに抑えます。
この場合は定電圧ダイオードに流れる電流は僅かですが供給側が電池やCVCC電源の時は定電圧ダイオードの許容損失に
注意します。
CRDで電流制限したにも拘わらず6088のヒーターを焼いた事がありました。
原因はB電圧回路に数百UFの電解コンデンサーを接続した為でした。
充電された電荷は逃げ道が無く、いつまでも残っています。
充電した電荷をショートさせ一気に放電したためです。
B電圧に接続するコンデンサーは数十UFで足りるはずです。
また、数百KΩ〜1MΩ程度の放電抵抗を接続します。
この抵抗は電力を消費するので、あまり小さな値には出来ません。
ラジオによってはA電源だけに電源スイッチを付けたものがあります。
A電源を切ればB電源が流れないことを利用したものですが放電抵抗を付ければ流れてしまいます。
A電源、B電源を両方入り切りするか、私のようにB電圧をDC/DCコンバータで作ればスイッチは一つで済みます。
私が初めて製作した電池管ラジオはラジオ少年のキットです。
上の写真はその時調整用に製作した電源です。
A電源は1.4V350mAの固定ですがB電源は0〜72V、0〜25mAのCVCCになっています。
調整に電池を使うと調整中に電圧が下がってくるので動作条件が変化します。
負荷をショートすると短絡電流が流れ危険です。
B電池のコストも気になります。
この電源は今でも便利に使用しています。
何台か電池管ラジオを製作するうちにA電源もCVCCにしたくなりました。
B電圧もDC/DCコンバータで1.5Vから昇圧するようになりました。
電源は全て1.5Vとなったので電流容量も最大1A程度は必要になりました。
かといって調整用電源を作り直すのは面倒なのでA電源はメーカー製CVCC電源を使用しています。
手順としてB電源は自作のCVCC電源、A電源はメーカー製CVCC電源に接続して調整します。
調整が済んだらB電源をDC/DCコンバータに接続し直し、もう一度メーカー製CVCC電源で1.5Vを
供給します。
CVCC電源は電流値を設定出来るので安全ですが電圧を容易に変更出来るので調整時に電圧を規定値より上げてしまう
ことがあります。
私がA電圧調整用に使用しているメーカー製CVCC電源は最大18Vの電圧を出せるので危険です。
注意深く電圧を設定すれば大丈夫と思うかもしれませんが人間は必ずミスをします。
上の回路はCVCC電源で調整したときの簡易的な保護回路です。
CVCC電源の電流制限機能を使うので電池で調整するときは使えません。(危険です。)
逆接続のダイオードはリード線の逆接続を防ぐものです。
順方向は3本直列で1.6V〜1.7V程度で電流が流れ始めるものを使います。
後で取り除くなら1.5Vで若干、電流が流れても大丈夫です。
3本のダイオードは1Aも流せば2V位に電圧が上がってしまいます。
そこでCC値を必要最低限に絞っておきます。
実際にはヒーターはCC値によって保護されるのですがダイオードは動作を確実にする為の保険のようなものです。
若干、1.5Vを超える場合があるかもしれませんが短時間であれば大丈夫でした。
前項でA電圧の保護について述べたのですが、やや不確実でした。
今回は完全に過電圧から保護する装置を紹介します。
詳しい説明が 「電池管ラジオB電源U」 の頁に有ります。
CVCC電源と負荷(ラジオ)の中間に接続します。
上のグラフはリミッターの通過特性です。
CVCC電源の電圧を可変しても0.7V〜1.52V以外は出力を遮断します。
1.52Vは微調整可能です。
この時の実験では1.5Vの時668mAを負荷に流していますが電圧ロスは15mV以下です。
私のラジオは1.5V単電源で大容量の電解コンデンサーが入っています。
また、DC/DCコンバータの電源電圧となっています。
電池が逆に接続されると困ります。
写真は単3電池ボックスですが上側のボックスは逆装着が可能です。
下側のボックスは逆装着の可能性はありません。
ポイントは+電極が凹んでいることです。
上の写真は逆に入ってしまう電池BOXの逆挿入を防止する工夫です。
+電極の近くにビスを取り付けて電池の−極が+電極に接触しないようにしています。
上側は単一電池で3mmのビスを取り付けたもの、下側は単3電池に2mmのビスを取り付けたものです。
平ワッシャやスプリングワッシャで高さを調節します。
ビスと電極が接触しないように注意します。
電池の持続時間を増す為に並列接続する場合があります。
この時、電源の入切りは必ずAの様にします。
個々の電池の状態は同じでは無いので片方が供給側、片方が負荷となり、Bの場合スイッチオフで放電してしまいます。