ICの入力ピンには大抵ノイズをクランプするダイオードが入っています。
入力ピンに負電圧が加わった加わった場合、電源電圧以上の電源が加わった場合に内部回路を保護します。
(エネルギー密度の小さいノイズには有効ですが、インピーダンスの低い電圧を加えれば壊れます。)
電源電圧に対してはPN接合は逆バイアスになっているので電流は流れません。
ところが電源を逆接続するとPN接合が順バイアスになり短絡電流が流れ焼損します。
クランプダイオードは出力ピンに入っている場合もあり、その他にも短絡電流が流れる流れる内部回路が
あるかもしれません。
逆電圧で特に問題になるのは電池を電源とする機器です。
電池を逆に接続する可能性があるからです。
単三電池では逆に入れる可能性があります。
006P電池は逆には入りませんが逆接触させる可能性は大です。
とにかく、「絶対に逆接続しないから大丈夫」とは思わないことです。
逆接続に耐える電源IC
3端子電源LM2931は逆電圧に耐えるとデータシートに書かれています。
この他にも逆電圧に耐えるICが存在するかもしれません。
電池が逆に入らない電池BOX
電池を電源とするメーカー製の機器は逆に入れても電極が接触しない構造になったものが多いです。
アマチュアが使う電池ボックスには逆に接続されない構造のものは、あまりありません。
下の写真は以前、秋月電子で扱っていた金属製の単3電池ボックスですが、電極の片側に樹脂のスペーサーを付けることにより、
−電極が接触しないようになります。
CVCC電源を使う
簡単な実験で電源電流が小さい場合は電圧と電流を設定できる実験用電源を使用します。
消費電流より少し大きい位に電流値を絞っておけば、短時間であれば保護出来ます。
電流値がオーバーすれば電圧は0V近くまで落ちますが、わずかな電圧が出ていますので、長時間では電解コンデンサーに
悪い影響を与えます。
電池を電源とする機器を製作した時、最初から電池を使用するのは禁物で、最初はCVCC電源を使います。
ダイオードを入れる
実験であれば電源と直列にダイオードを入れれば十分な場合も多いです。
ただし、シリコンダイオードであれば0.6〜1V、ショットキダイオードであれば0.3〜0.6V位の電圧降下が
あります。
親電源がCVCCであれば、電圧降下分を補正することも可能です。
電流容量に余裕のあるダイオードを使用します。
ダイオードを入れるU
ダイオードを電源に対し、逆並列にいれる方法もあります。
ヒューズのメンテナンスが必要になりますが、CVCC電源ならヒューズを省くことも可能です。
高価なユニット等には予め電源端子に逆並列にダイオードを入れておくと結線ミスに対し保護される可能性大です。
PCH MOSによる逆電圧保護
実験ではダイオードによる保護で十分ですが電池を電源とする機器ではダイオードによる電圧降下は大きなロスとなり、
電池の使用時間が大きく減少します。
この様な場合、PCHのMOSFETを使えば電圧ロスを小さく出来ます。
図でダイオードは外付けしたものでは無く、素子の中に存在するダイオードでボディーダイオードとか寄生ダイオードとか
言われます。
このダイオードは通常は回路図に現れません。(書く人もいます。)
ダイオードはFETがOFFでも電流が流れます。
FETがONすると電圧降下はチャンネル抵抗とチャンネル電流を掛けた値になり、ダイオードによる電圧降下より小さな値に
なります。
例えばチャンネル抵抗50mΩのFETに1A流した場合、50mVの電圧降下となります。
ソースとドレインの向きを間違えないようにします。
間違えて逆電圧を加えた場合、FETはONしませんがダイオードに電流が流れてしまいます。
FETスイッチ
逆電圧保護とは関係ありませんがPCH MOSをスイッチとして使う場合はソースとドレインの向きを逆にします。
OFFの時ダイオードが電圧を阻止する方向でなければなりません。
ただし、逆電圧が加わるとダイオードに電流が流れてしまいます。
逆電圧保護とスイッチ
逆電圧保護とスイッチを両方使う場合は2個のFETを直列に接続します。
FETの内部回路として寄生ダイオードのみを書いてきましたが、さらにゲート保護ダイオードダイオードが存在します。
図でゲート ソース間に逆直列に入っている2個のツェナーダイオードです。
このダイオードも通常の回路図には滅多に書かれません。
ゲートを静電気から保護する為に入っていますがツェナー電圧以上になると電流が流れるので電流が流れない範囲で
使用する必要があります。
データシートではゲートソース間の耐圧として記されています。
電圧は正負対象ですので例えば±20Vというように書かれています。
耐圧は素子により±7V位〜±30V位です。
電池電圧は、この電圧より低くなければなりません。
この他、ドレイン ソース間の耐圧も存在しますが、ゲート ソース間の耐圧よりは大きくなっていますので
ゲート ソース間の耐圧が守られていれば大丈夫と思います。
電圧降下を小さくするにはチャンネル抵抗の小さいFETを選ぶ必要があります。
チップの大きな素子程、チャンネル抵抗は小さくなりますが、寸法が大きく高価になり、ゲートの入力容量が増えます。
また、耐圧の大きい素子ほどチャンネル抵抗は大きくなってしまいます。
チャンネル電流、チャンネル損失の最大値も守らなければなりません。
もう一つ、ゲート ソース間のカットオフ電圧があります。
ゲートスレッショルド電圧とか、いろいろな言い方があります。
これはFETを確実にOFFさせるゲートソース間の電圧です。
例えば2SJ377の場合、−0.8V〜−2.0Vとされています。
電池電圧が2VになるとOFFしてしまう可能性があります。
確実にONさせるには−2.5V程度は必要です。
もっと低い電圧で動作するFETもありますが耐圧は低くなります。
低い電圧でONさせるという事は電源の電圧が低いということですので、低い耐圧で十分です。
インターネットは特定の品種のデータを検索するには便利ですが、品種を探すには規格表が便利です。