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 電池4本から5Vを作る(続編)

NJM2360Aを使用したフライバックコンバータ

 NJM2360A(=MC34063)を使用した昇降圧コンバータは別の頁(電池から5Vを作る)で取り上げています。
 降圧コンバータと昇圧コンバータをカスケードに接続したものですが、部品数が増えロスが多いので効率を上げるの は大変です。
 電池電圧の変動範囲が出力電圧を跨ぐので一般的な降圧コンバータICや昇圧コンバータICは使えません。
 今回はNJM2360Aでフライバックトランスを駆動してみます。
 JRCには制御方法がPWMの上位互換品種NJM2374Aがあり、こちらを使いたかったのですが入手が面倒だったので 手持ちのNJM2360Aを使いました。

仕様

 出力電圧は5V、負荷電流は30mA〜50mAとします。
 電池はニッケル水素単3電池4本(4.8V)とします。
 ただしアルカリ電池も使えるように4V〜7Vで動作するものとします。
 上記、使用範囲で効率70%以上とします。

トランス

 コアはカーボニル鉄の#3材が効率が高いのですが、手持ちが枯渇したため、安価なフェライトの#43材を使用しました。
 透磁率が高いので巻き数を少なく出来るメリットもあります。
 サイズは外形1/2インチのものを使用しました。(アミドンFT−50#43)
 フライバックトランスの出来具合で効率は変わりますが、今回も感覚的に作りました。
 一次巻き線のインダクタンスを220uHと決めつけています。
 電池電圧が低下と電圧ロスを考慮し、二次巻き線の巻き数は一次巻き線の1.5倍としました。
 巻き数と巻き数比を変えれば効率も変化するとは思いますが巻き直しは面倒なので最初に作ったまま変更していません。
 発振周波数は外付けコンデンサーの値で変える事が出来るので、効率の高い周波数を選択します。
 今回は周波数が高くなりました。
 一次巻き線は外形0.32mmのUEWを使いたかったのですが切らした為0.6mmのUEWを25回巻きました。
 二次巻き線は0.26mmのUEWを38回巻きました。

整流ダイオード

整流ダイオード

 写真上は40V1Aのショットキダイオード1S4です。
 写真下は20V5AのショットキダイオードHRF502Aです。
 小電流ですので常識的には1S4で十分ですがHRF502Aは耐圧が低い事と大電流ダイオードの小電流領域ということで VF(順方向電圧降下)が0.1V程度低くなっています。
 回路図はHRF502Aになっていますが、1S4も試してみました。

回路図

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
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回路図

 フライバックトランスの製作を除けば後は簡単です。
 発振周波数は外付けのコンデンサーで決まりますが今回は83PFと、かなり小容量になっています。
 従って発振周波数は高くなります。
 83PFというのは設計値では無く、回路製作後、いろいろ試して交換した結果、調子の良かった値に回路図を修正 したということです。
 たまたま手元にあった実測値83PFのマイカコンデンサーです。
 今回、負荷電流を30mA〜50mAと想定しましたが、もう少し電流を大きくするには相対的にインダクタンスを小さく します。
 そして電流検出抵抗の値を小さくします。
 ドライバトランジスタの電流を設定する外付け抵抗を大きくしているので、こちらの値も小さくします。
 出力トランジスタのピーク電流が1.5Aを越える時はパワートランジスタを外付けする必要があります。

製作した回路

製作した回路

 写真は実験回路です。
 使い古しの実験基板を流用した為、不要な部品が付いています。

実験データ

 実験は入力電圧を固定(4.8V)し、負荷を変化させたときの負荷変動特性と負荷を固定(出力電流:約50mA)し 入力電圧を変化させる入力変動特性です。
 それぞれダイオードHRF502Aと1S4を比較しているので4組のデータがあります。


負荷変動特性(HRF502A)

負荷変動特性(HRF502A)



負荷変動特性(1S4)

負荷変動特性(1S4)



入力変動特性(HRF502A)

入力変動特性(HRF502A)



入力変動特性(1S4)

入力変動特性(1S4)



負荷変動特性(出力電流−入力電流)

入力変動特性(出力電流−入力電流)

 ここでは出力電流(負荷電流)に対応する入力電流を示します。
 入力電流が少ないほど効率は高くなります。
 負荷電流50mA付近でHRF502Aの方が入力電流が少なくなっています。


負荷変動特性(出力電流−出力電圧)

入力変動特性(出力電流−出力電圧)

 出力電圧の変動は0.2%程度ですので計測誤差程度です。
 ダイオードによる差も有りません。


負荷変動特性(出力電流−効率)

入力変動特性(出力電流−効率)

 小負荷では当然ながら効率は下がりますが負荷電流30mA以上では効率は70%を越えています。
 負荷電流50mA付近で1S4の効率が若干、落ちています。


入力変動特性(入力電圧−入力電流)

入力変動特性(入力電圧−入力電流)

 入力電圧の高い部分で1S4の入力電流が増えています。
 立ち上がり電圧にはヒステリシスがあるので測定誤差が有り、差があるとは言い切れません。


入力変動特性(入力電圧−出力電圧)

入力変動特性(入力電圧−出力電圧)

 出力電圧は安定していてダイオードによる差もありません。
 僅かな誤差は安物の半固定抵抗の安定性と再現性の悪さによるものです。


入力変動特性(入力電圧−効率)

入力変動特性(入力電圧−効率)

 ここではダイオードによる違いがハッキリ出ました。
 入力電圧が高い範囲で1S4の効率が大きく落ちています。
 これだけ差があるとHRF502を使いたくなります。
 ただ、1S4にしても効率70%はクリアしています。


HRF502A

 HRF502Aは20V、5Aのショットキダイオードです。
 以前、秋月電子で極短期間、扱っていました。
 4個入り1パック200円でしたので10パック程、買って置いたものです。
 耐圧の低いダイオードは順方向の電圧降下が低く、低電圧では有効です。
 これはMOSFETのチャンネル抵抗にも言えます。
 ここで使用している電源の逆接続防止用のFETも耐圧の低いものです。
 ただ、今回のHRF502A関しては耐圧がギリギリです。
 フライバックコンバータのダイオードの耐圧は  出力電圧 + 入力電圧 × (二次側巻き数 / 一次側巻き数)
 以上が必要となります。
 入力電圧8Vの時
 5 + 8 × 1.5 =17
 これぐらいが限界です。  入力電圧8V以下なら大丈夫だろうということでHRF502Aを使用しましたが念のため、ダイオードに加わる電圧を オシロで確認してみました。
 ダイオードのカソード(出力端)にオシロのGND、アノードにプローブを接続したのが下の写真です。
 入力電圧は7.25Vの時のものです。

ダイオード印加電圧
 リンギングのアンダーシュートが30Vを越えています。
 電圧を少しずつ上げながら観察しましたが、ブレークダウンはしていないようです。
 新品のアルカリ電池は1.6Vですので4本で6.4Vになります。
 これくらいなら大丈夫ではないでしょうか。(保証はしませんが)
 試しに下図のサージキラーを取り付けてアンダーシュートが取れるか見てみました。

サージキラー

ダイオード印加電圧

 殆どアンダーシュートは取れました。
 Cの値を2200pFにすれば完全に取れます。
 しかし問題があります。
 効率が下がり、動作点が変化して発振周波数が下がってしまいました。
 1000pFの時点で効率は1S4(サージキラー無し)以下でした。

リップルノイズ

リップルノイズ

 入力電圧4.8V、負荷抵抗99.6Ω(負荷電流:約50mA)、ダイオードHRF502Aの時のリップルノイズです。
 50mV P_P程度です。


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