9V電池から5Vを作る時、多くの場合、3端子レギュレータを使うと思います。
手元に78L05、LM2931、LP2950の3種類の3端子電源があったので特性を比較してみました。
これらは、いずれもバイポーラ構造で100mA定格のリニアレギュレータです。
他にも、CMOS構造の3端子電源があるようですが、入手出来ませんでした。
78L05は3端子レギュレータの元祖的な存在で、古くからあり、いろいろなメーカーから供給されています。
使用電流値にもよりますが、入出力の電圧差が1.6V以上は必要です。
バイアス電流(内部消費電流)は標準で4mA程度とされていますが、無負荷時の消費電流は規定されていませんでした。
LM2931は、入出力の電圧差が0.6V程度で動作する、低ドロップアウト型です。
このICは入力電源を逆接続しても壊れないとか、高いトランジェント耐性とかが謳われています。
無負荷時のバイアス電流は1mA以下と規定されていますが、電流を流した状態でのバイアス電流は78L05と大差ないと
思われます。
このICは、一つ気になる事があります。
入出力電圧差がドロップアウト電圧以下になると、消費電流が急増することです。
このことはカタログのグラフで示されていますが、実験でも確認しました。
無負荷でも20mA以上が消費されてしまいます。
充電型の電池を電源として、放電終了電圧以下になったのを放置した場合、電池にダメージを与えます。
場合によっては、電池電圧の低下で負荷(LM2931も含めた)を切り離す回路が必要になるかもしれません。
LP2950は低ドロップアウト、高精度、無負荷時の消費電流が非常に小さい等、非常に使い易いICです。
ただ、趣味で使う場合、現時点では多少、入手性に難があるかもしれません。
負荷抵抗として、公称80Ω、実測77.8Ω、1/2Wのカーボン抵抗を使用しました。
5Vの電圧を加えた時64mA程度の電流が流れます。
負荷が変われば、特性は変化しますが、今回は上記の負荷抵抗でのみテストしています。
9V電池の負荷電流としては、せいぜい、この程度ではないでしょうか。
以下に入力電圧を4V〜10.8Vまで変化させた時のデータを示します。
上のグラフは入力電圧を変化させた時の入力電流を示しています。
6.8V以上では、ほぼ等しい電流値となっています。
品種により、待機時の消費電流(カタログ値)には大きな差があるのですが、負荷に63mA〜64mAの電流が流れている
時の消費電流は3mA〜4mAで、大差無いと言えます。
78L05とLP2950ではドロップアウト電圧以下で入力電流が落ちていますが、出力電圧が下がって負荷電流が減少した
為です。
LM2931ではドロップアウト電圧以下で入力電流が増えています。
負荷電流は減っているはずなのに入力電流が増えているので内部消費電流が急増していることが分かります。
出力電圧は多少ばらついていますが、いずれもカタログの規格内には収まっています。
特にLP2950は高精度で、電圧の偏差が小さく押さえれています。
今回、ランクの高いLP2950ACZ5.0を使った関係で、出力電圧は4.98Vと高精度ですが、これでも下限に近い
値です。
LM2931とLP2950は入力電圧5.6Vで立ち上がっていますが、78L05は6.8V以上の入力電圧が必要になって
います。
負荷抵抗で消費された電力を入力電力で割った値を効率にしています。
ドロップアウト電圧以下は使用出来ないので、効率の意味は、ありませんが、数値としては出ています。
今回の条件では入力電圧6.8V以上では、どれを使っても大差無いと言えます。
入力電圧が5.6V〜6.8Vの範囲では低ドロップアウト型しか使えません。
電池が7素子のニッケル水素電池の場合、放電終了電圧が7V程度で、これ以下で放電させると電池を痛めます。
この場合、6.8Vで入力電流が減り始める78L05が電池の為に優しいといえます。
6素子のニッケル水素電池や、使い切ってしまうアルカリ電池、マンガン電池では、もう少し低い電圧まで使いたいので
LP2950が良いと思いました。
LM2931はドロップアウト電圧以下で消費電流が急増するので注意が必要です。
9Vの電池から5Vを作る場合、スイッチングレギュレータを使っても大きなメリットは有りません。
9V電池を使う回路は小規模のものなので、小コスト、省スペースな3端子電源が多く使われると思います。
ここでは、あえて、9V電池用のスイッチング電源を作ってみました。
入手性の良い電源ICが見つからなかったので、今回もPICマイコンでフライバックインバータを構成しました。
回路図をクリックすると拡大表示されます。
拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。
回路は今までと殆ど同じですが、電池電圧が高くなったので、マイコン用のローカルレギュレータを付加しました。
それから、巻き線に発生するスパイク電圧を吸収するツェナーダイオードを付けました。
4.8V電池の時、巻線には25V〜30Vのスパイクノイズが発生していました。
今回、電池電圧が高くなったので、さらに高電圧が発生するはずですが、15V程度に収まっています。
トランスはT50#3コアに0.26mmフォルマール線(ポリウレタン線?)を1:1のバイファイラ巻きで100回と
しています。
短絡保護に0.3Aのポリスイッチ、電池の逆接続保護にPCH−MOSを付けてあります。
「電池4本から±5Vを作る」で使ったソフトを相変わらず使い回しています。
1 ////////////////////////////////// 2 // SWREG+-5V PIC12F683 8MHz // 3 // 8BIT PWM // 4 // 2009/08/17 MikroC // 5 ////////////////////////////////// 6 7 // _FCMEM_OFF, _IESO_OFF, _BOD_ON, _CPD_OFF, _CP_OFF, 8 // _MCLEAR_OFF, _WDT_OFF, _INTRC_OSC_NOCLOCKOUT 9 10 unsigned char duty; //デューティー格納用(8ビット) 11 12 void main(void){ 13 T2CON = 0; //WDT確認用 14 OSCCON = 0x71; //8MHz 15 OPTION_REG = 0xcf; //WDT 1/128 16 ANSEL = 0x3; //アナログピンの設定 17 CMCON0 = 0x2; //コンパレータ設定 18 GPIO = 0; //出力を0に 19 TRISIO = 0xb; //GP2,4,5 を出力に 20 WDTCON = 0x3; //WDT ON 1/64 x (1/128) 21 asm CLRWDT; //WDT CLR 22 CCP1CON = 0xc; //PWM ACTIVE H 23 PR2 = 39; //周期(39+1) x 0.5u = 20uS 24 duty = 0; //デューティー0からスタート 25 CCPR1L = duty; //デューティーをセット 26 T2CON = 0x4; //T2 ON プリスケーラー無し 27 while(1){ 28 asm CLRWDT; //WDT CLR 29 if(CMCON0.COUT){ //出力電圧が高い時 30 if(duty > 0) duty--; //デューティーを下げる 31 } 32 else { //出力電圧が低い時 33 if(duty < 20) duty++; //デューティーを上げる 34 } 35 CCPR1L = duty; //デューティーをセット 36 Delay_us(40); //40uS待つ 37 if(!GPIO.F3)break; //遮断信号で終了 38 } 39 GPIO = 0; //一応出力を全部落として 40 T2CON = 0; 41 WDTCON = 0; 42 asm SLEEP; //スリープ 43 } 44
3端子電源LP2950を使用した場合と比較してみました。
6素子のニッケル水素電池の定格電圧が7.2V、7素子のものが8.4Vですので、使用領域ではSW電源の方が
消費電流が少なくなっています。
立ち上がり電圧はSW電源と3端子リニア電源で、ほぼ等しくなっています。
SW電源の場合は一次と二次の巻数比で立ち上がり電圧を変える事が出来ます。
今回、巻数比は1:1(100:100)ですのでロスが無ければ入力電圧5Vで出力電圧5Vになるはずですが、入力側と
出力側にロスがあるので、入力電圧5.6Vで立ち上がっています。
入力電流計の分解能が1mAですので、誤差が±1%程度あります。
入力電圧5.6V以下は出力電圧5Vが維持出来ないので効率の意味はありません。
電池の有効使用範囲ではSW電源の効率が高くなっています。
効率の面でSWレギュレータが、やや高くなっていますが、スペース、コスト、ノイズ面で劣るので、通常は3端子電源で十分
と思います。
今回、9V電池としては、やや重い負荷(64mA)で比較しましたが、軽負荷では多少、結果が変わるかもしれません。
1分でも長く動作させたい時はSWレギュレータの価値があるかもしれません。
6素子の電池で1割、7素子の電池で3割程度、動作時間が増えると予想します。
今回もPICマイコンでレギュレータを作りましたが、探せば高効率の専用ICがあるのかもしれません。
ただし、たとえ、あったとしてもアマチュアには容易に入手は出来ないと思います。(特に田舎では)
今回、トランスの巻き数を100:100にしましたが、これ以外の巻数で試していないので、合わせ込めば1〜2%程度、
効率を上げることが出来るかもしれません。
使用したコアは今回も手持ちのカーボニル鉄のアミドンT50#3コアですが、AL値が小さいので巻数が多くなります。
AL値の大きいフェライトのコアを使えば巻数を少なく出来るはずです。
アミドンのFT−50#43材あたりを使えば、巻数は20回程度で済むはずですので、比較してみたいと思います。