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 コアの材質

コアの材質を変えてみる

 いままで、手持ちのカーボニル鉄#3材を使ってスイッチング電源を実験してきました。
 このコアは適当に巻線しても、そこそこの結果が得られ、この用途に限れば非常に使い易いコアでした。
 ただ、問題が2点有ります。
 T−50#3コアの販売店を検索したのですが、マルツ電波しか探す事が出来ませんでした。
 値段は1個500円近くします。
 もう一つ、透磁率が低いので巻数が多くなります。
 そこで、フェライトで最も一般的な#43材のコアを探してみました。
 アミドン社にはFT−50#43という同サイズのコアがあります。
 FT−50#43はサトー電気で扱っていて、約1/3の値段で手に入ります。
 このコアと、これより透磁率の低い(それでもT−50#3よりは高い)FT−50#61の2種類のコアを通販で 求めました。
 #43がT−50#3の1/3強、#61がT−50#3の1/3弱の値段でした。

コア各種

 写真で左からT−50#3、FT−50#43、FT−50#61です。
 形状は同じで、外形が50/100インチ(約13mm)です。
 T−50はメーカーで灰色に着色しているので区別できますが、2種類のフェライトコアは地の色で、区別がつきません。
 サトー電気では独自に#43材を黄色、#61材を青に着色しています。
 サトー電気は親切心か店の管理上の問題か、どちらかの理由で着色してくれているのですが、黄色のペイントは 消えやすいです。
 もし、消えた場合はコイルを巻いてインダクタンスを計れば特定できます。

AL値

 トロイダルコアにはAL値という値があり、データとして公表されています。
 AL値と巻数から計算でインダクタンスを求めることが出来ます。
 単位は[nH/(巻数の2乗)]です。
 インダクタンスはL=AL×Nとなります。(N:巻数)
 例えばT−50#3のAL値は17.5ですので100回巻けば175000nH(=175uH)となります。
 FT−50#43のAL値は523ありますので、計算上はT−50#3の1/5以下の巻数で済みます。
 同様にFTー50#61のAL値は68ですので、半分程度の巻数で済みます。
 ただし、実際に実験してみるとフェライトコアの透磁率がバラつく様で、調整が必要です。
 T−50#3の場合、AL値から求めたインダクタンスと実測したインダクタンスは、ほぼ等しくなりました。
 フェライトコアでは実測と計算値に大きな誤差がありました。
 今回の実験に使ったサンプルでは
 #43材では実測値が10%以上、低く出ました。
 #61材では実測値が30%以上、高く出ました。
(少ないサンプルで、計測誤差もありますので、数値は代表値とは言えませんが。)

使用した回路

 以前、「9V電池から5Vを作る」というページをアップしましたが、このときのスイッチング電源の回路を使用しました。
 理由はトランスの巻数比が1:1である為です。
 従って、バイファイラ巻にすれば、1回で巻けてしまいます。
 トランスを何回も巻き直すのは非常に面倒ですので、楽をしました。
 今回の目的は「9V電池から5Vを作る」のが目的では無く、「コアの材質による特性差の比較」にあります。
 既にアップしているPIC12F683を使った他の電源でも同様の傾向があるはずです。
 回路図は「9V電池から5Vを作る」のページを参照してください。

巻数の決定

 T−50に関しては、前回の実験で使った100:100のトランスをそのまま使っています。
 一発で、そこそこの結果が出たことと、巻数が多く、巻き直すのが面倒な為です。
 FT−50に関しては、始めに多目に巻いて徐々に減らし、最適値付近のデータを取りました。

使用したソフト

 今まで12F683を使ったスイッチング電源では全て同じソフトを使い回しています。
 従って、他のページを参照してください。

T−50#3入出力特性(既出:巻数100:100)

T−50#3入出力特性  
 

FT−50#43入出力特性(巻数28:28)

FT−50#43入出力特性  
 

FT−50#61入出力特性(巻数52:52)

FT−50#61入出力特性  
 

入力電流の比較

入力電流の比較

 上のグラフは入力電圧を変化させた時の入力電流を示しています。
 カーボニル鉄のT−50が入力電流が少なく、フェライトコアより優れています。

出力電圧の比較

出力電圧の比較

 回路的に定電圧動作をしているので当然ながら差はありません。
 あるとすれば、低電圧側の立ち上がりの位置ですが、たまたま良く一致しています。

効率の比較

効率の比較

 T−50#3が明らかに優れています。
 続いてFT−50#43、最後はFT−50#61となります。

まとめ

 冒頭の理由でコアを変えようとしたのですが、最初に使ったコアが結果的に優秀でした。
 ただ、#43の場合は効率が落ちるものの、安価で巻数が少なくて済むということで、場合によっては使えるかも しれません。
 #61は#43より効率が落ち、巻数が増えるのではメリットはありません。
 ただし、コアは種類が多く、適材適所ですので、今回の用途に合わなかったというだけです。
 今回、トランスの巻き易さの理由で「9V電池→5V」の電源を使いましたが、他の電源でも同様の結果になるはずです。


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