写真はセイコーインスツルメンツのグラフィック液晶モジュールG121300N000で、128×32ドットです。
面倒な事は、バイアス用に負電圧電源が必要な事です。
この液晶に限らず、バイアス電源を必要とする液晶表示器は沢山あります。
しかし、新しい品種、例えば秋月で扱っている128×64ドットのグラフィック液晶などは内部にインバータが
組み込まれていて、外部にバイアス電源を必要としないものもあります。
今回は、手持ちの表示器の為にバイアス電源を考えてみました。
まず、電圧を個々の表示器のバラツキに合わせて調整しなくてはなりません。
データシートでは−3V〜−12Vの広い範囲が示されていましたが、実際には−8V程度だと思われます。
手持ちのサンプルでは、コントラスト調整後の電圧が−7.8Vでした。
従って、−5V〜−10V程度に調整出来れば十分ではないかと想像します。
次に電流ですが、データシートではコントローラ(5V)が最大4mA、バイアスが最大4Ma(?)となっています。
Maはマイクロアンペアであると判断しました。
回路にオペアンプ用の−12Vか−15Vが存在すれば10KΩ〜30KΩのボリュームで分圧して電圧調整が
可能であると思います。
この電圧が存在しないときは5Vからバイアス電源を作らなければなりません。
極性反転型のインバータは各社にいろいろな品種がありますが、比較的、安くて入手性が良いというとMC34063/A
があります。
古くからあるICですが、国産でもJRCのNJM2360がセカンドソースとして入手出来ます。
昇圧、降圧、昇降圧、極性反転に使える便利なICです。
ただし、今回の用途の様に微少電流出力の場合、効率は、かなり悪くなります。
試しに回路を組んでみました。
回路図
出力電圧を9Vに設定し、負荷オープンの時の入力電流が約10mA、10KΩの負荷抵抗を接続した時の入力電流が約13mA
でした。
インダクタは市販のの1mH2.6Ωのマイクロインダクタを2個直列にしています。
1mHでは、やや入力電流が増えるので、2.2mH以上の物が欲しかったのですが、手持ちに無かったので
直列にしました。
そういう訳で、2mH5.2Ωのインダクタとなります。
直流抵抗は小さい程良いのですが、寸法が大きくなります。
この電源は数ミリアンペアしか流せません。
電流を多く流したい場合、インダクタの値は小さくなります。
データシートに定数の決め方が提示されているので参考にしてください。
3.3mH、4.7mHあたりの物を試せば、若干、入力電流を減らせるかもしれません。(大差は無いと思います。)
ダイオードは最初、信号用のショットキダイオードを使ったのですが、整流用の1Aの方がVFが小さいようですので
交換しました。
寸法的にも値段的にも大差無いと思います。
出力電流は数ミリアンペアですが、ダイオードには4〜5倍のピーク電流が流れます。
MC34063が無いと仮定し、タイマーICのLMC555で回路を組んでみました。
回路図
発振回路を制御していない為、無負荷でも25mA程度、消費してしまいました。
電流を減らすには、やはり、発振周波数とコイルのインダクタンスを合わせ込む必要があります。
この回路もLMC555で発振をしていますが、コンパレータを使って発振をコントロールしています。
LMC555のデータシートにあった、デューティー50%の発振回路の接続になっています。
LM393は入力段がPNPトランジスタで、0Vより若干、下がった電圧を比較出来るところがミソです。
出力トランジスタがNPNトランジスタの場合、発振を止める為にLMC555のRESET端子が使えますが、
今回はPNPトランジスタの為、内部のフリップフロップを強制的にSETして発振を止めています。
この回路で、出力電圧を可変出来ることを確認しました。
回路図
無負荷での消費電流は11mAとなり、かなり好転しました。
高価な部品は無いですが、部品点数はかなり増えてしまいました。
出力がトランジスタの為、品種の選定が重要になります。
発振周波数は3.3KHz程度ですが、トランジスタのスイッチング速度の為、あまり高くできません。
発振周波数、コイルのインダクタンスを吟味する必要があります。
回路が、がらりと変わり、ヒステリシスインバータで発振させ、出力を3倍圧整流しています。
使用部品は74HC14が1個ですが、ダイオードとコンデンサーが増えました。
出力電圧は簡単にボリュームで調整しています。
回路図
回路図では、負荷に10KΩのボリュームが入っていますが、この状態で−11.6Vまで設定出来ます。
この時の消費電流は約6mAで、納得出来る値です。
ボリュームを外して、代わりに4.7KΩの抵抗を付けたときの出力電圧は10.8Vで消費電流は9mAでした。
3.3KΩでは10.1Vで12mA、1Kでは6.97Vで23mAでした。
整流用のダイオードは一般的なシリコンダイオードを使いましたが、1SS293のようなショットキダイオード
を使えば、さらに1V程度、出力電圧を下げる(−の値が大きくなる)ことができるはずです。
電池1本でLEDを点灯したりするときに使われているブロッキング発振回路です。
回路図
回路定数やトランジスタの特性で動作点が変わるので効率良く動作させるにはカットアンドトライが必要です。
トランスはFT−50#43コアに0.26mmのUEWを22回/22回(バイファイラ巻き)巻きました。
コアは一回り小さいものを使いたかったのですが、手持ちになかった為、このサイズを使いました。
回路図
何という回路か知りませんがHFEが2つのトランジスタの積になるので、大きなゲインがあります。
そのため回路図の浅いバイアス、浅いカップリングでも強烈に発振します。
ただし、トランジスタの特性、周囲温度で動作点が大きく変わりそうです。
別のページ「小電流負電源」でPICを使った回路を紹介しています。
最近、秋月で扱っているグラフィック液晶はバイアス用のインバータを内蔵しているので便利になりました。
今回のようにバイアス電源を考えるのが馬鹿らしくなってきます。
しかし、手持ちにG121300N000が沢山あるので、今後も、これを使っていかなければならないのです。