面白そうな電源ICがあると試してみたくなります。
今回はリニアテクノロジーのLTC3245です。
3.3V又は5Vの固定電圧、又は可変電圧が選定出来、昇降圧のチャージポンプというユニークな電源です。
とりあえず、電池4本で5Vを出力する電源を想定してみました。
新品のアルカリ電池は1.5V以上の電圧ですが、直ぐに1.4V程度に下がり、この後なだらかに下降し最終的に0.9V
で寿命が終了します。
寿命の中間点では1.2V程度です。
仮に1.25Vとすれば4本で5Vです。
5V入力で5Vを出力するのは結構、面倒な話です。
小出力の電源ではフライバックトランスを使うのが比較的簡単ではないかと思います。
LTC3245はコイルを使わないで昇降圧が実現出来るというので購入してみました。
チップは0.65mmピッチの12PパッケージですのでDIP変換基板に装着しました。
下に実験回路を示します。
コンデンサーの容量はメーカー指定の値ですが、手持ちの1uFの積層セラミックコンデンサーは実測値0.82uF、
10uFに至っては6.1uFしかありませんでした。
と言うことで、若干、容量不足の部品が付いています。
負荷抵抗は100Ωにしたので、50mA程度の負荷電流が流れるはずです。
電源は5V固定の高効率モードで結線されています。
高効率モードと低雑音モードが選定出来るようになっていますので試してみましたが大きな差はありませんでした。
負荷抵抗を固定し、入力電圧を変化させたデータを下に示します。
グラフを見ると2つの切り換えポイントと3つの動作モードがあることが判ります。
各動作モードにおいては電流値は一定であることが判ります。
切り換え点は電圧を上げていった時の位置です。
下がるときは少し低い位置になります。(ヒステリシスがある。)
コイルを使ったスイッチング電源では電圧が上がるほど電流は下がるのですが....
効率を考えた時、嫌な予感がします。
入力電圧は38Vまで掛けられるとの話ですが手持ちの親電源が0〜18Vですので、18V程度しか掛けていません。
さらに電圧を上げた場合、入力電流は同じで負荷電圧は僅かに上昇する展開が予想されます。
データシートで動作が1:2,1:1,2:1の3つのモードに切り替わると説明されているので18V以上の切り換え
ポイントは無いはずです。
入力38Vでは効率は30%以下になると予想します。
入力電圧2.8Vから18Vで負荷電圧が約0.2V上昇しました。
変化が小さいと判断するか大きいと判断するかは用途によって異なると思います。
昇圧動作の時、やや変化が大きく、それ以外では比較的安定しています。
実験中に予想できたのですが衝撃的なグラフです。
各動作モードで入力電流が一定ですので電圧が高くなる程、効率は下がります。
切り換えポイントの少し上で使えば80%以上の効率が得られますが、少し下がると50%以下になるということです。
メーカーのデータシートで12V入力5V出力で効率81%と謳っていますが、実験データも81%です。
有る意味、再現性が良いといえます。
メーカーも嘘は言っていないので「やられた感」が強いです。
アルカリ電池4本を使った場合、5.3V近辺を境にして一気に87%から47%に落ちます。
5.3Vといえば1本あたり1.3V強で寿命の初期−中期です。
もし、ニッケル水素電池を4本使った場合、最初から最後まで50%程度の効率で勝負しなければなりません。
電池3本であれば比較的、効率の良い範囲で使えると思います。
電池4本で5Vを得るという目的には合わないと思いました。
何らかの目的で設計されたICであると思いますので有効な使い方はあると思いますが今のところ思い当たりません。
変換基板が4枚1セットでしたので、チップを4個購入しましたが結構、高価な石だったので元を取らなければなりません。
4個分の変換基板への半田付けは疲れました。