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 100円充電器

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 100円ショップで充電器を見つける

100円充電器

 電子利用できる品物を探しに時々、100円ショップに行きます。
 プラケースなどは電気パーツとして売られているものより丈夫なものがあります。
 先日、100円ショップで充電器が売られているのを発見しました。
 単3又は単4電池2本用で外装や電池ケースの出来が非常に良く、重量感もあって100円とは信じられません。
 ただ、使用出来るかは不明なので、1台購入して分解してみることにしました。
 家に帰り、まずインターネットで「100円充電器」で検索したところ、多数のヒットがありました。
 既に以前から、この充電器は有名だったようで、私が知らなかっただけのようです。
 意見は様々でで、100円という金額や、一般的な充電器で不良品と判断された電池でも充電できたという事に好意的な人も いれば、回路を調べて、使えないと言う人もいました。
 回路を調べてUPしている人が何人もいましたが、非常に簡単な回路で、この割り切り方は参考になります。
 回路は後で、自分でも確認してみることにします。
 充電電流が少ないので、時間が掛かるのは我慢するとしても、問題は、満充電で電流が止まらないことです。
 充電を開始して20時間後にコンセントから抜くという作業は簡単なようで大変です。
 電池の種類や状態によって充電時間は異なるので、適正時間を人間が判断するのは至難の技です。
 過充電で電池を痛めるか、充電不足のどちらかになります。
 充電器として使いたくないというのが感想です。


 分解してみる

100円充電器を分解

 これが100円充電器の全部品で、非常に簡素です。
 この中で利用できそうなのは電源トランスです。
 電池ケースの出来は良かったのですが、利用するには筐体ごと使わなければなりません。
 足の短い抵抗、ダイオード、LEDは使えないことはありませんが、面倒です。
 持ったときの重量感はトランスのせいでした。

部品取りしたトランス

 トランスを4台分確保しました。
 1個だけ巻き線に巻いたテープの色が紅白で綺麗です。
 ただ、この個体はリード線の処理(又は材質)が悪く根元で切れそうでしたのでエポキシ接着剤で補強しました。


 基板半田面

基板半田面

 製品としての見栄えは良かったのですが、基板の半田面を見ると非常に雑です。
 人のことは言えませんが、私より、もっと下手です。
 余程、コストの低い労働力を使用したと思われます。


 結線図

結線図

 上図の通り非常に簡単な結線図です。
 ダイオードは1Aクラスの一般的なシリコンダイオードです。


シミュレーション回路

シミュレーション回路

 シミュレーションというと大袈裟ですが、簡単に動作の確認をしてみます。
 トランスのモデルを作るには巻き線インピーダンスの周波数特性をプロットしなければならず面倒です。
 今回はインチキをしました。
 AC100V(実測102.5V)を一次巻き線に加え二次巻き線を解放して電圧を測定した時4.71Vでした。
 そこでLCメーターで二次巻き線インダクタンスを測定し、上記の特性になるように一次巻き線インダクタンスを合わせ込み ました。
 もともとインチキな方法ですので、一次巻き線までLCメーターで一発で決めてしまうと、つじつまが合わなくなります。
 上図でV1、V2は電池の代わりの電圧源で、放電しきった電圧0.7Vを入れてあります。
 充電末期には1.5Vを越えます。
 内部抵抗として0.2Ωを気分的に付け加えてあります。(R6,R7)
 V3はAC100Vですが、実効値では無く、ピーク値を入力しなければなりません。
 ここでは実測値102.5V×1.414=145Vを入力してあります。
 R1は一次巻き線の直流抵抗の実測値です。
 二次巻き線の直流抵抗の実測値は4.5Ωでしたので、2分割してR2、R3に入れています。
 纏めて片側に入れても良いのですが二次電圧波形がグラウンドからオフセットされて表示されます。
(特に問題は無いですが)
 R4,R5は実装されている2.7Ωです。
 LEDは無視しています。
 尚、スパイスではグラウンド基準で計算されますので回路がグラウンドから浮いているとエラーになります。
 一次巻き線と二次巻き線は本来は絶縁されているのですが、上記の理由で両巻き線共、グラウンドに落ちています。
 この回路では二次巻き線側の回路のどこか1点を直接、グラウンドに落としても問題ないのですが、高抵抗R8を介して 接地しています。
 抵抗値は大きい程、絶縁のイメージが高くなるのですが、計算の際に負担となり、GΩレベルにすると実行時エラーが 発生しました。
 R8は実際には存在しない抵抗です。
 R8には電流が流れず、電圧は発生しないのですが、uVオーダーの雑音電圧は埋め込まれています。
 トランスの特性を測定してないので漏れインダクタンスが判らず、結合係数は一般的な0.999を入れています。
 周波数が60H固定で、低いので巻き線の分布容量は無視しています。
 以下の波形は実測ではなく、シミュレーション上の話だという事を注意してください。
 実際との差は多少あるかもしれません。


AC100V波形

AC100V波形

 実効値102.5Vをピーク値に換算して入力してあります。


2次巻き線電圧(無負荷)

2次巻き線電圧(無負荷)

 無負荷の時の二次巻き線の電圧波形です。
 実効値4.71Vになるように合わせ込んだので、当然、その電圧が出ています。
 無負荷というのは電池を外した状態です。
 スパイスでは回路は閉じていなければエラーになるので、例えば2.7Ωの抵抗値を一時的に2.7GΩに変えます。
 こうすれば限りなく負荷解放に近くなります。


2次巻き線電圧(充電初期)

2次巻き線電圧(充電初期)

 充電初期は負荷が重くなります。
 抵抗値を本来の2.7Ωに戻し、電圧源の電圧を0.7Vに設定しました。
 放電した電池の電圧が0.7Vだと仮定しています。
 実際には電池電圧は短時間の充電で1.4V程度までに上昇します。
 この電圧から充電完了時間に達するまでに時間を要します。
 巻き線電圧は、かなり下がっています。
 トランスのレギュレーションはかなり悪いですが、この方が安全とも言えます。
 このシミュレーションは電池2本を装着しています。  1本の状態にするには片方の2.7Ωを2.7GΩにすれば良く、二次巻き線電圧は上下非対称のものとなります。

充電電流(充電初期)

2次巻き線電流(充電初期ピーク値)

2次巻き線電流(充電初期)

 上が充電電流のピーク値、下が平均値です。
 135mA程度の電流が流れています。
 ピーク電流は500mA位です。
 尚、シミュレーション上では部品を壊す心配がないので、電池端子をショートするようなことも出来ます。
 電圧源の電圧を0Vに設定し、内部抵抗を短絡してみます。
 この場合でも電流のピーク値は600mA以下、平均値は170mA程度でした。
 ただし、シミュレーションでは発熱、破損等は判りません。
 実物では試してありません。


2次巻き線電圧(充電末期)

2次巻き線電圧(充電末期)

 充電末期には電池電圧が上昇し、1.55V程度になるので、この値を電圧源に入れます。
 電池電圧は取り外すとすぐに1.45V位に下がり、少し放置すると1.38V位に落ち着きます。
 充電時の内部抵抗も変化すると思いますが、知識が無いので、そのままです。
 充電電流が減るので二次巻き線電圧は少し回復しています。

充電電流(充電末期)

2次巻き線電流(充電末期ピーク値)

2次巻き線電流(充電初期平均値)

 満充電になっても、まだ100mA以上流れています。
 このまま充電を続けるのは怖い気がします。


市販充電器で充電出来ない電池が充電出来る件

 ネットでの書き込みで
・ メーカー製の充電器で充電出来なかった電池が充電出来た。
・ 使えなかった電池が復活した。
 と言うのがありました。
 市販の充電器は充電開始時に電池のチェックをし、長期間放置した電池や劣化した電池に対してはスタート しないと思われます。
 100円充電器ではチェック機能が無いので、とりあえず充電してしまいます。
 以前、マキシムのの充電器用ICを使用した充電器を製作した時、長期間放置した電池が充電出来ないという事を 体験しました。
 この時は何回かスタートを繰り返したところ充電を開始しました。
 私は充電器を何台か製作しましたが、最初、短時間、無条件で充電した後で、電池のチェックをするようにしています。
 市販の正規の充電器で充電器出来ないときは100円充電器で1〜2分充電した後、正規の充電器に戻せばスタートするかも しれません。


 トランスを利用する

トランス

 私は100円充電器を使用する気はありませんが、トランス目当てで、店に残っていた充電器3個を買い占めました。
 最初に買った1個と合わせて4個のトランスを確保しました。
 後日、店に行くと沢山の充電器が補充されていました。
 上の写真は左が100円充電器のトランスで右側は手持ちのトランスでトヨズミのHP−510です。
 両者は鉄心の寸法が同じです。
 HP510の二次巻き線は10V、0.1Aでセンタータップがあります。(5V−0−5V)
 一次巻き線の直流抵抗はHP−510の方が小さく、能力も多少、高そうですが400円以上します。
 両者はコイルの巻き方が異なっています。
 100円充電器のトランスは結合係数が小さそうです。


 整流してみる

整流回路

 部品取りしたトランスの使い道を考えてみました。
 まず整流回路で負荷抵抗を変えてトランスのレギュレーションを見てみました。
 少しでも結果を良くする為に整流ダイオードをショットキタイプのブリッジにしました。
 ショットキダイオードは耐圧の大きい物を使うとVFが大きくなるので、必要最小限のものにします。
 電流値は規格ギリギリのものを使うとVFが大きくなります。
 以下に負荷特性のデータとグラフを示します。
 レギュレーションは悪く、電流が増すとリップルも大きくなります。
 1000uFを2200uFにすればリップルは僅かに改善されるかもしれません。
 トランスが貧弱ですので、さらに大容量にしてもレギュレーションは良くならないでしょう。

整流回路データ

整流回路グラフ

 3.3V定電圧回路

3.3V定電圧回路

整流回路データ

整流回路グラフ

 3.3Vの電源として流せる電流は100mA以下です。
 コンデンサを2200uFにすれば僅かに改善されるかもしれません。


 5V定電圧回路

5V定電圧回路

整流回路データ

整流回路グラフ

 そのままでは入力電圧が不足するので倍電圧整流としました。
 5V電源として流せる電流は50mA以下です。
 電圧が少し低いのは3端子レギュレータのバラツキで回路やトランスのせいではありません。
 整流ダイオードは部品取りしたダイオードを使っていますが、ショットキの1S4等にすれば特性が改善されると思います。
 LM2931よりはLP2950を使いたかったのですが、多量に手持ちがあるLM2931を使いました。

 <追補>
 LM2931は、この実験では難なく使えましたが、後日、実際にこの回路を機器に組み込んだとき、立ち上がらない事があ りました。
 LM2931はドロップアウト電圧付近で消費電流が急増する領域があります。
 電源オンの時は領域を通過するのですが、トランスが貧弱な為、平滑コンデンサーに充電するのに手一杯で、電流を供給出来ず、  うまく立ち上がれないと想像します。
 LP2950に交換したところ問題は解消しました。
 一般的な78L05は立ち上がりは問題無いのですが、入出力間に最低1.6V程度必要となるので、負荷を取ると電圧が 落ちてしまいます。
 LM2931はサージに強いとか逆電圧で壊れないとか、特徴のある素子ですが、今回は不向きでした。
 また、LM2931はトランスで変圧する回路では無く、コンデンサで電圧を落とす回路に接続した場合も立ち上がり ません。

 3V100mA 定電圧電源

 此処までの内容は100円充電器に関する実験的なものでしたが、これはトランスを実際に電源に使用した例です。
 今までの実験で出力3.3Vで100mAが限界であることが判りました。
 ここでは定格を3V100mAとし、電流に余裕を持たせました。
 3Vというのは単3電池2本に対応したAC電源をイメージしています。
 生産性(作業効率)を上げる為とトランス特性のバラツキを確認する為に2組を同時に作成しました。

製作した電源


 回路図

電源回路図

 回路図で1Aのヒューズはトランスの一次巻き線の保護には役立ちません。
 巻き線に過電流が流れて1Aのフューズが切れる前に一次巻き線は焼損している筈です。
 実際にはトランスのレギュレーションが非常に悪いので一次巻き線に焼損電流が流れる事は無いと思います。
 その意味ではヒューズは不用で、製品としての充電器にもヒューズは付いていません。
 試験中の短絡等の事故からACラインを保護する為にヒューズを入れる事が個人的なルールになっています。


 1号機のデータ

1号機データ

 負荷電流110mA辺りから電圧が下がっています。
 無負荷の時、平滑コンデンサー2200uFは二次巻き線のピーク電圧6.3V程度に充電されます。
 負荷抵抗29.7Ωでは平滑コンデンサーの電圧は3.4V程度まで下がります。
 負荷抵抗21.9Ωでは2.9Vと3V以下になります。


 1号機出力のリップルノイズ

リップルノイズ

 負荷抵抗29.7Ωの時の出力電圧を拡大したものです。(AC結合)
 リップルは抑えられていてノイズレベルも小さいと思います。


 2号機のデータ

2号機データ

 トランスはリード線の引き出し方が異なり若干見た目の違いがありますが試験結果は殆ど同じでした。


 2号機出力のリップルノイズ

リップルノイズ

 こちらも1号機と殆ど同じです。


 製作結果

 負荷抵抗を21.9Ωにして連続通電しましたが素子や巻き線に発熱はありませんでした。
 制御ICは負荷電流150mA程度で保護回路が働きフの字型に電流が垂下するはずですが、そこまで試していません。
 3V100mAのAC電源としては実用的に使えると思います。


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