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 8球FMスーパー

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 8球FMスーパーの製作

 前回、電池管7球によるFMスーパーを製作し、そこそこの成果が出ました。
 ただし、中間周波数を1.7MHzに設定したので実際には無いイメージの周波数を受信してしまいます。
 局数の少ない当地では大きな問題はありませんが、10.7MHzの中間周波数を試してみたくなりました。
 電池管では能力的に大変ですので今回は傍熱管を使用しました。
 ただし、B電圧は40Vに設定しました。
 理由は感電したくないこともありますが手持ちに高耐圧のコンデンサーが無いことがあります。
 50V耐圧のコンデンサーなら各種、各容量のものが揃っています。
 高耐圧のコンデンサーは高価で寸法も大きくなります。
 入手先も限定され、値を変更する場合も、その都度注文しなければなりません。
 抵抗も1/4Wで済みますしサイズが小さくて済みます。
 配線ミスや調整中のトラブルによるダメージも小さくて済みます。
 しかしながら低い電圧で動作する傍熱管は少なく、あっても能力が落ちます。
 もう一つ、10.7MHzの真空管用IFTが入手出来ないという問題があります。
 今回、インピーダンスの低いトランジスタ用の10mm角のIFTを無改造で使用しました。
 これも不安材料の一つです。
 真空管でFMラジオを製作するのはベテランでも大変だと思います。
 低いB電圧という制約の中で経験の浅い人間がチャレンジするのでハードルは高くなります。
 実際、完成までには長い時間が掛かりました。


 使用真空管

使用真空管

 以前、FM超再生ラジオを製作したとき使用した6AJ5が低い電圧で良好な動作をしたので、これを使うことにしました。
 ただし、6AJ5は低い電圧でも電流が流れやすいのでB電流を節約するために6AK5を併用しました。
 当初、中間周波増幅はリモートカットオフの6BJ6を使用する予定でしたがゲインが不足した為6AK5に変更しました。
 現在、高周波増幅6AJ5、局発6AK5、混合6AJ5、中間周波増幅に6AK5を3本を使用しています。
 手持ちの球と電源に余裕があれば全部6AJ5でも良いと思います。
 低周波増幅はプレート負荷に大きな抵抗値を使っているのでプレート電流が小さな6BH6を使いました。
 例えば6BJ6に差し替えると飽和してしまいます。
 出力管は6AK6です。
 以前、中波の3球レフレックススーパーに使用した時は30VのB電圧で十分な音量でした。
 その時はカソードを接地して使いました。
 30VのB電圧では暴走することも無いしトランス負荷なので飽和することもありません。
 今回は40Vと若干上がったので470Ωのカソード抵抗を入れたのですが無くても良かったかもしれません。


 予備実験

 回路図はセクション毎に実験回路を組み動作を確認しながら作成しました。
 高周波増幅は予想通りゲインが余り得られず周波数特性が平坦で無いことが判りました。
 プレート電流を多めに流し負荷インダクタンスの値を追い込む事で何とかすることにしました。
 最適負荷は予想以上に小さく1uH近辺でした。
 局部発振はコイルにトロイダルコアが使えたので受信コイルとの干渉が緩和され実装するときに有利です。
 発振周波数が76MHz−10.7MHz〜95MHz−10.7MHzまでキッチリ合わせる定数も判りました。
 ただし、実際の配線では分布容量が多少、変化するのでトリマの再調整が必要です。
 ミキサーは実際に配線しないと評価が困難ですし回路自体は中間周波増幅と同じですので実験を省略しました。

中間周波増幅実験回路
 上の写真は中間周波増幅の実験回路です。
 IFTはトランジスタ用の10mm角のものです。
 最初、6BJ6を用意したのですが6AJ5に差し替えるとゲインが大きく上がります。
 6AJ5と6AK5では差が無かったのでプレート電流の小さい6AK5にしました。
 検波ダイオードを試してみました。  1N34A、1N60、1N60P、ロシア製のD311、D311Aの5種類をゲルマラジオにしてみました。
 この中では1N34Aが一番良いような気がしました。
 1N34Aは何十年も前に購入したジャンク品でホーミング加工されたものが大量に有りました。
 他の4種類は最近購入したものです。
 低周波増幅は1KHzの正弦波を入力し出力波形をオシロで観察し最大出力やゲインを確認しました。
 さらにゲルマラジオの検波出力を入力し出力をセラミックイヤホンで聴いてみました。
 出力管はスピーカーを接続してみました。
 プレート電流が小さかったので出力トランスは20K:8ΩのBT−OUT−1H(ラジオ少年製)にしました。
 以上の予備実験の結果、回路図は短時間で書けました。


 回路図1(高周波増幅、局部発振、ミキサー)

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回路図1

 ウエブページで紹介されている管球式FMラジオの記事は多くないのですが、さらに、その多くが高周波増幅無しで 入力信号に直接、局発信号を加えているようです。
 高周波増幅が難しいか効果が少なくメリットが少ないのかもしれません。
 私も以前に製作した電池管FMラジオでは高周波増幅を省きました。
 ただし、トラッキング調整で同調周波数と局発周波数が干渉しやすいと感じました。
 つまり、同調周波数の調整の調整をすると局発周波数も動いてしまいます。
 そこで入力信号をバッファリングしてから局発信号を加えようとした訳です。
 ただ、どのような回路が良いのか判らず他に良い回路があるのかもしれません。
 プレート電流を調整するためスクリーン電圧をボリュームで変化させていますが最大に固定しても良いようです。
 電波が強い地域では絞る必要があるかもしれません。
 6AJ5は低い電圧でもプレート電流が流れ易くボリューム最大で8mA近く流れます。
 6AK5は400MHzまで使え、比較的低い電圧でも動作するので簡単な発振回路で65.3MHz〜84.3MHを安定に 動作します。
 6AJ5でも動作しますが消費電流が増えます。
 バリコンはAM2連、FM3連のジャンク品を使いましたがFM2連しか使っていません。
 ミキサーも6AK5で十分ですが中間周波数増幅で6AK5を3本使うことになったので手持ち本数の都合で6AJ5に なりました。


 回路図2(中間周波増幅、検波、低周波増幅、電力増幅)

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回路図2

 前述したように中間周波数増幅は最初6BJ6で回路図を書いたのですがゲイン不足で6AK5に変更しました。
 球の差し替えで済むので簡単です。
 IFTは単同調のトランジスタ用です。
 二次巻き線は端子は出ているのですが巻かれていませんでした。
 10mm角で場所を取らないことがメリットですがゲインは稼げないと思います。
 検波はスロープ検波です。
 FM検波の知識、経験が無いのが理由です。
 スロープ検波は電池管FMスーパーの時も使いましたがAMスーパー程度の音質は出せます。
 ラジオとしては、これで十分です。
 AGCの回路定数は調整時に決定します。


 電源回路

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電源回路図

 電源は6.3V2Aのヒータートランスで全て賄います。
 ヒーターはDC6Vの直流点火、B電圧はDC6V入力、40V25mA出力のDC/DCコンバータで発生します。
 負電圧のバイアス用電源も用意しましたが使用していません。
 その他、電源表示灯に供給します。
 真空管の配線は全て1球毎に用意した44mm×44mmの基板上で行います。
 電源(ヒーター、B電源)は1球毎に個別に引き回したので配線数が増えました。
 合計で6V1.6A程度になります。
 仮に単1電池4本直列にして供給したら連続3〜4時間程度の使用時間だと思います。
 AC6.3Vを整流すると無負荷の時は正弦波ピーク電圧の9V程度に充電されます。
 さらにトランスのレギュレーションの関係でもう少し上がります。
 定格電流を流すと整流電圧は6.3V程度になり、さらにダイオードのVFで若干下がります。
 整流後に低損失のレギュレータに通しますが出力電圧+0.5V程度の整流電圧が必要です。
 1.6Aは定格電流以下ですが若干、電圧不足になる可能性があるのでトランス一次巻き線のタップを90Vに してあります。
 100Vタップのままで出力電圧を若干低く(例えば5.7V程度に)設定しても問題ないと思います。
 レギュレータNJM2397は最大電流1.5A(2.0Aで遮断)ですので1個では電流不足です。
 2個使用し、ヒーター電圧を2系統に分割します。
 2個のレギュレータには各々1W程度の損失が発生するので小型の放熱器を付けました。
 下の写真は製作した電源基板です。
 製作した電源基板


 DC/DCコンバータ

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 回路図

 B電圧はコンデンサー耐圧の関係で40Vにしました。
 B電流は25mAを予定しています。
 トランスのAC40V〜50V、50mA〜100mA程度を整流し定電圧回路を通して40Vを発生しても良いのですが 手持ちに適当なトランスが無かったし最近では通販でも、この手のトランスの入手が難しくなっています。
 B電圧が40Vと低いのでDC/DCコンバータにしました。
 トランスを使うより小型軽量になります。
 私はこの手のDC/DCコンバータを何十個も製作しているのでノイズや効率の面も不安は有りません。
 入力のFETは実験中の逆接続から保護する物で10mV程度の挿入損失です。
 逆耐電圧はFETのゲート耐圧で−20Vです。
 一旦組み込まれてしまえば不用ですが付けたままでも支障ありません。
 負荷開放時には電圧が上昇してしまうので定電圧ダイオードで吸収しています。
 最初24Vのものを2本直列にしたのですがレギュレーションが悪く50V近くに達したので15Vのものを3本直列に 追加してあります。
 短絡保護には5.6mAの定電流ダイオードを6本並列にしていますが33.6mA流れる訳ではありません。
 出力短絡時には全出力電圧がダイオードに加わるので発熱し流れる電流を減らすように制御されます。
 5.6mAのダイオードは順方向100Vまでの電圧に耐えます。
 このシリーズの定電流ダイオードでは100Vに耐える最大の電流値のものが5.6mAです。
 これ以上の電流値のものは耐圧が30Vになり使えません。
 発振トランスの二次巻き線を多めに巻き、少しずつ戻しながら負荷電圧を確認します。
 実際には実測1.58KΩの抵抗に41.5Vの電圧を発生した時点で終了しました。
 この時の負荷電流は26.3mAになります。

コレクタ波形0.1uF コレクタ波形1uF
コレクタ波形0.1uFコレクタ波形1uF
 上の写真は両コレクタの波形を重ねて表示しています。
 波形の切り替わり時のオーバーシュートがノイズのエネルギーとなって空中に伝搬します。
 両コレクタ間にコンデンサーを入れ波形を鈍らせています。
 最初の写真は0.1uFを入れたものです。
 オーバーシュートは殆ど取れて、これでも十分です。
 効率は75%程度です。
 二番目の写真は1uFを入れたものです。
 オーバーシュートはさらに小さくなりが効率は65%に低下しました。
 波形の重なり部分の隙間が増えるので電源ラインのリップルノイズは増えます。
 周波数が6.6KHzと高いのでリップルは簡単に取れます。
 コンデンサーを取り除いた波形を撮り忘れましたがコレクタ波形は隙間無く重なります。
 0.1uFでも1uFでも良いと思いますが現状は1uFが入っています。
製作したコンバータ シールド箱に収納
製作したコンバータシールド箱に収納タ
 製作したコンバータは厚紙で作った箱に入れ銅テープでシールドします。
 出力は真空管1本毎に接続します。


 シャーシの製作

 シャーシは1mm厚のアルミ板と断面が10mm×10mm×1.2mmのアルミアングルを使ってビス止めしました。
 ウラ蓋のみ0.5mm厚のアルミ板です。
 大量のビス、ナットを消費しました。
 ホームセンターで300mm×200mmのアルミ板が売られていたので、これをそのまま上板、ウラ蓋にしました。
 結構、大きな寸法になり、シャーシの材料費だけで3000円を超えたと思います。
 老眼の為、正確なけがき、穴明けが困難ですので全て現物合わせで加工しました。
 板とアングルを厚手のアルミテープで仮止めし共に穴明けしました。
 ただし、どの位置か、表裏かを正確に覚えておく必要があります。
 シャーシの加工には大きな時間を必要としました。


配線

 まず、綺麗な最終回路図を用意します。
 手書きのメモ程度の回路図だと間違いが多くなります。
 前面銅張りの基板を44mm×44mmにカットし真空管の本数分用意します。
 中央にソケットの穴を開けシャーシに共締めします。
 細かく切った基板のランドを瞬間接着剤で貼り付け配線します。
 基板の材質は加工の楽な紙フェノールにしました。


 調整

 調整前に配線と回路図を比較します。
 多くの場合、間違いが見つかります。
 電源は組み込み前に動作が確認されています。
 まず真空管を装着しないで電源を入れます。
 各球は個別にB電源とヒーター電源が配線されているので電圧を確認します。
 ヒーターは全て6V、B電圧は無負荷では47V位になっています。
 次に真空管を装着し電源を入れます。
 ヒーターの点灯を確認し電圧を確認します。
 ヒーター電圧はレギュレータ出力ですので6Vのままです。
 B電圧は40V以上であれば良しとします。
 今回は41.9Vになりました。
 ただし、初段の6AJ5はボリュームでカソード電流が大きく変化します。
 この影響でB電圧が若干、変化します。
 出力管以外は電源に1KΩの抵抗が入っているので両端の電圧を計ればカソード電流が判ります。
 初段はボリュームで2mAから8mA程度に変化します。
 6BH6は1mA以下です。
 出力管はカソード抵抗の電圧を計ります。
 3mA位でした。
 他は1.8mA〜3.5mA程度です。
 真空管は年代物で状態の変化もあり、電流値はバラツキます。
 個別の予備実験で回路動作は確認してあるので配線違いが無ければ問題無いはずです。
 後はトラッキング調整とIFTの調整を行い受信してみます。
 AGCの回路定数を変更して最善にします。


 IFT調整

 中波の時はIFT調整用の発振器を製作しましたが今回は市販のSGを使用しました。
 ロッドアンテナ取り付け用のBNCコネクタに10.7MHzの変調波を入力しました。
 音量で判断するよりAGC電圧を測定した方が簡単です。
 この状態で受信し最終的に音質が良くなるように再調整します。


 トラッキング調整

 受信同調範囲と局発周波数範囲を常に差が10.7MHzになるように合わせます。
 受信同調コイルは1.0mm錫メッキ線を12mm径に4回巻いたものです。
 空芯コイルが一番、感度が高い様です。
 よく製作記事でコイルの間隔を伸ばしたり縮めたりして微調整するような記述を見かけますが、これでは調整出来ません。
 コイルを変形させることは再現性がありません。
 微調整はバリコン並列のトリマコンデンサーで行います。
 ただし、バリコン付属のトリマコンデンサーは微調整が出来ず、再現性もありません。
 バリコンの近くにトリマコンデンサーを追加し付属のトリマは固定します。
 固定する容量は状況によりますが設定したら、こちらは動かさず追加のトリマで調整します。
 追加するトリマは羽の重なり具合が目視できるものにします。
 回したら容量が増えるのか減るのか判らないトリマは使い物になりません。
 もう一つ周波数範囲を設定する要素に直列容量があります。
 同一周波数で直列コンデンサーの値が大きくなれば並列トリマの値は減ります。
 この事は変化範囲が大きくなる事を意味します。
 逆に範囲を狭くしたい時は直列コンデンサーの値を小さくします。
 直列コンデンサーは例えば47pF→56pFの交換程度の調整で済みます。
 調整範囲がどうしても取れない時はコイルの巻き数を増やすか減らすことを検討します。
 ディップメーターで測定する時はリンクコイルや真空管を装着した状態で行います。
 これらが装着されていないと共振周波数が高く計測されます。
 局発の共振周波数も調整方法は同じです。
 局発コイルはトロイダルコアに巻いたのでコイルで周波数を微調整する事は出来ません。
 巻き数を増やすか減らすかしか出来ません。
 巻き数が少ないので1巻き変えるとインダクタンスは大きく変わります。
 それでも周波数範囲をキッチリ合わせることが出来ました。
 発振周波数は周波数カウンターで計測しましたがカウンターの入力容量は周波数を下げる要素となるので 例えば計測時にミキサー管を抜いて帳尻を合わせる等の配慮が必要となります。


 真空管の不良

 通電直後に電源が落ちるというトラブルが発生しました。
 過電流でレギュレータ遮断されるようです。
 しばらくすると自動的に復旧するのですが5秒ほどすると再び遮断され、これを繰り返します。
 まず電源を疑いました。
 取り外してチェックしましたが正常に動作します。  念のために何点かの部品を交換しました。
 1日無駄にして6AK5の1本のヒーターがショートする事を発見しました。
 悪質なのは通電前は正常で通電後、数秒でショートするということです。
 電源が落ちてヒーターが冷めれば復帰するので電源も復帰し通電後再びショートを繰り返します。
 今までに使用した真空管は100球程度だと思います。
 ヒーターが断線していた球はありませんが(不注意で断線させた電池管は何本か有ります)短絡していたことは2球目です。
 前回は1T4で、この時は通電前に短絡していました。


製作したラジオ

ラジオ正面 ラジオ上面 シャーシ内部 バリコン周辺
ラジオ正面ラジオ上面シャーシ内部バリコン周辺


結果

 受信範囲は76MHz〜95MHzです。
 66cmのロッドアンテナでローカル局は79.2MHzから93.9MHzまで3局5送信所が受信出来ます。
 ただ、76.5MHzのコミュニティー局は部屋の特定の場所でしか聞こえません。
 聞こえても音が小さく、近くにノートパソコン等のノイズ発生機器があると聞こえなくなります。
 コミュニティー局までの推定距離は13Km〜15Kmで出力は20Wです。
 これを聴くには本格的なアンテナを接続するか高周波部の改良が必要になります。
 1球毎に基板を取り外せるようになっているので部分的な変更は容易です。
 バリコンも延長軸を長くすれば後方に移動が可能です。


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