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 電池管ラジオ製作に関する情報(メモ)

 私が真空管ラジオを作り始めてから今日(2018年1月)で、まだ丸二年経っていないので知ったような事を
書くのは、おこがましいのですが短期間に多数の真空管ラジオを製作し、いろいろ知識を得たので纏めてみようと思います。
 情報というよりメモ書きです。
 時間が経つにつれて考えが変わり、最初と最後で整合性の取れない場合もあるかもしれませんが、その場合後のほうを優先して ください。

 参考文献

電池応用ハンドブック  電源が電池ということで放電特性のグラフを、よく見ます。
 真空管ラジオに関する書籍は欲しいのですが手に入っていません。
 専らネットの情報に頼っています。


真空管に関して

 私が電子工作を始めた時は既にトランジスタ(ゲルマニウム)の時代で真空管は接した事がありませんでした。
 大学の時「電子管工学」という授業があったのですが内容に関しては記憶がありません。
 真空管を使ってみようという気は全然なかったのですがコレクションとして真空管を欲しいとは考えていました。
 欲しかったのは4−65とか4−400という送信管で見た目の美しさが気にいっていました。
 ただ、高価で入手が困難であり、実際の使い道が無いという事で購入をためらっていました。
 購入先に関しては時々インターネットで検索していました。
 その時発見したのが電池管の存在でした。
 子供の頃、真空管ポータブルラジオを分解してしまった経験があり、1T4という真空管の名前は記憶にあったのですが、 それが電池管というものだという認識はありませんでした。
 今まで真空管の回路を組まなかったのはヒーターが何ワット、何十ワットという電力を喰うのが許せなかった為です。
 従って真空管のオーディオアンプには全く興味がありません。
 最初に送信管が欲しいと書いたのは電子部品としての見た目だけの興味からです。
 電池管はヒーター電力が通常の真空管の数十分の一ですので実際に使ってみようと思いました。
 私は真空管ラジオの回路に関して全く知識が無かったので、まず電池管スーパーのキットを2台購入し、製作してみました。
 問題なく動作したので、次はオリジナルのラジオを色々作ってみました。
 真空管を購入するとき「電池で動作が可能である」という条件で購入しています。
 電池管の値段は半導体に比べ、かなり高価ですが一般的なAC電源用の真空管よりは安価です。
 AC電源用の真空管は昔ポピュラーな6.3Vヒーターの平凡な真空管が高価になっているようで、ヒーター電圧や用途が特殊で 馴染みの薄い真空管は安く手に入るようです。
 「真空管ラジオ」というより「電池管ラジオ」というのが、ここでの正しい内容です。
 電池管にもミニチュア管、GT管もあるようですが、私はラグ板を使った配線に慣れていない為、サブミニチュア管を使用する 事が多いです。
 これだとユニバーサル基板を使うことが出来、半導体を使った回路と同じ感覚で配線が可能です。


電池管のバイアス

一般的なバイアス

 上図は電池管では無く一般的なAC電源ラジオのバイアスです。
 AC電源の場合、一般的にB電圧が高く、プレート電流が流れやすいのでコントロールグリッドに負電圧を加えてプレート 電流を抑えます。
 接合型FETやディプレッションタイプのMOSと同じ使い方です。
 カソード抵抗に電流が流れることによる電圧降下をバイアス電圧に利用しています。

 電池管の場合はカソードを直接接地する事が多いのでゼロバイアスで使用されることが殆どです。

ゼロバイアス

 実際にはグリッド抵抗に流れるリーク電流により僅かな負電圧が発生し、負バイアスが発生します。
 これをグリッドリークバイアスと呼ぶ場合もあります。
 ただし、出力管は負バイアスを必要とします。
 出力管というと回路の出力部に使われる真空管という意味と構造的に電力増幅に使われる真空管の種類という二つの意味が あります。
 電力増幅は例えばスピーカー出力等で必要になり、5672等の真空管があります。
 電力増幅用の真空管に対比されるものに電圧増幅用の真空管(例:5678)があります。
 電力を扱う真空管はプレート電流が流れやすくなっていて、この電流を制御する為に負バイアスが必要になります。

一般的な電池管のバイアス

 上図は一般的な電池管出力管のバイアス方法です。
 B電池の−側が接地出来ません。
 回路の全電流がバイアス抵抗RBに流れるので損失があります。
 この抵抗による電圧降下が出力部以外の全回路に影響を与えるので電圧利用率が悪くなります。
 多少の欠点はあるのですが安心して使える方法が他にありません。

固定バイアス

 上図はC電池を用いて負バイアスを与える方法です。
 C電池は殆ど消費せず、バイアス抵抗によるロスも無いので電池を効率的に使えます。
 しかし電池を3系統用意するのが煩わしいのと手違いでC電池が外れたりした場合、プレート電流が流れすぎて定格を 超えてしまう恐れがあります。
 この方法はあまり使われません。

ゼロバイアス

 出力回路で大きな電力を必要としない場合は電圧増幅用の真空管(例:5678)をゼロバイアスで使うことも可能です。
 B電圧が低くてプレート電流があまり流れない場合は電力増幅用の管を使うことも可能です。

電流制限

 ゼロバイアスで電流が流れすぎ、定格を超える場合や、超えなくても電流を減らしたい場合はスクリーングリッドに抵抗を 入れればプレート電流を減らす事が出来ます。
 AC電源を使用する真空管回路では電源リップルの影響を避ける為にスクリーングリッドにCRフィルターを入れる様ですが 電池電源では電源リップルの影響が無いので、この目的では不要です。


よく使う真空管

沢山買った真空管

 写真は上から6418、5678、6088で全てレイセオンのものです。

 6418
 6418は小型の出力管で補聴器用に大量に作られた様でデッドストックが比較的容易に安価に入手出来ます。
 私も10本単位で何回か買ったので大量に手持ちがあります。
 電池管に興味を持った最初の頃、用途、目的も無いのに買い込みました。
 ネットではポータブルアンプやヘッドフォンアンプに使っている記事を沢山、目にしました。
 小型でヒーター電流が10mAと小さく、電池駆動には向いています。
 プレート電圧はせいぜい24Vで、この電圧でもゼロバイアスで使うと最大カソード電流の0.5mAを超えてしまいます。
 スクリーングリッドに抵抗を入れて電流を制限する必要があります。
 省電力ですが、それなりにゲインも小さいので、実用的な機器を作るにはパワー不足です。
 用途はイヤフォン専用の小型ラジオ程度でしょうか。
 最初の頃は小型のラジオに多用していたのですが、最近は、使い道がありません。

 5678
 5678は入手が最も容易な電池管で価格も比較的、安いです。
 その為か、5678を使用した製作記事がネットで沢山見られます。
 私も製作記事に釣られて大人買いしました。
 球は導電塗料が塗られて電磁シールドされています。
 その為、電極が見えず、少し残念です。
 電圧増幅管でゼロバイアスでも電流が、あまり流れません。
 用途は高周波増幅と書かれていますが、せいぜい短波帯です。
 低いプレート電圧では電流があまり流れずゲインが小さいです。
 9V電池2本(18V)、3本(27V)程度の製作記事を見ますが結果は知れています。
 プレート電圧は30V程度は必要です。
 9V電池は寿命末期には6V程度になるので実用的に使うには5本位は必要です。

 6088
 6088はヒーター電流20mA、最大カソード電流1.5mAで非常に使い易い球です。
 最大プレート電圧は65Vですが45V以下ならゼロバイアスで使えます。
 低いプレート電圧でも電流が流れるのでB電圧45V以下、AM周波数、低周波増幅に限定すれば5678より優秀です。
 実際に製作したラジオで5678から置き換えた時、感度と音量が上がりました。
 少し高い周波数では5678より劣ります。
 静特性のグラフを見ると立ち上がりの部分に4極管のような乱れがあり気に入らなかったのですが、このクラスの球が他に 手に入らなかったので入手したところ、結果は上々でした。
 ただ、入手性が悪く、5678よりは高価です。


 ラジオの回路方式

 再生検波
 少ない球数で比較的高いゲインが得られるという事でAC電源のラジオでは昔からよく用いられた様です。
 私も最初、試してみたのですが良い結果は得られませんでした。
 電池管はgmが小さく大きなゲインが得られないため再生が掛かりにくいようです。
 ゲインの大きな真空管では高周波の負荷は抵抗でも良いですが電池管の場合、どうしても高周波チョークを使います。
 ところが小型で特性の良いチョークが得られません。
 この為、周波数による感度の差が大きくなります。
 再生の掛け方は色々な方法があるようですが一長一短らしく、どの方法を選んだらよいか迷います。
 選局も面倒で特にバーアンテナの指向性との相性は悪いです。
 受信範囲も変動してしまうため放送帯域を確保するのは大変です。

 高一
 本来なら2連バリコンで入力側と検波側に同調回路を設けるのですが電池管を用いた小型のラジオでは検波側は非同調の チョークコイルを負荷とすることが多いように思います。
 選択度が少し甘いのですが、ローカル局が少ない地方では特に高い波数の選局が楽で使い易いと思います。
 やはり、負荷の高周波チョークがポイントです。
 インダクタンスには最適値があり、大き過ぎると高い周波数が聞こえなくなり、小さ過ぎると低い周波数が聞こえなく なります。
 ゲインに余裕のあるAC電源用の真空管では入力側でゲイン調整をすれば良いと思いますが電池管では余裕がありません。

 スーパーヘテロダイン
 部品点数が多く調整が少し面倒ですが結果は最も出しやすく、失敗は少ないです。
 キットも含めスーパーへテロダインは今までに8台製作しましたが失敗は1台もありません。
 寸法を大きめに作ると製作も調整も楽ですが、小さく作るのは大変です。
 大きめに作るときは大きなバーアンテナと金属バリコンが使えますが小型の場合、ポリバリコンと小型のバーアンテナを使う ことになり、これらの部品は問題を含んでいます。
 追補>
 その後、スーパーの製作台数が増加し、12台程度になっています。

 レフレックス
 低周波と高周波を1本の真空管で行う方法で、真空管を1本節約出来るのでスペースと消費電流を減らす事が出来ます。
 回路方式というより、他の回路方式と組み合わせて使う方法です。
 例えば、スーパーヘテロダインでは中間周波増幅と低周波増幅を1本の真空管で行います。
 この時、検波された低周波信号とAGC電圧を同時に加えると不安定になり、発振し易くなるようです。
 また、AGC電圧が異常に大きくなり、感度が落ちてしまう場合があります。
 AGCかレフレックスの一方(又は両方)を止めれば調整が楽です。


 ミキサー

 スーパーの周波数変換には1V6や1R5のような周波数変換用の球を使うのが簡単で感度も高いです。
 部品もトランジスタ回路用の物が、そのまま、又は少しの改造で使えます。
 しかしながら電源電圧が24V程度と低い場合、これらの球が使えません。
 この場合、5極管コンバータや他励発振を使うしかありません。
 5極管コンバータに関しては知識、経験に乏しく、常時、周波数カウンターを接続して調整出来るか不明だったので試して いません。
 他励発振に関してはグリッド注入とスクリーン注入を試しています。(他の頁参照)
 グリッド注入は感度が良かったのですが、スクリーン注入は、やや感度が悪かったので高周波増幅をした後で注入しました。
 いずれの場合も実用的に聞く事が出来ました。
 他励発振の球は中波に限れば6418のような非力のもので十分です。
 追補>  この記事をUP後に5極管コンバータを試して好結果を得ています。
 ローカル局を聞く限りでは専用管(1R5、1V6)と感度差はありません。
 詳しくは
 <1.5V単電源4球スーパー> (混合管:1T4−SF)
 <1.5V単電源4球ポータブルスーパー> (混合管:6088)
 の頁を参照してください。


 調整に必要な機材

 *** 調整用電源 ***

調整用電源

 電池管ラジオを調整するには必需品です。
 電池を電源として調整した場合、多くの本数を消費します。
 また、調整中に電圧が下がるので動作条件が変わってしまいます。
 電池は内部抵抗が低いので誤配線があったとき危険な場合があります。
 調整用電源は市販されている訳では無いので自作する必要があります。
 写真は自作したCVCC電源でB電圧を0〜72V、B電流を0〜28mAの範囲で任意に設定出来ます。
 調整中にB電源とA電源を短絡してヒーターを焼損する心配がありません。
 B電圧とB電流の値は液晶画面に表示されます。
 A電源は1.43Vの固定電圧で短絡保護のみです。(短絡電流は約500mA)
 電子回路>真空管ラジオ>電池管ラジオ用AC電源 に製作記事があります。


 *** マルチメーター ***

マルチメーター

 プレート電圧等を計測します。


 *** LCRメーター ***

LCRメーター

 バリコンの容量、バーアンテナのインダクタンス等を計測するのに必要です。
 写真は秋月電子から購入したもので計測周波数を100Hz、120KHz、1KHz、10KHz、100KHzに設定 可能です。
 欲を言えば放送周波数に設定出来れば完璧です。
 日置あたりで0〜5MHz程度の任意の周波数を設定出来るLCRメーターが販売されていますが、何十万もします。


 *** ディップメーター ***

ディップメータ

 アンテナ回路の共振周波数を測定するのに必要です。
 周波数がデジタル表示されるものか周波数カウンター用の出力を持つ物でないと使いづらいです。
 AMラジオの調整に使うには400KHz程度から使用出来るものが必要です。
 現在、1MHz以下で使えるディップメーターは殆ど入手出来ない様です。
 自作出来ない事はないですが、低い周波数用のコイルの製作が困難です。


 *** 自作ディップメーター ***

自作ディップメータ

 この記事は後から追加したものです。
 上記ディップメーターのメーカーは廃業したので現在、1MHz以下で使えるディップメーターは入手出来ません。
 壊れた時のスペアーとしてAMラジオ調整用のディップメーターを製作しました。
 2本のコイルを差し替え446KHz〜2.3MHzで使えます。
 別の頁「ディップメーター」に製作記事があります。


 *** 周波数カウンタ ***

周波数カウンタ

 局発の周波数を読み取る為に製作しました。
 スイッチの切り替えで計測周波数から455KHz引いた数値を表示します。
 被調整ラジオに接続したままにしておき、ディップメーターで測定したアンテナ側の共振周波数と比較します。
 電子回路>測定器、ロガー>周波数カウンタ に製作記事があります。


 *** 455KHz発振器 ***

455KHz発振器

 中間周波トランスの調整の為に自作しました。
 低周波の変調を掛けることが出来ます。
 製作したとき455KHzの発振子が無かった為LC発振です。
 周波数安定度は±2KHz程度ですが気になるようなら微調整します。
 電子回路>真空管ラジオ>455KHzIFT調整用発振器 に製作記事があります。


 *** シグナルインジェクター ***

シグナルインジェクター

 低周波発振器で針を真空管の入力ピンに当てるとスピーカーから音がでます。
 出力側から順次ピンを当てることにより、回路のどの部分まで動作しているか判断します。
 電子回路>真空管ラジオ>シグナルインジェクター、トレーサーに製作記事があります。


 *** オシロスコープ ***

オシロスコープ

 ラジオの調整に使うことはありませんが予備実験で使うことはあります。
 電源 (DC/DCコンバータ) の動作確認には必ず使い、発振波形やノイズ波形を観察します。
 ワンタッチで表示波形をUSBメモリに記録できるので便利です。


 バーアンテナ

バーアンテナ

 ラジオの感度を最も左右するのがバーアンテナです。
 一般的にはサイズが大きい方が有利です。
 サイズが大きければ少ない巻き数で同一のインダクタンスを得ることが出来るので巻き線の分布容量が減り、 グリッドに直接入力が可能です。
 分布容量が大きいと高域でQが落ち、感度が下がってしまいます。
 この時は巻き線にタップを付けたり、二次巻き線を巻きます。
 通常、巻き線は紙枠に巻かれて位置を動かす事が出来る為、インダクタンスを調整する事が出来ます。
 インダクタンスはコイルが中央にあったとき最も大きくなります。
 バリコンの容量を最大にしたとき最低周波数(535KHz程度)に共振するように位置を決めます。
 もし、位置がバーの端の方にあったらコイルを少し巻き戻して中央位置に移動すると感度が上がります。
 ただし、戻しすぎると低い周波数が受信出来なくなります。
 問題はサイズの小さなラジオを作る場合です。
 バーアンテナは小型になり、バリコンもポリバリコンになります。
 特にスーパー用のポリバリコンは容量が少ないのでインダクタンスの大きなバーアンテナを必要とします。
 小さいフェライトバーで大きなインダクタンスを得るにはコイルを多く巻かなければなりません。
 必然的に浮遊容量が多くなり、感度が落ちます。
 今までSL−55Xというバーアンテナが販売されていたので使用していましたが、最近、入手出来なくなりました。
 代替品はフェライト棒が平板から丸棒になり、狭い場所に付かなくなりました。
 ネットで検索して平板バーの小型バーアンテナを、ある通販サイトから2種類購入したのですが使えませんでした。

不良バーアンテナ

 上の写真のバーアンテナは最大670uHと広告で紹介されていました。
 市販のポリバリコンとの組み合わせでは600uH前後が必要になるのでコイルを少し端に移動すれば丁度良いと 思いました。
 ところが購入してインダクタンスを計ると870uH(/100KHz)もありました。
 実際に使用する事を考えていないと思いました。
 国産のバーアンテナはSL−55XにしてもBA−200にしてもデータが付属していて違いはありませんでした。
 結局、巻き戻してディップメーターで共振点を見たのですが高い方の周波数で上手くディップしません。
 二次巻き線を巻けば使えるのか、高い周波数で損失が大きくなって使えないのか判らず、使用を諦めました。
 このような時は数MHz以下の任意の周波数で計測出来るLCRメーターが欲しくなります。
 ただし、数十万円します。

不良バーアンテナ2

 上の写真のバーアンテナは広告と違う外観のものが届きました。
 丸棒用のコイルの中で平型のコアが泳いでいます。
 インダクタンスも400uHしかなく即、使用を諦め、コアは自作バーアンテナに流用し、コイルも全部巻き戻して自作の バーアンテナに流用しました。
 巻き線はリッツ線のような被覆がありますが中身は単線でした。

自作バーアンテナ

 思うようなバーアンテナが入手出来ないときは自作するしかありません。
 写真の2本のバーアンテナは何れも自作したものです。
 コアは壊したバーアンテナからの流用、コイルも他のバーアンテナのコイルを巻き戻したものです。
 コイルは蝋で固めながら巻いたのですが均一に垂らせなかったので、見た目が悪いです。
 下側のバーアンテナは実際に使える事を確認しました。
 ただ、一重に巻けず分布容量が大きいと思われる為、全体の1/3程度の所にタップを付け、そこからグリッドに 入力しています。
 上側のバーアンテナは、まだ動作を確認していません。
 バーはBA−200のものでコイルは、ほぼ一重に巻けているので使えると思います。

カードラジオバーアンテナ

 写真のバーアンテナは景品のカード型ラジオから取り外したバーアンテナです。
 安物らしくフェライトバーに直接UEWを巻いています。
 その為、コイルの位置を動かしてインダクタンスを調整する事が出来ません。
 インダクタンスは700uHだったので、少しずつ慎重に巻き戻しながら使用してみました。
 思ったより感度が良かったので実際に使用しました。

 安っぽいアンテナですが結構、良い感度です。
 パーツとして購入したバーアンテナは全く使えないものもありますが製品として使われていた部品は安物であっても 使えるということです。

 次の写真は壊れたメーカー製のポケットラジオから外したバーアンテナを流用した例です。
 小型のラジオにしては、しっかりしたアンテナで、問題なく使えました。
 さすがメーカー製ということでしょうか。

製品ラジオバーアンテナの使用


 小型の平型バーアンテナの固定

 大きな寸法の丸形コアのバーアンテナはホルダーが用意されていたりして取り付けは容易ですが小型の平型バーアンテナ に関しては取り付けに苦労します。
 ここでは簡単に取り付ける方法を紹介します。

アンテナホルダー材料

 上の写真は材料です。
 基板の切れ端とφ1mmのスズメッキ線です。
 基板はユニバーサル基板を切断したときの耳の部分です。
 ユニバーサル基板はガラスエポキシ両面スルーホールを使います。
 片面のものは穴径が小さく、1mmのメッキ線が通りません。

アンテナホルダー

 基板にスズメッキ線を通して半田付けします。

バーアンテナの固定

 バーアンテナを基板の耳の部分に乗せ、細いインシュロックタイで縛ります。
 このままでも固定出来ますが基板とフェライトバーを少量のエポキシ接着剤で固定すれば完璧です。
 ホルダーは片持ちになりますが小型のバーアンテナに対しては実用的な強度があります。

バーアンテナの取り付け

 ユニバーサル基板に装着する場合は、こちらも両面スルーホールを使います。
 片面基板は1.0mmのスズメッキ線が通らず、強度的にも弱く、ランドが剥がれてしまいます。


 ポリバリコン

ポリバリコン

 金属製のバリコンは現在、高価で入手困難です。
 AC電源のラジオでは見た目のバランスや耐電圧の点で金属製のバリコンが欲しくなりますが、電池管ラジオでは 小型、安価で入手性の良いポリバリコンを使うことも多いと思います。
 ポリバリコンはストレート用とスーパー用の親子バリコン、FM/AM用4連バリコン、等容量2連バリコン等があります。
 ストレート用は比較的、構造が簡単で容量も多く、トラッキング調整の問題も無いのでトラブルも少ないです。
 ストレート用は親子バリコンをパラに接続したり、2連バリコンの片側を使っても出来るので、ここでは2連親子バリコン を考えてみます。
 親子バリコンはアンテナ用160pF、局発用70pF程度のものが各種、販売されていますが、問題が多いです。
 特に安価で中国製と思われる(はっきり中国製として販売しているものも多い)ものは不良品が多いです。
 特に不良品でなくても周波数範囲がカバー出来ないとかいう問題があります。
 これに関しては出来るだけ容量が多いポリバリコンを使用することが正攻法ですが、入手出来る親子バリコンは 160pF+70pF程度のものが殆どで、スーパー用バーアンテナもこれくらいの容量に合わせてあります。
 320pF+320pF程度の2連バリコンの広告を見たことがありますが、局発側は直列にコンデンサーを接続して 発振周波数をアンテナ同調周波数より455KHz高くしなければなりません。
 この直列コンデンサーの容量調整と局発コイルのインダクタンスの値の合わせ込み等が面倒だと思います。
 アンテナ側も320pFに同調するバーアンテナを用意しなければなりません。
 現実的には入手し易い160pF+70pF程度のものを使わざるを得ないと思います。
 上の写真では右側の1個が比較的トラブルが少なく、製作したポリバリコン使用のスーパーは全て、このタイプになって いました。
 値段が少し高いので国産品かもしれませんがメーカー型式等は不明です。
 左側の2個に関しては各々何個か購入しましたが。
・ 動きが部分的に固い。
・ 最小容量の値が安定しない。
・ 最小容量が右端のものに比べ約1pF大きい。
・ 調整中に突然壊れた。
・ 取り付けビスのネジ穴が浅い。
 等の欠点を経験しています。
 取り付けビスのネジ穴が浅いということは長めのビスを使うと回転翼に接触し、壊してしまうという事です。
 右端のバリコンはネジ穴の寸法(奥行き)に余裕があります。
 右端のバリコンは今の所、複数の通販サイトで入手出来るようですが、もし、国産品のデッドストックだとしたら そのうち入手出来なくなると思い、補修用にまとめ買いしました。

ポリバリコン


 高周波チョーク

マイクロインダクター

 再生検波、高一レフレックス等のラジオでは負荷として高周波チョークを使います。
 gmの大きい真空管では抵抗に置き換える事も可能ですがゲインの小さい電池管ではチョークコイルは必須です。
 ところが小型で安価で性能が良い高周波チョークは現在、手に入りません。
 真空管ラジオ用のチョークコイルはハニカム巻き、分割巻きで性能は良さそうですが寸法が大きく、高価で使いづらいです。
 上の写真の様なマイクロインダクターを使用している製作記事を見かけたりしますが、高い方の周波数で動作しているのか 疑問です。
 はっきり言ってこれらのインダクターは低周波用です。
 高周波用として販売されている物も見かけますがドラム型コアに密着巻きしている限り、大差ないと思います。
 1mHのインダクターで1MHz程度までです。
 従って低い周波数の放送局は受信出来ても高い周波数の局は聞こえません。
 もっとインダクタンスの小さい330uH程度のものを同調用に使っている例を見たことがありますがインダクタンスが 大きくなるにつれて使用可能周波数は下がってきます。
 5.6mH位になると自己共振周波数が放送周波数の中にあるようです。

昔のチョーク

 上の写真は昔、入手出来た小型の高周波チョークです。
 何れも、リッツ線をハニカム巻きしてあります。
 向かって左はコア入りで2.2mH、右は空芯で220uHです。
 現在、このようなパーツは見ることが出来ません。

 私はトロイダルコアにポリウレタン線やリッツ線を巻いてチョークコイルを作っています。
 製作で注意する点は分布容量を小さくすることです。
 分布容量を少なくする巻き方ですが可能な限り細い線を重ならないように巻き、巻き数を少なくする事です。
 巻き数を少なくするには透磁率の大きなコアを使えば良いのですがフェライトの#75,#77位になると高周波でコアの損失が 大きくなって逆効果です。
 結局、中波放送帯では#43材が適している様です。
 短波帯で#43が使えるかどうかは試していませんが短波帯ではインダクタンスは小さくて済むので透磁率の小さなコアが 使えると思います。

単球レフレックスラジオ

 上の写真は単球レフレックスラジオで使用した高周波チョークです。
 チョークコイルは何回も作り直しています。
 インダクタンスを大きくしようとして巻き数を増やすと分布容量の影響で高い周波数が受信できなくなります。
 インダクタンスを小さくすると今度は低い周波数が受信出来なくなります。
 最初、多めに巻いて、少しずつ減らしながら最適値を求めます。
 分布容量を増やさず最適値のインダクタンスを大きくするのがポイントです。
 コアはアミドンFT−82#43、コイルは0.1mm×20本のリッツ線です。
 最初700uHだったインダクタンスを1050uHまで増やすことが出来ました。

6球スーパー

 上の写真はポータブル6球スーパーの高周波増幅に使用したチョークコイルで、高周波増幅管(6088)の下に貼り付けて あります。
 ミキサーに他励発振スクリーングリッド注入を試みたのですが、感度が低くかったので、高周波増幅をした後で局発を 注入しました。
 効果はあり、そこそこ聞こえるようになりました。

高1コイル

 上の写真は真空管ラジオ用の高1コイルです。
 左側のアンテナコイルと右側の検波コイルで1組になっています。
 検波コイルのハニカム巻きのコイルが負荷用のチョークコイルです。
 検波側の同調コイルとは磁気的に結合しています。
 トロイダルコアでは磁気的に結合させるのは困難ですので小容量のコンデンサーで結合すれば良いと思います。

 コラム : アミドンコア同等品

アミドンコア

 あるサイトに「アミドンのコアには本物と同等品があって形が違う」という記事がありました。
 手持ちのアミドンコアを見ると2種類の形状が確認出来ました。
 写真左側の表面が平らなコアが本物で右側の丸味をおびたコアが同等品とのことです。
 低周波でのAL値は似たような値でしたが高周波で特性を比較するような道具を持っていません。
 同じように使えれば良いのですが。


 局発コイル

局発コイル

 電池管ラジオでは局発コイルはトランジスタラジオ用の10mm角のものを使っています。
 コアは赤色に着色されています。
 ただし、そのまま使うことは稀で殆どの場合、同調コイルを巻き戻しています。
 本来トランジスタ用ですので同調コイルの中間タップの位置は使いづらく、使用していません。
 全体の1/3〜1/2の位置であれば、ここから発振管のグリッドに接続した場合、ゲートの入力容量の影響を軽減 出来ると思います。

局発コイル内部

 コイルを巻き戻す方法ですが、上の写真でピンが3本並んだ側が共振コイルで反対側の2本ピンが励振コイルに接続されて います。
 励振コイルの上に共振コイルが巻かれているので巻き戻すのは簡単です。
 まず、外側のコアを外した写真の状態で共振コイルの両端のインダクタンスを計ると192uH程度です。
 (注:この値は外側のコアを取り付ければ増え、外側コアのネジ込み具合により変化します。)
 これを150uH〜160uH程度になるように測定しながら巻き戻します。
 3本ピンの向かって右側のピンに接続されている線を切断して巻き戻します。
 左側のピンは下側になっていて巻き戻せません。
 規定のインダクタンスになったらコイルをピンの根元に巻き付けて半田付けします。

発振回路

 上図のAでもBでも発振します。
 Aは巻き線間の耐圧の点で有利でBは部品点数の点で有利です。
 Aの励振コイルのGND端子側とBの励振コイルの+B端子は直流電位は逆ですが交流的には同位相です。
 励振コイルと共振コイルの位相が違っていると発振しません。
 この時は、どちらか片方の巻き始めと巻き終わりを入れ替えます。


 IFT

IFT

 IFTもトランジスタラジオ用のものを流用しています。
 黄色のコアは初段用、白色のコアは段間用、黒色のコアは検波用(終段用)です。
 黄色と白色のIFTは大きな差がありませんが、黒色のコアは二次巻き線の巻き数が多くなっています。
 黒色のコアのIFTは一次二次の巻き数比が約3:1になっています。
 トランジスタ用のIFTはインピーダンスが低いので本当はもう少し巻き数が多い方が良いのかもしれませんが、巻き直すのは 面倒くさいので無改造で使っています。
 ローカル放送を受信するには、このままで十分な感度を得られます。
 巻き数を増やせば付属している同調コンデンサーを外して新たにコンデンサーを準備しなければなりません。
 小さなコアで巻き数を増やすと分布容量が増えて、かえってゲインが落ちる可能性もあります。
 私は殆どの場合、二次巻き線を使用していません。
 次段との結合には小容量のコンデンサーを使用します。
 二次巻き線を使わなければコアの色は何でも同じです。
 二次巻き線を使う場合は黒色のコアのものを使います。
 使用数は最低2個あれば済みますが、複同調にすれば使用個数は増えます。
 単同調と複同調の性能の差がどの程度かは不明です。
 IFTに関してはトラブルは経験していません。
 変調を掛けられる455KHz発振器があれば調整は容易です。

 単同調
IFT

 複同調
IFT

 検波
IFT


 周波数範囲が得られない(局発)

 ここではスーパーの局発に限定します。
 ポリバリコンを使ったラジオで選局範囲が狭い事を経験した人は多いと思います。
 低い周波数を535KHz位に固定すると高い方は1350KHz位しか出ません。
 これはポリバリコンの容量値が特に局発側で小さい事に原因があります。
 最小容量(高い周波数側)と浮遊容量を加えた値と最大容量の比が大きく取れない為です。
 容量値の大きいポリバリコンが入手出来れば問題は解決すると思いますが、入手出来るポリバリコンは殆どアンテナ側160pF 局発側70pF程度です。
 以下、この程度の容量のバリコンで全範囲を受信する方法を紹介します。
 方法は浮遊容量を減らす事に尽きます。

1 バリコンを選別する。
 同じ様なバリコンでも若干の差があるので、僅かでも最大容量が大きく、最小容量の小さいバリコンを選別します。
 これに関しては前述「バリコン」の項目で述べています。

2 バリコン周り、局発周りの配線長を短くする。

3 バリコン周り、局発周りの配線が他の配線、特にGNDに近づかないようにする。

配線ガード

 バリコンからの配線の中央がGND線、右側が局発コイルへの配線ですが、この2本が接近すると浮遊容量が増えます。
 上の写真では2本の線が近づき過ぎないように熱収縮チューブに通しています。
 ユニバーサル基板の裏側でも処置してあります。

4 局発コイルを巻き戻す
 局発コイルを巻き戻して分布容量を減らす方法は前述「局発コイル」の項目で説明済みです。

5 局発コイルの配線変更
 共振コイルの巻き始めと巻き終わりを入れ替えます。
 この時、励振コイルの巻き始めと巻き終わりも入れ替える必要があります。
 片側だけ入れ替えると逆位相になり発振しません。
 これは結構、効果があり、発振周波数範囲が100KHzぐらい広くなります。
 尚、最初の状態が正常の結線であった場合、逆に発振周波数範囲が狭くなります。
 この時は元の結線に戻します。

6 発振管の結合コンデンサーの容量を小さくする
 局発の共振回路と発振管(例えば1V6の3極管部)のゲートは一般的に56pF程度のコンデンサーで結合されています。
 真空管の入力容量と結合コンデンサーの直列合成容量は共振回路とパラに入り、結果的に発振周波数を下げます。
 56pFを減らすことにより余分な付加容量を減らす事になります。
 ただし、下げすぎると帰還量が減る為、発振が停止したり、不安定になったりします。
 1V6では10pFでも十分発振すると思います。
 別の頁(電池管4球スーパーU)の製作例では結合コンデンサーの値を最終的に18pFにしています。
 他励発振の場合、発振管6418で3pF以上あれば発振することを確認しています。
 尚、共振コイルのタップの位置が適切であれば、結合コンデンサーの値が大きくても共振周波数に与える影響は少ない と思います。
 ただし、位置を調整するには、その都度巻き直さなければなりません。
 従って、タップを試したことはありません。

7 タップを使う
 5極管コンバータではアンテナ同調回路と局発回路の干渉を減らす為に二次巻き線を巻いたり巻き線にタップ付け、 この出力を混合管のゲートに加えます。
 この場合、局発コイルは全体を巻き直します。
 1V6を使った場合でも周波数範囲を広げるのにタップを使うのは有効です。


 アンテナ同調で周波数範囲が得られない又は高い周波数で感度が悪い

 アンテナ同調で周波数範囲が出ない場合、バーアンテナに問題がある場合が多いと思います。
 特にトランジスタラジオ用でスーパー用のバーアンテナは容量の少ないポリバリコンと組み合わせて使うので  インダクタンスが大きく、巻き数が多いので分布容量が多くなります。
 さらに真空管の入力容量がパラに入るので高い周波数で同調しなくなる様です。
 対策を以下に示しますが前項「バーアンテナ」と重複する内容があります。

1 出来るだけ容量の大きなバリコンを使う。
 同じ同調周波数でバリコンの容量が大きくなれば、バーアンテナのインダクタンスは小さくなります。
 これは巻き数が少なくなる事を意味し、分布容量が減ります。

2 配線の浮遊容量を減らす。
 これは局発の周波数範囲の項目で述べた内容と同じです。

3 バーアンテナを少し巻き戻す。
 トラッキング調整の最初に低い周波数を合わせます。
 バリコンの容量を最大にし、バーアンテナのコイルを移動して535KHz位に同調させます。
 これには535KHzで同調可能なディップメーターが必要です。
 市販のポリバリコンとバーアンテナの組み合わせでは分布容量の影響により多くの場合、コイルの位置は端の方 なります。
 そこで同調コイルを巻き戻してインダクタンスを減らし、コイルを中央に移動します。
 コイルは中央の位置にある方がQが高く、さらに巻き数が減る事により分布容量も減ります。
 160pFのバリコンとバーアンテナSL−55Xの組み合わせでは、この方法で対処できました。
 ただし、巻き数を減らし過ぎると535KHzに同調できなくなります。

4 巻き始めと巻き終わりを入れ替える。
 2層以上に巻かれていて巻き始めと巻き終わりが均一で無い時、効果がある場合があります。

5 コイルにタップや二次巻き線を設ける
 少し巻き戻した位では分布容量が減らない場合はタップや二次巻き線をグリッドに入力します。
 バーアンテナによっては最初からタップや二次巻き線が付いているものがあります。
 ただし、トランジスタ用に作られているのでタップの位置が低かったり、二次巻き線の巻き数が少なかったりするので 二次巻き線を巻き直した方が良いと思います。
 アンテナコイルの1/3程度の巻き数が良いと思います。

 項目5でも駄目な場合、バーアンテナの不良だと思います。
 巻き方が酷かったりフェライトバーの材質が悪く、高い周波数で損失が大きくなる等の問題がある バーアンテナも販売されているようです。
 ストレートラジオ用のBA−200はコイルの移動だけで使え、スーパー用のSL−55Xは少し巻き戻せばタップや 二次巻き線無しで使えました。
 ただし、これらのバーアンテナは現在、入手出来ません。
 何個か補修用として確保しておくべきでした。
 壊れた市販ラジオのバーアンテナを流用する方法も有ります。
 どんなに安いラジオであっても、製品として組み込まれていたものは使えます。


 DC/DCコンバータ

 電池管ラジオはB電源に24V〜72V程度の高電圧を必要とします。
 ネット上の製作記事では9Vの006P電池を使用した例が多い様に思います。
 当地では2個100円の006P電池は売られておらず、1個100円のアルカリ電池になります。
 一番最初に作った電池管ラジオはラジオ少年の4球スーパーです。
 006P電池8本を必要としていたのでB電源に800円(+消費税)必要になります。
 調整は長時間掛かることも予想されるので、電池代が馬鹿になりません。
 そういう訳で、ラジオを作る前にDC/DCコンバータの実験から始めました。
 最初からDC/DCコンバータを電源とし、006P電池は一度も使った事はありません。
 その後12Vの単5サイズの電池が流通するようになり、こちらは小型のラジオに使う様になりました。
 DC/DCコンバータを小型に作るのが大変で、小さいケースに収めるとノイズを拾いやすいという理由もあります。
 この電池は現在、秋月から5個200円で入手出来ますが通販で購入するのは面倒ですし、 いつ販売終了となるかも知れません。

 その後、小型のラジオにも1.5V単電源のインバータを使うようになり、12V電池も全く使わなくなりました。
 現在、全てのラジオは単電源のインバータで動作しています。
 2種類の電池を使う場合、消耗する時間が異なるので電池交換が非常に煩わしくなります。

 コンバータの具体的な回路や結果については別の頁「電池管ラジオB電源」に詳しく書いてあります。
 尚、その後、調整用のAC電源(CVCC電源)も製作し、調整時にはこちらを使用しています。
 こちらも「電池管ラジオAC電源」の頁に製作記事があります。

1  製作例

DC/DC 1

 上の写真はサブミニチュア管を使用した4球スーパーです。
 終段に出力管5672を使っているのでB電流は6〜7mA程度流れ、室内で聞くには十分な音量です。
 A電池は単1でB電池は単3電池4本でDC/DCコンバータを駆動しています。
 効率は85%あり、20時間程度の連続使用が可能です。(A電池も20時間は持ちます。)
 単3電池下側の銅テープの貼られた箱がDC/DCコンバータです。
 発振はPICマイコンによるPWMですが定電圧制御はしていません。
 A電池B電池の電圧低下を監視しLEDの点滅で知らせます。
 2種類の電池を使用しているので、どちらの電池が減ったのか知る必要があるためです。
 点滅周期を3種類にし、長:B電池、中:A電池、短:両方、と区別しています。
 効率を優先したので強いノイズを発生しますが、厳重なシールドと遮蔽版で逃げています。
 スペースに余裕があるので対策は楽です。
 耳を近づければ、まだ微かなノイズ音が聞こえますが、放送を聞くのに支障はありません。

DC/DC 2

 上の写真は小型の4球スーパーで、終段が5678の為、B電流は3mA程度です。
 ヒーターもDC/DCも共通の1.5V電池で駆動しています。
 最初の例ではノイズは空中伝搬のものだけでしたが、この例ではDC/DCのノイズがヒーター配線を経由して回り込み、 対策が厄介です。
 筐体が小さく、発振回路とバーアンテナの距離が近いので空中伝搬ノイズも受けやすいです。
 厳重なシールドとヒーター配線のフィルターにより、ノイズの影響はありません。
 回路的なノイズ対策、過電流、過電圧保護回路により総合的な効率は55%程度に落ちてしまいました。
 電池の持ちは単3電池2本パラで連続6時間〜7時間程度です。

2  シングル出力かプッシュプルか
 トランスの駆動がシングル出力でもプッシュプルでも効率は変わりませんがシングル出力の場合、出力電圧、入力電流共、 パルス波形となり、フィルターが大変になります。
 プッシュプルでは互いが山と谷を埋めるようになるので、切り替わり時の過渡的なノイズ以外は一定のレベルになります。

3  定電圧制御は必要か
 定電圧電源である必要はありません。
 定電圧制御すると出力波形が不規則になり、ノイズが増えます。

4  DC/DCコンバータの電源電圧は
 1.5VのA電池をヒーターと共用する場合と電池3本〜6本を直列接続したものを別途用意する場合があります。
 電圧の違いで回路方式は変わりませんが1.5Vの場合、昇圧比が大きくなるので、入力電流が大きくなります。
 また、1.5Vの場合、ヒーター電源と共用する為、ノイズがヒーターに回り込み、除去するのが大変ですが電池が1種類で 済むというメリットはあります。

5  発振の方法は
 マイコン制御の他励発振と自励発振回路を試しています。

6  マイコン制御の発振回路
 発振周波数を任意に設定できます。
 発振周波数を20KHz程度に設定するとトランスの鉄心にフェライトの#43材が使え、小型、安価に出来ます。
 効率低下の原因はプッシュプルの2つのとランジスタがON、OFFの切り替わり時に同時にONする期間が発生 する事にあります。
 マイコンでは、これを避ける為、休止期間を挿入することが出来ます。
 これにより効率は高く出来ますが空中伝搬ノイズは強く出ます。

コンバータ基板1
コンバータ回路図1
 上図は1.5V電源でマイコン制御のDC/DCコンバータです。
 1.5Vではマイコンは動作しないので補助電源で3.3Vを作り、これでマイコンを駆動します。
 この回路では電池電圧1V〜1.5Vで85%の効率が得られました。
 ただし、ノイズが強烈で取りきれなかったので使えませんでした。
 ラジオ以外の電源では使い道はあると思います。

 追補>
 その後、このコンバータをラジオに組み込んで使用しています。
 ある程度スペースに余裕のあるラジオではDC/DCコンバータのサイズにも余裕があり、厳重にシールド 出来ます。
 従ってコンバータの寸法は上記の写真より大きくなっています。
 効率が高いので電池の使用時間が伸びます。
 具体的なラジオの製作例は
 <1.5V単電源4球スーパー>
 <1.5V単電源3球レフレックススーパー>
 の頁を参照してください。
 これらのラジオは単1電池1本で30時間程度の連続使用が可能です。(ヒーター電流を含む)

6  自励発振回路

 この回路も1.5V電源用に作りましたが、もう少し高い電圧でも作れます。
 プッシュプルの自励発振は発振周波数が磁芯と巻き線、電源電圧により決まり、制御出来ません。
 この意味ではロイヤーの回路と同じですが、ベース巻き線が無く、無安定マルチのような結線になっています。
 一応、これもロイヤーの回路と呼ぶことにします。
 基板の写真を写し忘れましたが、寸法は上のマイコン制御のものと同じで見た目も、あまり変わりません。
コンバータ回路図2
 上図で両コレクタ間に入っている1uFのコンデンサーは波形を鈍らせ、空中伝搬ノイズを減らします。
 他励発振回路でこの位置にコンデンサーを入れると逆にノイズが増えます。
 この回路ではヒーター電源と共用するため、ヒーター配線を通って回り込むノイズに対しても配慮が必要です。
 発振周波数を下げる為に透磁率の大きな#75コアを使用しましたが1KHz程度です。
 効率は大幅に下がり、この電源単体で60%程度です。
 これに保護回路等のロスが加わり、最終的には55%程度となります。
 この電源は4球ポータブルスーパーに組み込みました。

 追補> その後、ロイヤーの回路の効率は70%位に上がっています。
 詳しい事は別の頁「電池管ラジオB電源U」を参照願います。

6  ノイズに関して

 中波AM放送は本質的にノイズに弱く、待機中のリモコンのような微弱な動作の機器でも近づけるとノイズを拾います。
 DC/DCコンバータのような電力を扱う回路では強烈な発生源となります。
 この、ノイズは配線経由では無く、空中伝搬する電磁波です。
 コンデンサーに急速に充電したり、エネルギーを貯めこんだコイルを瞬間的に開放したりすると電磁波が発生すると言われて います。
 DC/DCコンバータの発振周波数は放送波より低いのですが高調波を含んだ方形波で動作するので受信周波数の成分を 含んでしまいます。
 方形波の立ち上がり、立ち下がりが急峻であるほど効率は上がりますがノイズは増えます。
 仮に発振周波数が放送周波数より高くなればラジオはノイズを受けなくなりますが、これはコンバータが難しくなります。
 発振周波数を下げていってもノイズは減りますが、商用周波数まで下げてもノイズを完全に無くす事はできません。
 周波数が下がるとトランスの鉄心に珪素鋼板が必要となり、大きく重くなり、アマチュアには材料の入手が難しく なります。
 ヒーター電源とDC/DCコンバータの電源を共用する場合は空中伝搬のノイズ以外に、DC/DCコンバータの入力電流の リップルがヒーター配線を経由して真空管に入力されます。
 このノイズを除くフィルターは発振周波数が低くなるほど、時定数が大きくなり、大容量のコンデンサーが必要になります。
 波形を必要以上に鈍らせると効率が下がると共にヒーター経由のノイズも増えます。
 空中伝搬ノイズを下げようとすればヒーター経由のノイズが増える事になります。
 上記のロイヤー回路は発振周波数1KHz程度ですので空中伝搬ノイズは多いのですが、波形を少し鈍らせ、厳重にシールドして 対処しています。
 ヒーター経由のノイズを除くのに10mHのコイル、560uFのコンデンサー4本(電源2、ラジオ本体2)、各真空管の ヒーターに1Ωと5uFのフィルターを使っています。
 (別の頁、「4球ポータブルスーパーU」を参照)


 保護回路

1  過電流保護

 B電源とA電源を接触させてヒーターを焼損させたという話はよく聞きます。
 B電源が電池の場合、内部抵抗が低いので大きな電流が流れます。
 私は調整中に5極管の2番ピンと3番ピンを接触させる事がよくあります。
 2番ピンはB+に接続される事があり、3番ピンはGNDですので電池をを短絡させます。
 B電源の出力に定電流回路を付加すれば安全です。
 定電流回路はトランジスタで回路を組むか定電流ダイオードを使います。
 注意する点は定電流値は負荷電流の2〜3倍程度にするということです。
 倍率が多い程、電圧降下によるロスが小さくなりますが、短絡時の電流が多くなります。

コンバータ回路図1

 上図はトランジスタを用いた定電流回路です。
 負荷電圧が60V、負荷電流7mA程度を想定し、定電流値を20mA程度に設定しています。
 通常動作時に各部品は殆ど電力を消費しませんが、負荷短絡時にはQ1に20mA×60Vの損失が発生し、R2には 60V×60V÷7.5KΩの損失が発生します。

 定電流ダイオードを使えば回路は簡単になります。
 定電流ダイオードはセミテックから色々な電流値のものが販売されています。
 注意する点は通常時は僅かな電圧が素子に掛かるだけですが負荷短絡時には電源電圧が全て掛かるという事です。
 5.6mA以下の品種は100Vの耐圧がありますが、それ以上の電流値の品種は一気に30V以下となってしまう 点です。
 従って、上の例の様に20mAで制限したい場合は5.6mAの素子を4本パラにする必要があります。
 5.6mAの素子4本をパラにして7mAの負荷電流を流した時の電圧降下は1V程度です。
 もう一つの注意点は一般的なダイオードと異なり、逆方向を阻止しないという事です。
 何本かの定電流ダイオードをパラに接続した場合、1本でも逆向きのダイオードが混じると台無しになります。
 順方向では例え負荷を短絡し電源電圧が直接掛かったとしても壊れません。
 素子は発熱しますが、発熱すると自分自身で電流を減らし発熱を下げ熱的にバランスした状態で安定します。
 ただし、電源電圧は素子の耐圧以下とします。
 逆方向に電源電圧を掛けると短絡電流が流れ壊れます。
 逆電圧が加わる可能性がある場合は逆阻止用のダイオードを別途、直列に接続する必要があります。

  定電流回路の出力側に大容量のコンデンサを入れない
 せっかく定電流回路を付けても出力側に大容量のコンデンサがあると効果がなくなります。
 充電されたコンデンサーは電池と同じで大きな短絡電流を瞬間的に流す事が可能です。
 B電圧にリップルが多いときは定電流回路の前に大きなコンデンサーを入れます。
 ラジオ側のB電圧回路に入れるコンデンサーは10uF〜47uF程度に抑えます。
 又、電源オフでA電源が切れるとB電源は放電経路が無くなりコンデンサーに電荷が溜まったままになります。
 1MΩ程度の放電抵抗を入れておくと安全です。
 私は定電流回路の後に100uF+150uFのコンデンサーを誤って接続したことがあります。
 電源SWを切ってから6088を装着したのですが、足を挿し間違え、しかも電荷が残っていた為、ヒーターを焼損 しました。

  ヒーターの直列接続は避ける
 昔のメーカー製の電池管ラジオはAC電源でも電池でも使えるものがあります。
 ヒーターは全て直列に接続されています。
 完成品を使うだけなら、これでも良いですが、自作する場合、ヒーターの直列接続は避ける方が無難です。
 配線間違いや調整中の事故により特定の球に過電圧が加わる可能性があります。
 また、直列接続ではヒーター電流が同じである必要があります。

  誤挿入
 レイセオン型のサブミニチュア管はピンが1列に並んでいるので逆に挿入したり、ずれて挿入したりする可能性があります。
 5極管ですと中央の3番ピンがGNDですので逆に挿すとヒーターの5番ピンにB+が接続されます。
 負荷がIFTのように直流抵抗が少ない場合は危険ですが過電流保護回路が組まれていれば焼損は避けられます。
 サブミニチュア管は横に寝かせる事が多いと思いますが、曲げる方向を統一しておけば逆挿しは避けられます。
 人それぞれ配線し易い向きがあると言うことと、球は1番ピン側が出力であるという事で曲げる方向が決まります。
 私の場合は捺印面が下になってしまいました。
 特に球を見せるような作り方をしていないの問題はありませんが、最初に作ったラジオで無理してレイアウトを逆に しておけば良かったという気もします。
足の折り曲げ

  CVCC電源使用時の保護
 私はラジオの調整には電池や組み込まれたDC/DCコンバータを使わず別に用意したCVCC電源を使います。
 このCVCC電源は調整用に製作したものでA電源は1.435Vの固定電圧で過電流保護のみです。
 B電源は0〜72V、0〜25mAに設定できます。
 電源出力ターミナルにはミノムシで接続するので逆に接続してしまう恐れがあります。
 そこで、ラジオ側でA電源B電源共、逆並列にダイオードを入れています。
 さらにA電源にはダイオード3本直列にしたものを順並列に入れています。
 3本直列のダイオードは1.7V位から導通し、切れが悪いのですが、電荷の放電等、瞬間的な過電圧には効果があります。
 調整が終了した後はインバータを接続し0.9〜1.5VのCVCC電源に接続します。
 私のラジオは1.5V単一電源ですので、これで電池電圧が変化したときのラジオの動作を確認します。
 調整用の電源は色々な理由でA電圧を可変出来なかったので汎用のCVCC電源を別途、用意しました。
 ただ、手持ちの電源は0〜18V可変ですので微調整ボリュームを使っても電圧を上げすぎてしまう場合があります。
 瞬間的に気がつけば前述のダイオード3本でも良いのですが、今回、過電圧保護アダプタを製作し、CVCC電源とラジオの 中間に接続しました。
 電源電圧が設定電圧より高くなると出力を遮断します。
 挿入による電圧ロスは数十mV程度で1A程度まで流せます。
過電圧保護回路



2  過電圧保護

過電圧保護

 B電源にDC/DCコンバータを使用したラジオで調整中に全部の真空管を抜いた状態で電源を入れるとレギュレーションが 悪い為、100V近い高電圧が発生する場合があります。
 この時、コンデンサー類にダメージを与える心配があります。
 ここでは定電圧ダイオードで電圧をクリップしています。
 通常時に電流が流れない程度の電圧の定電圧ダイオードにします。
 手持ちの24V500mWの定電圧ダイオード2本を直列にして48V1Wにしています。
 保護回路は最初、ラジオに組み込んでいたのですが、最近はDC/DCコンバータ内部に組み込んでいます。


3  逆電圧保護

 調整中にB電源を逆に接続してコンデンサーをパンクさせたと言うような話を耳にします。
 B電圧の場合は一般的なシリコンダイオードを直列に入れておけば済みます。
 逆耐圧は電源電圧以上あれば大丈夫です。

 次にA電池1本(1.5V)の逆接続防止回路を紹介します。
 電池1本でDC/DCコンバータを駆動し、ヒーター電源と共用する場合にも使えます。
 この場合、ヒーター回路にもDC/DCコンバータにも大容量の電解コンデンサーが入っていますので 逆電圧を加えたくありません。
 しかしながら1.5V電源にダイオードを入れて0.6Vも電圧が下がったら話になりません。
 下図の回路を使えば50mV程度のロスで逆接続から守ります。

逆接続保護回路

 PチャンネルMOSFETは何でも良いという訳にはいきません。
 DMG3415Uは低い電圧でON出来ますが、さらに選別しています。
 電圧降下を維持したまま大きな電流を流したい時は素子をパラにします。
<追補
 その後、逆接続されない構造の電池BOXを使うようになったので、A電源の逆接保護は省略しています。
 ただし、調整用のCVCC電源に対する保護としてダイオードを逆並列に入れています。


4  逆接続される電池BOX

単3電池ボックス

 写真上の電池ボックスは入れ方によっては逆接続される場合があります。
 下の電池ボックスは逆に入れても電極が接続されません。


 実用的なラジオ

 単にラジオ放送が聞きたいならラジオを作る必要はありません。
 市販のラジオを買えば安く済み、高性能でランニングコストも安いです。
 単にラジオを作りたいなら半導体ラジオがお勧めです。
 制作費も安く、小型、高性能で、電池代も安く済みます。
 以上を考慮すると真空管ラジオは最初から実用性に欠けると結論付けられれてしまいます。
 しかしながら、真空管に興味があれば自作の真空管ラジオから放送が聞こえることは大きな喜びになります。
 ただし、単に実験的に作るのであれば残るのはゴミの山です。
 たまには丸一日、真空管ラジオで放送が聞きたいと思った時、目的を達成できるものを実用的な真空管ラジオとします。

 必ずケースに入れる
 実験基板や剥き出しのシャーシのままでは保管性、操作性が悪く、使いたい時に直ぐに使えません。
 また、保管中、操作中に壊し易くなります。

 連続10時間以上使える
 丸1日、電池交換無しで使うには連続10時間以上動作する必要があります。

 入手し易い1種類の電池
 最初の頃はA電池とB電池が別系統でした。
 電池の消耗時間が異なるので電池交換が煩わしいものです。
 また単1〜単3電池以外の電池は入手性が悪く、値段も高価な場合があります。
 最近では1.5V電池でDC/DCコンバータで駆動しB電圧を作るとともにヒーターにも供給しています。
 電池交換が非常に楽になりました。

 電池のコスト
 最近製作した単一電源のラジオは3円/時間程度になっています。

 電源表示灯
 若干、電池を消耗しますが、私のささやかな拘りです。

電池管ラジオ

 上の写真のラジオは全て上記の条件を満たします。
 大きい方の2台はミニチュア管を使用しています。
 回路は異なりますが、各々、単1電池1本で30時間以上動作します。
 小さい方の3台はサブミニチュア管を使用しています。
 回路は異なりますが、各々、単3電池2本で15時間以上動作します。


 毎日使うラジオ

 電池管ラジオの製作記事は探せば多数、見つかります。
 その殆どがA電池に単3電池〜単1電池、B電池に006P電池を5〜8本、又は単5サイズの12V電池を 2〜4本程度使用しています。
 時々、真空管ラジオの雰囲気を味わうには、これで十分ですが、毎日聴く為には問題があります。
 まず、2種類の電池の消耗時期が異なるので電池の交換が煩わしいという事があります。
 次に、電池のコストを考えてみます。
 まず、9Vの006P電池ですが、地域によってはマンガン電池が2個100円で売られているようです。
 ただし、マンガン電池は容量が少なく、電池の持ちが悪いので徳用とは言えません。
 アルカリ電池ですと最大で500mAH程度の容量があるとのことですので60〜150時間程度は使えると思います。
 ただし、アルカリ006Pは1本100円で別途A電池が必要です。
 単5サイズの12V電池は容量が50mAH程度ですので小型のラジオしか使えません。
 電池のコストは安くはありません。
 以上の理由で私は全てのラジオのB電源を単電源のDC−DCコンバータにしました。


毎日使うラジオ

 上の写真は私が毎日聴いているラジオです。
 もともと高1ラジオの製作に失敗してレフレックススーパーに改造したものです。
 製作記事は「電池管高1ラジオ」の頁に有ります。
 電池は単3エネループ2本でDC−DCコンバータを駆動しています。
 私は、ほぼ毎日仕事部屋で12時間程度ラジオを聴いています。
 出力が電圧増幅管の5678ですので大きな出ませんが実用上、十分な感度と音量があります。


 次のグラフは実際に使用した時の大体の電池の放電特性を示します。
 電池が新しい時のデータですので古くなると放電時間が短くなると思います。

電池放電特性

 1.4V
 エネループの充電直後の電圧です。
 サブミニチュア管のヒーターにとっても優しい電圧です。

 1.2V
 音量は殆ど変わりません。

 1.1V
 音は少し小さくなりましたが、まだ実用的に聴けます。

 1.0V
 この電圧以下になると急激に音が小さくなります。
 電池を交換して充電する必要があります。

 以上のようにエネループの放電サイクルが有効に使え、相性が良いです。


 コスト概略

 1 充電電気料金
 毎日1回、2本を純正充電器で充電すると
 定格10W×3.5時間=35WH
 1KWH=30円とすると1.05円

 2 電池の償却
 電池4本+充電器のセットの金額 2500円程度
 1950mAH電池の充電回数は公称2100回ですが実用的には350回程度とのことです。
 2本×2組では700回(700日)使えることになります。
 2500÷700=3.6円

 1日当たりのコストは1+2で5円以下となります。


 その他

 毎日使用するということで球の消耗も考える必要があります。
 このラジオは使用球が5678が3本ですのでスペア球の確保が楽です。
 レフレックスの割には音が良く、DC−DCコンバータのノイズも有りません。
 私の作ったラジオの中では最も優秀です。


 その後

毎日使うラジオ

 2019年9月現在、毎日使うラジオは1A2−1B2−2P2構成のレフレックススーパーに変更されています。
 理由は電池電圧が下がった 時の音量が大きい事にあります。
この為、消費電流は16%程増加したのですが、実用的に聴ける時間は変わりません。
 このラジオの記事は「中国球」の頁にアップされています。


 レフレックス回路のゲイン

 ポータブルラジオのレフレックス回路で低周波 の負荷は通常、ST−30Aトランスを使っています。
 ただ、高価で場所を取るので、抵抗で代用出来ないか検討してみました。
ゲイン測定回路

製作したゲイン測定回路

 回路図で低周波負荷とスクリーン抵抗の組み合わせを換えてみました。
 1 RG2=270KΩ、RL=100KΩ
 2 RG2=100KΩ、RL=51KΩ
 3 RG2=0、RL=51KΩ
 4 RG2=0、RL=ST−30A

 上の4種類の組み合わせで455KHzに対するゲインは殆ど変わらず20程度ですがIFTのコアの位置で変わります。
 1KHzに対するゲインは4のトランス負荷が大きく70位はああります。
 次に大きいのは3の組み合わせで50位でした。


 部品の入手が困難になった

 私が電池管ラジオを作り始めてから3〜4年位ですが、この短い年月でも部品の入りは、かなり悪くなっています。
 真空管も入手出来る品種が減ってきました。
 仮に入手出来たとしても、かなり高価になっています。
 それでも5678や1T4はそれ程値段が変わっておらず、入手性も今のところ大丈夫です。
 これらは同一球が3本あれば実用的なレフレックススーパーを作る事が出来ます。
 最近、入手に苦労するのはバーアンテナとバリコンです。


 バーアンテナ

 バーアンテナもφ10×140mm程度のものは苦労しません。
 組み合わせるバリコンによりにより巻き数の増減や、二次巻き線の追加が必要になることが有りますが、それ程苦労しないでQの高 いバーアンテナが入手出来ます。
 バーアンテナとして入手出来なくてもフェライトバーが比較的容易に入手出来るし、寸法が大きいのでコイルを自作するのも簡単です。
 巻き線も比較的入手が容易な太いリッツ線が使えるので便利です。
 問題はポータブルラジオでポリバリコンと組み合わせるような小型のバーアンテナです。
 以前はトランジスタラジオ用に国産のバーアンテナが多数、販売されていたようです。
 品種は「子供の科学のラジオ」というサイトを観ると解説されているので参考にさせていただきました。
 ただ、国産メーカーでアマチュアにアンテナを供給していた企業の多くが廃業していて販売店にストックが有れば手に入るという 状況でした。
 スーパー用のバーアンテナではSL−55Xというアンテナが唯一、最近まで入手できました。

SL−55X

 上の写真はポータブルスーパーに使用したSL−55Xで二次巻き線を追加しています。
 非常にコンパクトで狭い場所に配置できました。
 最近ではSL−55Xも入手できなくなり、互換品としてAR−55Xというバーアンテナが販売されています。

AR−55X

 フェライト棒が平板から8φの丸棒になり、SL−55Xのスペースには収まりません。

AR−55X改

 SL−55Xに比べると出来が悪く、固くてコイルが簡単に動きません。
 上の写真は二次巻き線を追加したものです。

市販ジャンク

 上の写真は、たまたま使用できた小ロットのジャンク品で再現性はありません。
 親子ポリバリコンに適合するバーアンテナは600uHが必要で殆ど出回っていません。
 ストレートラジオの270pFバリコンに適合する330uH程度のバーアンテナは出回っています。

自作アンテナ

 上の写真はジャンク箱にあった小型の平板コアに0.12mmのウレタン線を巻いたもので、一応使用できます。
 バーアンテナは入手出来なければ自作するしかありません。

自作アンテナ

 上の写真は8φ×50mmのフェライト棒に0.12mmのウレタン線を巻いたものです。
 市販のバーアンテナは0.04mm×3本程度のリッツ線で巻かれていますが細いリッツ線は入手困難で入手出来たとしても 高価です。
 強度的にも弱く、取り扱いも面倒です。
 私は0.12mmのウレタン線を使っていますが一重に巻く限りでは性能的に大きな差はありません。
 又、8φ×50mmのフェライト棒は平板のコアに比べ比較的、入手が容易です。

取り外し品

 上のバーアンテナは壊れた市販のポケットラジオから取り外したもので8φ×60mmのものです。
 市販のラジオで使われていたので性能的には問題ありません。
 ただし、簡単に外れない場合もあり、写真のアンテナも取り外しのときリード線を切断してしまい、補修に手間取りました。
 二次巻き線を0.12mm×60回程度、巻き足しています。

ジャンク

 購入したのに使わなかった、使えなかった、製作したラジオを解体した等の理由で貯まったジャンクアンテナです。
 巻き直したりして再利用します。


 バリコン

アルプスバリコン

 上の写真は何十年も前、学生時代に新品で買ったアルプスの430pFの2連バリコンです。
 当時、ラジオ製作の趣味は無く、何の目的で買ったか記憶にありません。
 当時の金額は650円くらいだったと記憶しています。
 等容量2連バリコンはスーパーの他、高1にも使えるので人気が高く、この手のバリコンは殆ど手に入りません。
 このバリコンはディップメーターを試作した時一度使った程度です。
 大きな部品だと思っていましたが、最近入手した大柄な中国製のバリコンと比べるとコンパクトにさえ感じます。
 付属していた防振ゴムは経年変化で腐ってしまいました。

アルプスバリコン

 上の写真はアルプスの290pFL+120pFの小型の親子バリコンです。
 入手性が良かったので沢山購入し、10台くらいのラジオに取り付けました。
 私が製作したスーパーヘテロダインのラジオは、このバリコンかポリバリコンのPVC20Yのどちらかが付いています。

中国製バリコン

 中国製のストック品で365pFの2連です。
 アルプスの430pFの2連バリコンと比較すると大柄で見た目も大味です。
 トリマーも無くシャフトも短く使う機会に恵まれません。
 ある通販サイトで900円で購入しましたが良心的な値段だと思います。
 別のサイトでは全く同じ型式のものが5500円で売られていましたが最近では3000円に下がっています。
 さらに、別のサイトでは同じ型式ではありませんが似たようなバリコンが6050円で売られていました。

ジャンクバリコン

 上の写真は1個600円位で購入したジャンクのバリコンです。
 必要の無い物でも安ければコツコツと買い溜めています。
 値段が値段ですので程度の悪いものも混じっていますが納得して購入しています。

ポリバリコン

 ポリバリコンは今のところ1種類しか使っていません。
 上の写真の右側のバリコンです。
 このバリコンは、このページの上の方で取り上げていますが、その時点ではメーカー型式は判っていませんでした。
 その後、ミズホ通信のPVC20Yであることが判明しました。
 ポリバリコンは安い中国製のものも使ってみましたが使用に耐えませんでした。
 固くて軸が回りにくい、羽がショートしている等、最初から使えない物も多かったですが、使用中にショートしてしまうものが 多かったす。
 突然、受信出来なくなるので最初は原因判明まで時間が掛かりましたが、慣れてくると「またか。」と言った状況です。
 1個必要な時も3種類くらいのポリバリコンを購入していましたが多くを廃棄しました。
 結局、信頼出来るバリコンとしてPVC20Yに到達しました。
 ミズホ通信は廃業していましたがストック品が最近まで入手できたので纏めて購入していました。
 最近、あるサイトからPVC20Yを纏めて購入したのですが偽物でした。
 上の写真で左側が偽物です。
 正面から見ても区別がつきません。
 本物はPの文字が印刷されていますが、印刷をコピーされないかと不安になります。
 構造、性能、耐久性が完全にコピーされていれば問題ないのですが、やはり短絡事故は発生しました。

ポリバリコン

 側面から見ると構造の違いが判ります。
 取り付け面から羽までの寸法が本物が1mm程度長いので1mm長いビスが使えます。
 要は、この偽物バリコンはPVC20Yのコピー品ではなく単なる中国製(多分)バリコンです。
 このサイトは偽物をPVC20Yとして同程度の金額で販売しているということです。
 しかも、カタログ写真はPの文字が印刷された本物を使用しています。
 これは詐欺だと思います。

トリマー無し

 上の写真は単連バリコンですがトリマコンデンサーが付いていません。
 トリマコンデンサーはバリコンのシャフトを右に回しきったときの周波数を合わせ込む為に必要です。
 中国製のアマチュア向け部品は使えないものが多いというか使うことを考えてつくられていません。
 中国製部品でもメーカー向け部品は、そこそこ使えます。
 例えば真空管は製造当時にメーカー向けに作られたので、そこそこ使えます。
 メーカーに不良品を納めると大問題になりますがアマチュア向けの小ロットの部品はクレームが上がってきません。
 不良と評価できる能力を持たないアマチュアも存在します。
 このバリコンは同調用には使えませんが再生バリコンには使えると思って残してあります。


 ノイズや異常発振

 私が製作したラジオの多くはスーパーヘテロダインですので主に、この形式について述べます。

 DC/DCコンバータノイズ

 私のラジオは殆どDC/DCコンバータでB電源を生成しているのでノイズの発生が受信に影響します。
 最初は変換効率を上げる為にマイコンPWMでデューティー50%近い方形波を発生させていました。
 短絡保護回路、開放保護回路付けても75%の効率が得られました。
 ただ、強烈な空中伝搬ノイズを発生し、これを厳重にシールドで吸収したので寸法が大きくコストも大きくなりました。
 その後ノイズが少ないロイヤー回路に変更しました。
 ただし、ベース巻き線を使わないので変形ロイヤー回路と言うべきものです。
 効率は下がるのですが発振トランスを最適化することにより効率65%程度にはなります。
 低ノイズ、小型、軽量化、低コストのメリットは大きいと思います。
 ロイヤーの回路のノイズは空中伝搬ノイズと電源経由のリップルノイズ、機械的振動の3つがあります。
 空中伝搬ノイズは回路的に限りなく0に近づける事が出来ますが相反して電源リップルが増え効率が下がります。
 電池管が直熱管ということもあり、電源リップルは、そのまま入力信号となり悲惨な結果となります。
 そこで空中伝搬ノイズを完璧には除かず、シールドで対処します。
 A電源には大容量のコンデンサーを入れ、リップルを除いています。
 機械的振動を除くのは困難ですので出来るだけ発生を抑えます。
 トランスは接合面の無いトロイダルコアを使用します。
 一次巻き線は透明アクリルラッカーで固めています。
 以上の対処でDC/DCコンバータは何の問題もありません。

 ブロッキング発振

 私は音量調整として検波出力をVRで絞る一般的な方法をとっていますがVRの抵抗値が高いとブロッキング発振をすることが あります。
 抵抗値を100KΩまで下げると発振がとまることを何回か経験しています。
 この時、250KΩでは発振します。
 発振しないときは500KΩでも発振しません。
 抵抗値が下がると検波出力の負担が大きくなるので、まず250KΩか500KΩにして発振気味なら100KΩにして います。

 ハウリング?

 電池管は振動を与えるとハウリングが1〜2秒続きます。
 普通はこれで収まりますがA電源又はB電源からエネルギーを供給されて継続する場合があります。
 電源投入直後は発振しないこともありますが、その後、わずかな振動がトリガになって発振を開始します。
 発振が自然に収まったり、発振しない場合もあり、原因がつかめません。
 電源にCVCC電源を使っても発振するのでDC/DCコンバータの影響ではありません。
 音は気にならない位の小音量の場合もあるし、少々、耳障りの時もあります。
 ただし、球を交換すると発振しない場合が殆どです。
 交換は同一品種でもOKですが例えば6088から5678でも消えます。
 発振し易い球があるのかもしれませんが詳細は不明です。

 その後、色々経験し、やはりスピーカーの僅かな振動が球に影響を与えるようだと感じました。
 起こり始めは僅かな音ですが徐々に増幅されて、あるレベルで飽和し継続します。
 とくにレイセオンタイプのサブミニチュア管は細いリード線が1列に並んでいるので長いリード線をICソケットに差し込んだ ままで動作させると起きやすいようです。
 リード線は出きるだけ短くしてICソケットに半田付けしてから差し込むようにすると接触も確実で良いようです。
 分布容量は増えますが中波程度では問題無いと思います。

真空管リード

 球を寝かす時はリードを直角に曲げます。
 ピンを折ってしまったりしてソケットを外したい時は、このままでは半田付けを外すのは困難です。
 その時は、まずホットカッター(ホットナイフ)等でICソケットを1ピン毎に切り離してから半田を外します。
 そうすればリード線を切らずにICソケットを外すことが出来、付け直す事も可能です。

球の固定

 上の写真は6088を使用した5極管コンバータですがハウリングで苦労しました。
 球を寝かせているのですが下から出したガイド(枕)に配線用の耐熱ワイヤで縛り付けています。
 これでハウリングを起こさなくなりました。
 MT菅はソケットに、しっかり固定できるのでハウリングの頻度は減りますが、やはり起こります。
 以前、中国球の1K2でハウリングが止まらず1T4に交換したらピタリと止まった事がありました。
 こうなると球内部の電極の問題ですので手が出せません。
 ネット検索したら制振リングという物が売られていて、これを輪ゴムの様に球に被せると効果があるらしいです。
 これは試していないので何とも言えません。

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