トップページ     電子回路のページのトップ

 DSPラジオU

 画像をクリックすると拡大表示されます。
 拡大画像からはブラウザの「←戻る」ボタンで戻ってください。


 前回、初めてDSPチップを使ってFM専用ラジオを製作したのですが無調整で動作しました。
 これに味を占め、部屋で毎日使うラジオを製作しました。
 現在はAM放送を自作電池管ラジオで聴き、FM放送は市販のICラジオキットを改造したものを使っています。
 電池管FMラジオも製作したのですがランニングコストやメンテナンスに金が掛かるので毎日は使えません。
 今回、DSPチップを使って1台でFM、AM、SWが聴けるラジオを作りました。
 電源は単3電池2本、又はAC電源を切り替えて使う2電源とします。
 大音量にしなければ単3電池2本で連続24時間程度は使えるはずです。
 通常はAC電源を使用します。
 FM放送は76MHz〜90MHzと88MHz〜108Mzの2バンドにしました。
 AM放送は522KHz1620KHzの1バンドです。
 選択には6接点のロータリースイッチを使ったので残りの3バンドをSWに割り当てました。
 短波放送は今まで聴いたことが無かったので、どのバンドを選択したらよいか迷ったのですが適当に3バンド 選択しました。


 AC電源

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
 拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。

AC電源回路図

 AC電源は少々面倒です。
 まずスイッチング電源は使えません。
 空中伝搬ノイズを出すので特に中波帯に強いノイズが入ります。
 例えば20V0.1A程度の電源トランスの出力を整流、平滑し、降圧スイッチング電源で3V0.3A程度にするといった 方法は使えません。
 6.3V、0.2〜0.3ACT付きのトランスがあれば両波整流し、低損失のシリーズレギュレータに通して3Vの電源と するのですが手持ちにありません。
 通販サイトを探しても、なかなか見つかりません。
 あったとしても現在、電源トランスは高価で2000円近くすると思います。
 そこで以前、「100円充電器の頁」で作っておいた3V100mAの電源を流用することにしました。
 2個あったのでパラにして3V200mAの電源にしたのが上図の回路図です。
 100円充電器の電源トランスは非常にレギュレーションが悪いので並列接続しても片側に負荷が集中する事もなく 安定に動作します。
 ここまでは良かったのですが大きな問題が発生しました。
 立ち上がりが悪いのでDSPチップのパワーオンリセットが動作しません。
 最初にラジオとして通電したとき、ウンともスンとも言わなかったのですが予想していたので直ぐに原因が判りました。
 立ち上がらない事が殆どですが中途半端に立ち上がると感度が悪くなるようです。
 起動用のプッシュスイッチを追加する事も考えましたが、とりあえず平滑コンデンサーの2200uFを470uFと1/4 以下にし、ラジオ側に強制リセット回路を追加しています。
 下の写真は製作した電源(2個分)です。
 電源回路図も電源写真も変更前のものです。

製作したAC電源

 ラジオ回路図

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
 拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。

ラジオ回路図

 受信バンドが6バンドになったので2回路6接点のロータリースイッチの片側で分圧抵抗を切り替えます。
 もう片方でFMと短波のプリアンプの電源を必要なバンドの時だけオンします。
 伸長時75cmのロッドアンテナはFMと短波で共用します。
 中波は16cmのフェライトバーアンテナを使用します。
 選局用のボリュームは通常の270度1回転のものを使用しています。
 1バンド当たりの受信局数が4〜5局と少ないので多回転のポテンショメーターは使っていません。
 前述したようにAC電源の立ち上がりが悪く初期リセットが掛からないことが原因で起動しないトラブルが発生しました。
 アプリケーションノートの回路は100KΩと0.1uFの簡単なものでしたが確実にリセットが掛かる回路を 付加しました。
 低周波アンプはMC34119を使いました。
 ゲインを設定出来、発振しにくいので使い易いアンプです。
 ただし、BTL出力となりスピーカーのマイナス端子がGNDから浮くので支障のある場合があります。
 今回、DSPチップの出力を最大に固定している為アンプのゲインをもう少し低くした方が良かったと思います。
 反転入力端子に信号を入力している例が多いのですが非反転端子に入力すれば入力インピーダンスを高く出来ます。


 分圧抵抗

 バンド選択用の分圧抵抗は誤差1%の精度の物が必要です。
 抵抗値はアプリケーションノートを見れば判ります。
 中途半端な値は2本〜3本を直列にすれば合成出来ます。
 並列合成は2本パラで1/2以外は避けます。
 秋月電子で購入した100本100円の炭素皮膜抵抗(誤差5%)は殆どが誤差2%程度に収まっていますが選別しても誤差1% 以内のものは殆どありません。
 秋月電子で100本300円で販売されている金属被膜抵抗(誤差1%)は誤差0.5%程度に収まっています。
 従って直列合成しても誤差1%以内に収まります。
 ただし抵抗値の種類が少ないです。
 例えば143KΩは100KΩ+33KΩ+10KΩとなります。
 秋月に限りませんが誤差1%の金属被膜抵抗を購入すれば数値の確認だけで済み、面倒な選別の手間が省けます。
 抵抗値は温度によって変化しますが全部同じ構造種類の抵抗であれば分圧電圧は相殺されます。
 違う種類の抵抗を組み合わせることは避けます。

 回路基板

基板部品面 基板半田面
基板部品面基板半田面


製作したラジオ

ラジオ外観 ラジオ内部 内部拡大 前面操作部 背面
ラジオ外観ラジオ内部内部拡大前面操作部背面

 前面スペースに余裕が無いため電源スイッチは背面になってしまいました。
 操作性は少々劣りますが配線、電気的にはメリットがあります。


製作結果

 初期リセットをトラブルを除けば特に問題なく動作しました。
 感度、音質(特にFM)、音量も十分です。
 実用的に使用出来ると思います。
 DSPラジオは電子工作としては楽しめるし実用的な物が作れます。
 しかしながらラジオ作りで楽しいのは真空管のAMラジオだと思います。


聴けた局

 * FM1(88MHz〜108MHz)
 NHK FM静岡       (静岡88.8MHz)
 静岡放送(SBS)FM補間局 (静岡93.9MHz)
 上記は室内で音質、音量も上々に聴けます。
 特に電波状態の良いSBSはアンテナを畳んだ状態で十分です。

 * FM2(76MHz〜90MHz)
 FM島田           (島田76.5MHz)
 K−Mix(静岡FM)    (静岡79.2MHz)
                (島田85.9MHz)
 NHK FM静岡       (島田83.0MHz)
                (静岡88.8MHz)
 KmixとNHKは室内で良好に聴けますがFM島田は室内では聴けない場所があります。
 窓際や屋外では良好に聴けます。
 島田送信所までの距離は15Km程度ですがK−MixとNHKは出力100W、FM島田は20Wです。

 * AM(522KHz〜1620KHz)
 NHK 静岡 第2放送    (静岡639KHz)
 NHK 静岡 第1放送    (静岡882KHz)
 ニッポン放送         (木更津1242KHz)
 SBS 静岡放送       (静岡1404KHz)
 上記は昼間聴ける局で夜間は少しにぎやかになります。
 音質はFMに比べ若干、落ちますが悪くはありません。
 ニッポン放送は音質、音量とも落ちますが内容は十分に聞き取れます。

 SW1(ワイド3.2MHz〜10MHz ナロー3.9MHz〜4.0MHz)
 SW2(ワイド5.6MHz〜22MHz ナロー5.96MHz〜6.20MHz)
 SW3(ワイド5,9MHz〜18MHz ナロー9.2MHz〜10MHz)


 短波放送に関しては今まで聴いた経験が無く知識がありません。
 とりあえずラジオ日経の3MHz帯、6MHz帯、9MHz帯が聴けるようにバンドを選択しました。
 昼間に実用的に聴けるのは6MHz帯の2chでラジオ日経の第一と第二と思われます。
 夜間には各バンドで外国語を含め、いろいろ聞こえてきますが意識して聴けるものはありません。
 短波放送は帯域をワイドとナローに切り替えることが出来ますが通電後はスイッチが機能しません。
 スイッチの状態をパワーオンリセットで読み取るようです。

 2号機を作る

 製作したDSPラジオは外観こそ市販ラジオに劣りますが感度、音質、音量等は遜色ありません。
 部品の多くは手持ちの物を使ったので制作費も、それ程掛かりませんでした。
 配線間違いさえ無ければ無調整で動作することも魅力です。
 それで、もう1台製作し、別の部屋にも置くことにしました。
 基本的に全く同じものを作る事にしましたが、手持ち部品の関係、気分的な問題で全く同じにはなりませんでした。


 電源

 電源は前回と同じACと電池を切り替える2電源です。
 AC電源はスイッチング電源が使えません。
 スイッチング電源は空中伝搬ノイズを発生するので同じ筐体にはいれられません。
 そこで電源トランスを使うのですが小容量の適当な電源トランスが手に入りません。
 前回は100円充電器のトランスを使ったのですが使い切りました。
 たまたまサトー電気の通販広告を見ていたところ3V300mAのトランス式ACアダプターが300円で売られていたので 今回は、これを使うことにしました。
 トランスだけでなく整流、制御回路も、そのまま使えそうです。

ACアダプタ トランス、制御回路
ACアダプタトランス、制御回路

 写真のACアダプタはスイッチングタイプなら5V、2〜3Aはいけそうなサイズですがトランス式ということで 3V、300mAとなっています。
 そのまま取り付けられれば簡単ですが嵩張るし取り付け固定も面倒なのでカバーを取り除いて基板に固定しました。

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
 拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。

電源回路図

 ACアダプタの回路は目視で調べたものですが間違いがあるかもしれません。
 トランスの定格は不明です。
 ブリッジダイオードの品種名は不明です。
 3端子レギュレーターの品種名は読みとれなかったのでLM317かどうかは不明です。
 10uFのコンデンサーは未実装でしたが手持ちのケミコンを取り付けました。
 シルクはコンデンサーマークだけで容量値は書かれていませんでした。


 ラジオ回路図

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
 拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。

ラジオ回路図

 基本的には前作と同じ回路ですが手持ち部品の関係、気分的な問題で若干、異なる部分があります。
 今回はAC電源の立ち上がりが良かったので強制リセット回路は取り除いてあります。
 ロッドアンテナは固定取り付けからBNCコネクタによる着脱式に変わりました。

 回路基板

基板部品面 基板半田面
基板部品面基板半田面


製作したラジオ

ラジオ外観 ラジオ内部 前面操作部 背面
ラジオ外観ラジオ内部前面操作部背面


 製作結果

 前回同様、無調整で実用的なラジオが完成しました。
 FMバンドの感度が前回より上がった気がします。
 76.5MHzのコミュニティー局が室内で確実に聴けるようになりました。
 直線距離15Km程度、出力20WのFM島田です。
 ただし電波が微弱ですので近くでノートパソコンを動作させると感度が落ちます。
 ほぼ同一距離で出力100WのNHKFM島田送信所、K−Mix島田送信所の電波はノートパソコンの影響を受けません。
 感度が上がったとすればアンテナのゲインが上がったかプリアンプの出来が良かったか、どちらかです。


 ACラインフィルタの取り付け

 ノートPCで感度が低下するということは書きましたが電源を電池に切り替えると、かなり改善することが判りました。
 このラジオはAC電源で毎日使用しています。
 そこでAC電源にラインフィルタを入れてみました。
 効果はあり、電池電源使用時位に改善されました。
 ただし、完璧では無く、ノートPCの負荷が重いとき(起動時や特定アプリの使用時)には若干、雑音が入ります。
 それでも放送が聴けない程では無く、コミュニティー局の時だけですので良しとします。
 雑音はPC本体から出るのでは無くACアダプタのスイッチング電源から出ているようです。
 ノートPCを内蔵バッテリーで動作させると影響を受けません。
 ACアダプタからPCまでのDCコードにはラインフィルタが付いているのですがACコードには付いていません。
 これ以上はノートPC側で対策するしかありません。
 それと他の機器でもノイズ源になる可能性があります。


 電源回路図

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
 拡大図から本文に戻るにはブラウザの←戻る釦を使用してください。

電源回路図

製作したフィルタ

フィルタ 取り付け
フィルタ取り付け


 既知の問題

 現在、電源スイッチは3接点のロータリースイッチを使っています。
 左端で電源OFF、中点でAC電源、右端で電池電源としています。
 OFFから右端まで素早く切り替えるとラジオが起動しない事があります。
 これはリセット回路のCRの充放電が正しく行われない事が原因です。
 対策として
 1 ゆっくり確実に切り替える(何も対策しない)
 2 電池で動作させる時は本体のACコネクタを外しておく
 3 AC電源で使用するときは電池を外しておく
 3 スイッチを中点でOFFにする
 現状は何もしていません。
 電池を入れたままAC電源を接続しています。
 失敗した時は、やり直せば済みます。


トップページ  「電子回路」のトップ