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 電子びっくり箱

電磁ブザーを使用したもの

電磁ブザーを使用したびっくり箱

 私が子供の頃、すでに電子(電気)びっくり箱は存在しました。
 玩具屋さんで購入した事は覚えていますが、残念ながら現物は残っていません。
 回路は上図に示すように電磁ブザーに二次巻き線を巻いた物です。
 ブザーで一次巻き線の電流を断続し、二次巻き線に高電圧を発生させるものです。
 電極を触ると当然、感電するのですが、ブザーの音も臨場感?を盛り上げる訳です。
 人が触った時だけ動作するようにしないと音でばれてしまうし、電池も直ぐに無くなってしまうので、隠しスイッチで電源が 入るようになっていました。
 記憶では、箱を持ち上げるとマイクロスイッチが入るようになっていたと思います。
 筆箱程度の大きさの美しい箱でした。


ブロッキング発振回路

ブロッキング発振回路

 その後、トランジスタとトランスを使ったブロッキング発振回路の電子びっくり箱がキットとして売られるようにな りました。
 簡単な回路ですので、電子工作の雑誌等でも、よく紹介されていました。
 メインのパーツは山水電気のST−26というトランスです。
 本来はトランス結合のトランジスタアンプのドライバートランスとして製造されたものです。
 ゲルマニュームトランジスタ時代の回路用で、現在、ドライバートランスとしての使い道は無いと思われます。
 山水のドライバートランスには、この他にもST−27、ST−28が有り、一次、二次の巻き数比は異なりますが ブロッキング発振回路としては同じように使えます。
 だだし、特性やバイアス条件は異なるはずです。
 私もこのST−26は沢山買いました。
 電子びっくり箱も作りましたし、電池でネオン管を点灯させたりしていました。
 山水電気というのはオーディオの有名な会社でしたが、現在、実体は存在しません。
 山水トランスは橋本電気に製造が移管され、現在も山水トランスの名前で販売されています。
 同規格のトランスは他メーカーからもKT−26等の名称で販売されています。
 ただ、需要が、それほど多いとは思えず、今後も継続して発売される事を祈るばかりです。
 ブロッキング発振回路は簡単に見えますが、解析は難しいというのが定説です。
 トランスの磁気飽和等を利用していると思われる為です。
 いろいろ考えるよりカットアンドトライが現実的です。
 


山水ST−26

ブロッキング発振回路

 写真はジャンク箱から出てきたブロッキング発振回路の基板です。
 トランスは初期のST−26で、現在、販売されているものとは、若干、見た目が違います。
 基板は5mmピッチのベークのユニバーサル基板、L型抵抗、トランジスタは名前が消えてしまっていますが 東芝のマークが見えますので、多分2SB56です。


現在の電子びっくり箱キット

 電子びっくり箱は現在もキットが販売されているので、もっとも目に付く広告を覗いてみました。
 購入した訳では無いので詳細は判りませんが、昇圧はトランスではなくインダクターの様です。
 トランスをインダクターに変えてコストを下げたと思われますが、今度は耐圧が数百Vのトランジスタが必要になります。
 トランスは二次巻き線で出力電圧が絶縁されているので使い勝手が非常に良いのですが、インダクタでは電圧の取り出し方 が制限されてしまいます。
 ということで圧倒的に使いにくいものになってしまいました。


電子びっくり箱の問題点

 電子びっくり箱の回路を組んだり、キットを入手したとして、実際のびっくり箱を作った事を考えます。
 回路は簡単ですが、実際に使用するには問題があります。
 雑誌の記事やキットの回路は発振回路だけで、どのように電源を入れるかは示されていません。
 最初から電源を入れたままにしておけば電池がすぐ無くなってしまうし、発振音で気付かれるかもしれません。
 手にしたときだけ電源を入れたい訳ですが、結構、大変です。
 以前、箱の上面にプッシュスイッチを箱に取り付けたことがあります。
 箱を持ってプッシュスイッチを押せば感電するのですが、これだけで引っかかる人もいました。
 ただし、作品としては面白くありません。
 判らないような隠しスイッチでも付ければおもしろいのですが、工作的に困難です。


電子びっくり箱を改造する

 改造というより、回路を付加したという事です。
 発振回路自体は20年位前のキットを流用しました。
 トランスはKT−28となっているのでST−28相当かもしれません。
 ST−26で同様の回路を組んでも動作しましたが、動作が微妙に変わるので、バイアスを調整する必要が あるかもしれません。
 キットである必要はありませんが、私の場合は廃物を流用したというだけの話です。
 尚、最近のキットでインダクターを使用したものは使用できません。
 電源スイッチ回路の仕様は以下の通りです。
・ 待機時は電力を全く使用しない。
・ 待機時には検出回路(センサー)にも電力を供給しない。
・ 一定時間動作したら電源が切れる。
 いろいろ試行錯誤しましたが、有る程度の結果が出たので発表します。


電子びっくり箱の外観

電子びっくり箱の外観

 製作したびっくり箱の外観を示します。
 プラスチックケースの側面をL型に2分割したアルミテープを貼って電極とします。
 上面にもアルミテープを貼って検出電圧とします。
 他にはスイッチもランプもありません。
 箱を持つとき両側の電極を掴みますが、その時、手のひらが上面のアルミテープに触れます。
 この時スイッチが入ります。
 大抵の場合、動作しますが、持ち方が悪い?と動作しない場合があります。


電子びっくり箱の内部

電子びっくり箱の内部

 左側の基板がキットの電子びっくり箱、中央のユニバーサル基板が電子スイッチ部、右側は9V電池です。


回路図

 回路図をクリックすると拡大表示されます。
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回路図

 上図で高電圧発生回路は昔のキットを流用しました。
 発振強度を調整したので回路定数は変わっています。
 発信トランジスタのベースに入っているダイオードはキットには付いていませんが、ベースに逆電圧が加わるような気がして 取り付けました。
 不要かもしれません。
 スイッチ部でQ1は逆電圧阻止、Q2は電源のスイッチでQ5によって制御されます。
 Q5がオンするとQ2のゲートが順バイアスされるので、Q2はオンします。
 その後、R5によって徐々にC5が充電され、電位が上昇してQ2がオフします。
 出力の一端が電池の+極に接続されているので電池電圧が出力電極→人間の手→検出電極に加わり、Q5がオンします。
 Q3が無いと出力の誘導電圧が検出電極に加わり、Q5がオン状態を保持してしまいます。
 Q5にはゲート保護用のツェナーが内蔵されていないので、外付けしてあります。


あとがき

 今回は実用性の乏しい事に労力を使ってしまいました。
 最初、電池の代わりに定電圧電源を使って動作試験をしていました。
 AC電源を使用した場合、誘導ノイズが発生していて、検出回路が簡単に動作していました。
 これで完成として電源を電池に換えたところ動作しなくなりました。
 感電用の電極の一端を電池の+極に接続するということは苦し紛れの策ですが、何とか動作するようになりました。
 誘導ノイズの代わりに電池電圧を手を介して検出電極に加えることで、電源をオンさせました。
 気に入った方法ではありませんが、他に良い方法が無いので、これで完成とします。
 高圧出力の一端が制御回路のグラウンド以外のノードに接続されるのは気持ちの良い事ではありませんが特に壊れる ことは無いと思います。
 (いまのところ大丈夫です。)

 このびっくり箱には電源スイッチが付いていないので電池の着脱は命がけ!!です。
 実際、電池を着脱しようとして何回も感電しました。
 この回路では電池を取り付ける時は1回だけ必ず電源が入ります。
 電池の着脱の為だけにスイッチを取り付けるのも美的ではないので、手袋をして作業しました。

 注)これくらいのエネルギーでは人は死にませんが、人、状況によっては、かなりのショックを受ける場合がありますので、 心臓等の悪い人には試さないでください。
 好みにより、発振回路のトランジスタのベースに接続されている抵抗の値を大きくして、発振を弱くしてください。


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