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 トロイダルコア

 トロイダルコアを使った回路

 私は電子工作でトロイダルコアを良く使います。
 用途はDC−DCコンバータのトランスやチョークコイルが殆どです。
 他にはノイズフィルタ、中波程度の高周波チョークの代用品等です。
 VHF程度で使用出来るコアも存在するようですが私には高周波回路の知識がありません。

 トロイダルコアの長所

 トロイダルコアの長所は色々なサイズや材質のコアが比較的容易に入手可能なことです。
 価格も比較的安価です。

 トロイダルコアの短所

 何と言ってもコイルを巻くのが大変です。
 特に昇圧比の大きいDC−DCコンバータでは二次巻き線の巻き数が多くなり、時間が掛かります。
 ただし、二次巻き線の巻き数の微調整は比較的楽です。
 磁路が閉じているので巻き数や電流値が適正で無いと飽和しやすいことがあります。

 トロイダルコア以外の材料

 トロイダルコア以外ではEIコアやEEコアがありますがアマチュアが入手するには種類が足りません。
 ボビンに巻くので楽ですが以外とスペースがありません。
 巻き数の微調整も以外と面倒です。
 ボビンが機械的に弱く、取り付けの際に何度も割ってしまって嫌になりました。

 入手可能なトロイダルコア

 トロイダルコアを使用するにはコアのデータが判っていて使用例が専門書等で公開されていることが重要です。
 その意味ではアミドン社のコアが必須です。
 国産メーカーもトロイダルコアを作っているのですがアマチュアには馴染めません。
 時々、正体不明のトロイダルコアが販売されている事がありますが、試しに使ってみて使えるかどうか判断する 必要があり、時間を浪費します。

 カーボニル鉄トロイダルコア

カーボニル鉄トロイダルコア

 アミドン社では低周波用からVHF帯まで多くの種類と豊富なサイズを用意しています。
 表面は塗装されていて種類によって色分けされているので間違えることがありません。
 アマチュアには一部の種類以外は、やや入手難です。
 たまたま手持ちにあった#3材のコアをスイッチング電源に用いたところ高い効率を得られた記憶があります。
 アミドンでは品種名は例えばT−50−3又はT−50#3と表示されます。
 頭のTはカーボニル鉄を示します。
 50は外形が50/100インチ(1/2インチ)であることを示します。
 最後の3又は#3は材質の区分を示しますが数値自体に特別な意味は無いようです。

 フェライトトロイダルコア

フェライトトロイダルコア

 トロイダルコアはこちらの方が一般的で入手が容易です。
 カーボニル鉄より種類やサイズが少ないので販売店でも取り揃えが楽だと思われます。
 特に#43材のコアは、よく使われます。
 フライバックコンバータでは発振周波数20KHz〜100KHzで高い効率が得られます。
 最も透磁率の大きい#75材はロイヤーの回路に用いると発振周波数1KHz程度に下げる事が出来、ラジオノイズを 減らす事が出来ます。
 尚、#75材は導電性があります。
 絶縁塗装を施したものを新たに出荷したというニュースをアミドン社のサイトで見たことがあります。
 フェライトコアは見た目で材質の区別が出来ません。
 品種名は頭がFTとなるだけで後はカーボニル鉄と同じです。

 AL値

 AL値は1回巻きのコイルのインダクタンスを示します。
 N回巻きのインダクタンスはNの2乗となります。
 例えばFT−50#43コアのAL値は523nHと示されているので10回巻けば523×10×10nH=52.3uHと なります。
 これは巻く前に計算でインダクタンスを予想出来るということを示します。
 実際にはAL値はバラツクので正確にはLメーターで計測します。
 文末で紹介している参考書籍にはAL値のデータ表が付録として掲載されています。

 フェライトコアの品種の確認

 フェライトコアは見た目で区別出来ません。
 アミドン製のフェライトコアで材質が判らなくなった時はコイルを均等に10回巻きます。
 材質を仮定し、AL値よりインダクタンスを計算で求めます。
 インダクタンスを実測し、計算値の2倍以上か1/2以下になったら仮定した材質ではありません。
 AL値はバラツキますが2倍以上、又は1/2以下になる事はありません。
 Lメーターとデータ表(参考書籍)が必要です。

 巻き数の数え方

1回巻き、2回巻き

 巻き数の数え方ですがコアの内側を通過した導線の本数を数えます。
 写真の上側が1回巻き、下側が2回巻きです。

 プッシュプルトランスの巻き方

1回巻き、2回巻き

 プッシュプルトランスはセンタータップの位置がずれると直流励磁され危険です。
 まず2本のUEWを束にして巻きます。
 2本のUEWをA−A’、B−B’とします。
 AとB’を接続し、センタータップとします。
 A’とBはコレクタやドレインに接続します。
 高周波トランスで言われるバイファイラ巻きです。
 ただしバイファイラ巻きは2本の導線をツイストしますが、導線の量が増え巻き数が減るので、この場合はツイスト しません。
写真は巻き方を示したもので実際には、もう少し細い線を巻き数多く巻きます。
これは一次巻き線で、この上又は下に二次巻き線を巻きます。

 よく使うコアの種類とサイズ

 多くの場合、フェライトの#43材を使います。
 サイズは外形50/100インチ(FT−50#43)か外形82/100インチ(FT−82#43)が 殆どです。
 ロイヤーの回路ではフェライトの#75を使った事もあります。
 #75材の場合、AL値が大きくインダクタンスが大きいので発振周波数が低くなります。

 巻き線用のツール

巻き線用のツール

 トロイダルコアに線を巻くのは大変です。
 私は写真のようなツールを使っています。
 0.8mmの鉄線2本を半田付けしたリールです。
 最初にリールにUEWを巻いておき、トロイダルコアの穴に通しながら巻きます。
 リールは少しずつ解いていきます。

 テープ

巻き線用のツール

 巻き始めや巻き終わりを止めたりするのにガラスクロステープを使います。
 高価ですので代用品があるかもしれません。
 細いポリミドテープを一次巻き線と二次巻き線の分離として巻くことがありますがスペースの関係で重ねて巻いてしまう ことも多いです。

 カウンター

巻き線用のツール

 二次巻き線は何百回と巻くので時間が掛かり、途中で巻き数が判らなくなることがあります。
 私は10回巻いたらカウンターを1つ進めるようにしています。
 作業を中断するときも便利です。

 コイルの巻き方

 最初に二次巻き線を巻き、その上に一次巻き線を巻き重ねても、その逆でも動作に大きな差はありません。
 私の用途では1.5Vから45V〜65Vに昇圧するようなトランスが多く、二次巻き線の巻き数が非常に多くなります。
 サイズの小さい50サイズのコアの場合、穴径が小さいので最初に一次巻き線を巻くと巻き線用のツールが通らなく なります。
 一次巻き線は巻き数が少ないのでツールを使わなくても巻くことが出来ます。
 82サイズのコアは穴径が大きいので一次巻き線の上に二次巻き線を巻くことが出来ます。
 出力電圧を微調整するには二次巻き線の巻き数を増減する方が細かく出来ます。
 一次巻き線にしても二次巻き線にしても全周に対して均一に巻く方が効率が上がります。
 必要以上に太い線を使用しない事です。

 どのくらい巻けるか

 経験を積めば、どのくらい巻けるかは見当が付いてきますが記録を残しておくことも重要です。
 私はFT−50#75コアに0.1mmUEWを700回巻いたことがあります。
 その上に0.26mmUEWを2本束ねて40回重ね巻きました。
 #75コアは導電性があるので注意が必要ですが私はスペースの関係で直接巻きました。
 絶縁はUEWの被覆に頼っているので不安がありますが何とか使えました。

 コアの入手先

コアの色分け

 フェライトコアは探せば通販サイトで購入出来ると思います。
 私はサトー電気で購入していました。
 サトー電気では外見で見分けの付かないフェライトコアに色分けしたペイントを施しているので便利です。
 写真で黄色にペイントされたコアは#43材で赤くペイントされたコアは#75です。
 ペイントは消え易いので消えてしまったら前述の方法で調べます。
 サトー電気ではアミドンのコアを徐々に相当品に置き換えています。
 今のところ同じように使えていますが、ややAL値のバラツキが大きいような気がします。
 詳しい比較はしていませんが本物より性能が上がるという事は無いと思います。
 写真で#43材は正規品で#75材は相当品と思われます。
 正規品は表面が平らで相当品は丸味を帯びているので見分けが付きます。
 カーボニル鉄コアは材質とサイズの種類が多く、特定の品種しか入手出来ません。
 全ての種類を入手するには大手の電子部品の商社に依頼すれば可能かもしれません。
 ただし、個人に少量を販売してくれるかどうかは不明です。

 参考書籍

参考書籍

 手持ちの書籍は1992年出版の第13版です。
 その後、改訂された様ですので内容の変更や誤りの修正があるかもしれません。
 13版では巻末付録でフェライトコアのAL値の表において#77材が#72材と誤記されています。
 応用回路は主に高周波回路ですので馴染めませんが、巻末の「付録」には各種のデータが有り、有用です。


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